閑話

第134話 いなくなったその日に

 ボルザノクとミリを国に送ると決めて反転してから数分後、超巨大な光の柱が、俺の背後に降り注いだ。

 それはさっきまでいたところで、ヤシロやシーラがいる所でもある。


「何だこれは…………」


 こんな現象は今までにに見たことがねぇ。

 魔王は人間が作り上げた物体転移魔導砲だと言っていた。


 それにしても範囲が大きすぎる。

 国がいくつ入る大きさだってんだ。


「なんすかこれ! 何が起きてるんすか!?」

「ミリだって分かんないよ!」

「魔王の攻撃なのは間違いない。だが問題は……」


 光が収束していく。

 その結果に俺は目を見張った。


 さっきまであった建物、廃屋、その他木々に至るまで人と共に、完全に姿を消していた。

 そこにあるのは全てを見通すことができる大地のみ。

 道の凹凸すらもなく、真っ平らな地平線が広がっていた。


「これが……現実に起きてることなのか……? ヴェイロンの国もこうして消えたのか……?」

「魔王の国が消えたって聞いた時は興奮したけど……こんなの聞いてないっすよ……」


 この喪失感は一体なんなんだ。


「ヤシロ……! ヤシロとシーラはどうなった!」


 口に出してはみたものの、その結果は分かりきっている。

 どこかに飛ばされてしまったということだ。

 2人が一緒にいるなら問題はねぇ。

 だが、別々になっているとすりゃあ……。


「2人と会うことはできねぇかもしれねぇな……」


 元々は人間と魔族が共に生きていける証明を見るために2人についていただけであって、恩があったりするわけじゃない。

 俺はヤシロとシーラに対しては、それほど固執しちゃいない。


 だが…………大陸を越えて旅をしてきた以上、仲間意識を持っていないわけじゃない。

 俺はアイツらとまた、無事な姿で会いたい。


 だからこそ俺は、2人が何を目指して戻ればいいのか判断しやすいように、目印となろう。

『俺はここにいる』と、どこにいても情報が発信されるぐらい大きな事をしよう。


「ボルザノク、ミリ。俺達は予定通り一度国に帰る。お前達を送り届けることはヤシロからも頼まれていることだ。それだけは果たす」

「こんな状態で?」

「こんな状態だからこそだ。今の攻撃は、そう何度も放てるものじゃない。恐らく今後、この大陸が世界で最も状況が動き出すことになるぞ」


 人間側は3大都市の1つを落とされ、時間が経てば物体転移魔導砲で国は崩壊していく。

 人類側は動かざるを得なくなった。


 俺は魔族だが…………個人的な目的のために人間をほろぼさせるわけにはいかねぇ。

 2人が戻ってくるまで、俺は一人ここで待つ。

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