第127話 三種の神技

「ここが最深部……」


 俺はアイラと一緒に最後の部屋へと辿り着いた。

 硬く閉ざされた扉の前に立ち、異世界人であることを証明する機械がある。


 これに手を置けば扉は開くはずだ。


「そういえば……ヴィルモールの奴が魔王は元々異世界から来た奴らだと話していたことがあったな……」


 魔者もそれに追随するようにやって来た。

 ということは魔者自体も異世界から来たということになる。

 俺と同じ世界ではないにしても、それは一体どういうことなのか興味ある。


「アイラ、ちょっとこっち来てよ」

「………………」

「アイラってば」

「え? あ、私のことか」

「も〜自分の名前ぐらい忘れないでよ」

「私の名前じゃないからそれ! ヤシロが勝手に言ってるだけじゃん!」

「ちょっとこの機械に手を置いてみて」

「なにそれなんか怖いんだけど……」


 渋々といった感じでアイラが機械の上に手を置いた。


 何も起きない。


 魔者なら扉が開くかと思ったけど、そういうわけじゃないのか?


「??? 別に変わらないよ?」

「基準が分からないな…………ちょっといい?」


 俺が手を置いた。

 魔力が吸い取られるような感覚がし、機械から地面を電気のようなものが扉へと繋がり、固く閉ざされていた扉が音を立てて左右に開いた。


「うわぁ開いた」

「さて…………アイラは扉の中には入らないで、ここで待機しててよ」

「何で?」

「アレ。星降鬼よりヤバイ奴がいるから」


 俺が指さした先には仁王立ちする赤い悪魔がいた。


 まだ中には入ってないから起動はしていない。

 ただ静かに使命を果たすその時を待っている。


「あれって…………上級魔人!?」

「いえす。初めて見る?」

「うん。話には聞いたことあって特徴とかは知ってるけど……実物は初めて見た」

「アレとは何度も戦ってきたことがあるから、実力は知ってる。単純な戦闘能力では俺と同じぐらいだから強敵だよ」

「いやいや……上級魔人と同等のヤシロもおかしいから」


 確かに。

 だいぶ麻痺してきてるけど、上級魔人相手に同等とか言える俺カッケー。


 結晶獣、青海龍の時とはまた状況が違う。

 守られ、協力し、今回はソロ。

 この部屋の中に入らなければアイラに危害は及ばない……はず。


「そういうわけで、アイツは俺が相手するから」

「でも…………一人で大丈夫なの?」

「え、心配してくれるんだ」

「ち、違うし! ここでヤシロが死んじゃったら私が地上に帰れなくなっちゃうからなんだから!」

「可愛い〜」

「あっ……み、耳はダメだってば! 帰るまで約束は果たされてないんだから!」

「えっ、じゃあ帰ったら触り放題でいいんだ」

「うっ………………や、約束しちゃった以上は仕方ないし…………」

「触られるの気に入った?」

「ばっ…………違うもんバカ!」


 ツンデレやで。

 さて、モフれた所で……。


武器変換ウェポンチェンジ一点集中型散弾銃ショットガン


 反則だけど、部屋の外から撃たせてもらう。

 逆に何で今までそうしてこなかったのかが不思議だ。

 アイツが起動する前に、外側から攻撃してやれば良かったんじゃん。


 この武器なら上級魔人と言えども致命傷だろ。


 魔力を大量に流し込み、ガシャコンッと装填される音がしたのを確認して、銃口を扉の外から上級魔人に向けた。


「アデュー、上級魔人」


 ドンッッッッッッ!!


 凄まじい衝撃と共に弾が発射され、部屋の中央にいる上級魔人にヒットした。


「風穴もらった!」


 だが、上級魔人の体に穴はなかった。

 定位置よりも衝撃で後ろにズレ、体の中央から赤い血をポタポタと流していたが、上級魔人はまだ生きていた。


「マジで……?」

「ウ……オオオオオオオオオオオオ!!!」


 赤い悪魔が咆哮をあげる。


 まさか一点集中型散弾銃ショットガンを食らって生きているとは思わなかった。


 どんだけ防御力硬いんだよ!

 上級魔人よりも遥かに硬そうに見えた星降鬼ですら貫いたのに、ただ流血させただけって……。


「ほ、ホントに大丈夫なの……?」

「だ、大丈夫大丈夫……」


 これぐらい乗り越えていかないと、次に魔王が現れた時に生きていられる保証はない。


 上級魔人がナンボのもんじゃい!

 単純な戦闘能力が同等だとしても、実直に戦うだけが戦闘じゃない!


『雷鳥』『獅子脅し』『避雷神』。


 この【三種の神技】を用いることで俺はこの世界を生き抜く!

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