第130話 機銃掃射

 アイラと共に、元来た道を戻っていく。

 魔人は全て排除し、出てくるものと言えば魔物ぐらいなので特に気になるものはなかった。


 ただ、途中で嫌になるほど大量の魔物が現れたため、性能を試す意味でも機銃掃射マシンガンタイプを起動させた。


「モデル機銃掃射マシンガン


 バチバチと『獅子脅し』が発光し、形が徐々に変わっていく。

 持ち手が2つある、記憶しているので確かサブマシンガンと呼ばれるもののはずだ。


 奥にある持ち手の部分は弾を込めるためのカートリッジのはずだけど、魔力を媒介とする弾である以上、飾りとしての役割しかないと思う。

 大きさからいっても、片手で持つことも可能のサイズだ。


 魔力を込めてみるが、速攻でカチリと弾が込められた。


 連射型にしてはちょっと少なくね?

 とりあえず撃ってみないことには分からないか。


 迫り来る敵に照準を定めつつ、引き金を徐々に絞って引いた。

 弾が発射された、が、1発出ただけで連射はしてくれない。


 しかも威力は片手銃ハンドガンよりもショボい。


「ちょ、ちょっとヤシロ! どうするの!?」

「焦らない焦らない、一休み一休み」

「一休みしたらダメでしょ!?」


 連射型というのには間違いないはずだ。

 それなら魔力を込めっぱなしで引き金を引くと……。


 ダーーーーーーーーー!!


 魔力がグングンと吸い取られていく代わりに、とんでもない連射で弾が発射された。

 群がっていた魔物達が一掃されていく。


「うおービックリしたぁ……魔力を込めながら引き金を引けば、その分連射される仕組みか」


 でも思ってたのと随分違う。

 もっとこう……ダダダダダダダダって撃つ感じだと思ってたのに、ダーーーーーーって、まるでミニガンみたいな連射の仕方だった。

 1秒間に何発撃ってるんだろうなこれ。


「一瞬で倒しちゃった……」

片手銃ハンドガンよりも多くの敵を狙えて、一点集中型散弾銃ショットガンよりも魔力を調節して使えるから便利だコレ」

「じゃあこの調子で頑張ろう!」

「頑張ってんの俺だけじゃん!」




 その後、危なげなく入口まで戻ることができた。

 洞窟は滝の裏側にあるようで、入り口の正面は上から落ちてくる大量の水で塞がれていた。


 マイナスイオンすげぇ。


「これどうやって外に出んの?」

「私が水魔法を使うこと、もう忘れたの?」


 ふふん、と得意気にして水魔法を使うアイラ。

 元々操作が得意だったアイラは、流れ落ちてくる大量の水を左右に分けることで道が開けた。


「ほら! 入る時だってこうやって入ってきたんだから! やればできるんだよ」

「本当だスゲェ。じゃあこれでお互いの目標は達成できたわけだし、俺の約束も守ってもらえるわけだね」

「えっ…………」


 そう、交渉内容はアイラにダンジョンボス討伐の証拠を与えて地上まで送り届けることで、俺はアイラが三角帽で隠している耳を自由に触っていい権利を得るということだ。


「そ……そういえばそうだったね……」

「じゃあさっそく……」

「っ!」

「アイラの住んでる所まで案内してよ」

「えっ……? 耳を……触るんじゃなくて?」

「触って欲しいの?」

「ち、違うよ! 違うけど……何で?」

「こう見えて結構疲れてんだよ俺。戦争に参加して大陸を飛ばされて、ダンジョンを半日で踏破して。1日のうちにどんだけ働くんだよ社畜かよ。ある意味リア充だよ」

「社ち……何? でも確かに普通は何日もかけて踏破するようなダンジョンを、全然休まないで踏破しちゃったもんね」

「それをアイラは一人で行こうとしてたんだもんな」

「うっ……だって……仕方ないじゃんかぁ。そうでもしないと……」


 イジメられるって?

 でもそれで死ぬことになったら、イジメてくる奴らの笑い者じゃん。


 時としてイジメられてる方は思考能力が落ちるのかな。


「とにかくそういうことだから、まずは休ませてよ」

「う……うん。でもヤシロは人間だし、すぐにバレちゃわない?」

「だからその帽子借りるよ」


 ヒョイとアイラから帽子を拝借した。


 あ、ちょっといい匂いする。


「ちょっと!」

「人間と魔者の違いなんて一部を隠しとけば分からないもんだし、これでいけるでしょ」

「どうなっても知らないよ」

「その時は暴れる」

「暴力的な思考過ぎない!?」


 アイラの住んでる所は魔者の住んでる所。

 でも彼女は恐らく信用できる。

 今後の見通しがつくまで、休ませてもらおう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る