第135話 英雄と呼ばれた少年6
4つの大陸において、最も人が住みやすいとされている大陸、アクエリア大陸に私は来た。
【ヤシロミナト】という少年は当初、『星降鬼の洞窟』に転移されたことが明記されている。
内容については当然の如く空白であるが、彼がこのダンジョンを踏破したのか、それとも単純に抜け出したのかはいずれ分かることだろう。
その後、文献に記載されていた場所は、ダンジョン直近のとある村。
私は当初、その村へと足を運ぶ予定であったが、ガイドの人間にそれは止められてしまった。
その村とは、現在も魔族の領土であり、そこに住む種族はプライドが高いことで有名のようで、魔王がいなくなった現在においても人類との和解を断り、小競り合いを続けているとのことだ。
村と同時に記載されている、アーネスト・イライザ・シルヴァード・シュールレという人物は、現在もそこにいるかは分からないが、どちらにせよ会うことは叶わなかった。
しかし、私は旅の道中に思いがけない人物と出会うこととなった。
その人物とは、目的の村出身の魔族で、アーネスト・イライザ・シルヴァード・シュールレの顔見知りである女性であった。
彼女の名前はバネッサ・フォーリン・シルヴァード・バックス。
獣の耳を生やした彼女は、縦巻きの青みがかかった髪型が特徴的であった。
彼女は魔族でありながらも、現在は人類との共生の目的を主としているため、突然襲われるようなことはなかった。
それどころか、こちらの話を聞いてくれたのだ。
「アーネストの話が出てくるなんて思いもしなかったわ。彼女とは別に友人だとか、親密な仲だったなんてことはないわよ。それどころか大嫌いだったわ」
「当時の私は…………まぁ村の慣習というか、風習のせいで、魔法の扱いが下手な奴は例え家族であろうとも容赦はしないという風に育てられたから、魔法が使えないアーネストの事を見下していたのよ。何かあるたびにイチャモンをつけて、自殺するように追い込んだ事もあったわね。ただ、もう20年近く前の話だし、それ以外に話すことなんてもう覚えてないわよ」
「最後に見たのは…………夜だったかしら。アーネストの家に行ったら明かりがついていて……。それで喧嘩をふっかけたんだけれども……あ、なんか男が一人いたと思うわ。どんな奴だったかは覚えてないけど、バカに強くて、私の取り巻きは一瞬でやられたわね。え? だから覚えてないって。20年も前の話よ?」
「それでアーネストと一騎打ちをしてから、姿は一切見たことないわね。それ以降家に明かりもついてなかったし、その男と一緒にどこかに行ったんじゃないかしら」
アーネストと一緒にいた男……。
恐らくそれは【ヤシロミナト】である可能性が高い。
現れた時期や、その戦闘能力の高さが裏付けをしている。
何より、文献にその村でアーネストと出会っていることが書かれているのだ。
【ヤシロミナト】はアーネストと出会い、そこから一緒に旅を続けていたのかもしれない。
だが、最後のページにアーネストの名前が載っていないことから、途中で別れてしまった可能性が高いのだろうか。
今後の調査で、その辺りも追及していきたい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます