第81話 国内開戦
俺達が魔者と戦っている間、既に戦況は動いていた。
魔王は既に国へと到達。
城門前にいた兵や討伐隊を強靭な脚力で飛び越え、国へと侵入するというトリッキーなプレーを見せていた。
既に混乱の渦は大きくなっている。
だが一方で、他の討伐隊が魔者を仕留めていた。
流石に紛争地帯で戦い慣れしているのか、俺達のような派手な攻撃でなくとも確実に敵を倒している。
「3人で戦えば魔者相手でも余裕を持って倒せるな」
「苦戦はしてないが、国の中に魔王と使徒が侵入してやがる。ここは他の討伐隊や兵士に任せて、国に戻ったほうがいいと思うぜ」
「強い駒は強い駒に当たるべきってか?」
「……自分で強い駒とか言うんだ」
そりゃあね。
多少は他の人達よりも戦えることは自負してますよ。
まずは自分の実力を知ることから全ては始まります。
「それじゃあ俺達は急いで反転しよう。魔王か使徒、そのどちらかを食い止める!」
「結局戦うつもりなんだな?」
「ここまで来て引けるかよ」
俺達は流れ弾に気をつけながらカンバツ王国へと引き返した。
国内では戦火が著しくなっている。
殆どのA級討伐隊がこちらに出払っている以上、魔王を止められるものがいるのか不安だ。
城門へと戻ると血だまりがそこかしこにできていた。
あまりに気持ちが悪く、思わず吐きそうになる。
「とんでもないな……」
「たったの十数人にこれだ。人間と魔族に大きな力の差があるのが分かったか?」
「何でちょっと魔族目線なんだよ」
「魔族だからな」
「そうだった」
「向こう……たぶん敵がいる」
確かにシーラが指差した方向から爆音が上がっている。
魔王か使徒のどちらかがいるのは間違いない。
「魔王と使徒、やるならどっちがいい?」
「魔王とやりたい奴なんかいるのか?」
「だよな」
向かった先が吉と出るか、凶と出るかなんてものじゃない。
どちらに進もうが凶と凶だ。
ザックリと、使徒は上級魔人に知性と魔法が備わった魔者だという話だ。
充分に化け物すぎる。
勝てるか?
「勝てる勝てないじゃねぇ。やるんだよ」
「人の心を勝手に読むな」
「だったら不安そうな顔をしてんじゃねーよ。戦うと言った以上は覚悟を決めてけつの穴引き締めろ」
「ま、けつの穴なんてはしたない言葉ザマス。シーラはこんな大人になっては駄目ザマスよ」
「…………変な語尾」
「ふざける余裕があんなら問題ねーな。…………間も無く会敵するぞ」
敵は強大だと始めから分かってるんだ。
ならこっちも最初から全力でぶっ放してやる。
バチバチバチと激しく発光し、銃はキンッと音を立ててショットガンの形に変わった。
大量の魔力を送り込むと、何も動かしていないのだがガシャコン! と弾が込められた音がした。
「新しく手に入れた武器を使うのか?」
「出し惜しみ無しで行こう。これで俺には奥の手はもうない」
一撃で終わればそれに越したことはない。
何よりこの武器一つで魔族を滅ぼせる力があると分かるんだからな。
……滅ぼせるってなんか魔王みたいな言い方だな。
「奴だ!」
人の悲鳴が上がっているなか、敵はいた。
口元を黒い布で覆っている男。
魔王だ。
「大外れかよ!」
魔王の周りには幾人もの兵士が倒れている。
討伐隊の姿は見えない。
既にやられているのか、外に釣り出されてしまっているのか。
この場にいるのは、もう間も無く殺されるであろう子供が数人と、遅れてやってきた俺達だけ。
「子供が周りにいたら俺は『獅子脅し』を撃てない!」
「俺がやる!」
ゼロは氷柱をいくつも出現させ、魔王グロスクロウへと放った。
「子供…………いや、青年か?」
グロスクロウがこちらに気付いた。
その瞬間、ゼロの放った氷柱は全てグロスクロウの手前で弾き飛ばされた。
「やっぱり弾かれるのは人間だけじゃねーみたいだな」
「じゃあ遠距離攻撃系はダメか?」
「お前の武器はどうなのか分からねー。とりあえずは子供救出が優先だろ?」
「間違いないな。俺とシーラが注意を引くから、ゼロは子供を頼む!」
「ああ」
俺達は二手に分かれ、グロスクロウの注意を散漫させることにした。
それでもなお、グロスクロウに動きは見られない。
誘っているのか……?
「例え子供であっても…………向かってくるのならばそれは戦士だ。それなりの覚悟を持ってきているはず。ならば俺もそれなりの対応をしなくてはならない」
何だアイツ?
まるで自分に言い聞かせるかのようにブツブツと……。
「子供はこれからの未来を変えていく可能性がある希望……魔族と人間が共生して暮らしていくことができる社会作りを担う一端…………。だ大人はダメだ……。既に
何をしているのかは分からないが、やるなら今がチャンスだろ!!
俺は『
「哀しき人類の大人達よ……俺が救済という名の解放をせしめてやろう。……時に君達はどちらを望む?」
唐突にグロスクロウがこちらへ語りかけてきた。
だが、それに答える必要はない。
既に俺の剣はお前の喉元へ届く位置にーーーー
気付けば天と地が逆さまになっていた。
グルグルと景色が動いて自分がどこにいるのか分からなくなる。
「うおあああああ!!」
「ミナト!」
何だ!?
何が起きた!?
分からない!
そんなことよりも今は受け身だ!!
上手く体をよじれ!!
この勢いだと周囲の家に激突…………!
「ぐあっ!!」
壁にぶつかるも、何とか頭からぶつかることだけは避けた。
「ミナト!」
「大丈夫だ! 警戒しろ!」
全力のスピードで首をかっ切りに行った。
それでも恐らくはゼロの氷柱のように弾かれたのだろう。
何か動作があったわけでもなく、発動タイミングが全く分からない。
魔法とは違う…………これが固有スキルか?
「君達に構っている暇はない。俺は汚濁にまみれたこの国を浄化にしにきただけだ。前途ある若者が無闇に命を落とすな」
「子供扱いされるのもムカつくけど……自分の思想に他人を巻き込むなよな」
「だが君以外の2人は魔族じゃないのか? 人間と魔族の共生を君達も持ち合わせていると思うが」
あれ?
これはもしかして話し合いができる?
「そうだな」
「なら君達も俺に協力してくれ。世界を正すために、腐敗した大人を排除しようじゃないか」
「やっぱ…………頭イかれてる奴とは話ができねぇな!!」
vs魔王グロスクロウ開戦!!
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