第7話 あなたの奏でるピアノ

眩ゆいライトの中

私は歌う

あなたの奏でるピアノの調べに

言葉と旋律は翼を持つ



織り込まれた旋律と情感

研ぎ澄まされた

音色ねいろの中に

身をまかせ 

揺れて

たゆとうように歌う


時空も光も

消え失せ

そこにあるのは

音楽


仄暗い深淵の中から

悲しみの端っこや

記憶の断片を探る


客席からは

期待に胸膨らませる

あたたかなオーラ


音楽の世界は

現実とはかけ離れた

儚い世界


願わくば

別世界へと

いざな

愛おしい時間であって欲しい


醜いものは全て排除され

瞬間に時空の彼方へと

消し去ることができれば!


あなたのピアノは


天空を駆け抜け

涙を七色に染め

甘美なエロスで

禁断の痛みを呼び起こす


繊細で芳醇な音色ねいろ

注がれると

わずか一滴で

聴衆の心は

潤おされ満たされる


忘れかけていた切ない想い

片隅に追いやった小さな後悔

あるいは

喜びにうち震えて

体の奥底の炎を燃やした恋

懐かしく心を巡る


悲しい音楽は

究極の悲しみに具体化され

人の心に同化し

満天の星空や

夕日を浴びた海のごとく

とてつもなく大きな抱擁で

昇華させる


私は時々

置いてきぼりの格好で

透明な音楽を探す

そんな時に

あなたはふり返り

私をいざな

ほら、大丈夫

ちゃんと待っているから

君の居場所はここだよって


そんな時

私の声と息は

ある一点に辿り着き

音楽の中に溶け込む


あなたの瞳は宇宙で

そこから奏でられる音楽は

銀河を突き抜け

その先に住む

神々さへ

とどめることはできない

魂の眠る神聖な領域まで

駆け抜ける


そして!

浄化された音楽は

時空間を超えて

瞬く間に

ピアノの周りや

私の胸に戻ってくる


誰か私の詩を読んでくれる時には

あなたのピアノが流れる

そんな魔法があればいいのに

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