第82話 固有スキル
「この子達は気にしなくていい……。俺は子供は殺さない。より良い未来を創るためにも彼らは必要だからな」
「うわあああん!」
魔王はその言葉通り、走り去る子供達に危害を加えることはなかった。
「それで自分が許されるなんて思ってんなよ。てめーは人を殺しすぎた」
「許される? 可笑しなことを言う。俺は何一つ罪を犯してなどはいない。俺が行なっているのは世界の救済だ」
「ゼロ! こいつは話が通じないタイプだ! 全て自分の中で話を完結させていやがる!」
話す内容に何一つ正当性を見出せない。
自分の考えが中心であるとする、選民思想の持ち主だ。
自己中心的な考えを持っている辺り、ゲームでよく見るような魔王と同じイメージだ。
その内、世界の半分をやろうとか言い出すんじゃないか?
「世界の救済だの何だの大層なことを言っているようだが、自分の部下のことも把握しちゃいねーぜこいつは。お前の部下は俺を魔族の裏切り者だと言っていた」
「ヴァグのことか……。あいつは少々自分勝手なところがある。俺の言うことには従っていたが……」
自分勝手って…………お前のことは棚上げかい。
「そいつはさっき倒した。あとは……テメーだ!」
グロスクロウの足元に魔法陣が出現した。
遠隔魔法をゼロが発動させている。
バリバリバリッ!!!
魔法陣から電流が放電したが、グロスクロウは既にかわしている。
「
屋根の上に移動していたシーラが、炎の槍を何発も放つ。
だが、その全てがグロスクロウの手前で弾かれ霧散した。
「遠隔魔法じゃないと奴には効かないのか!?」
「数でダメなら…………威力で勝負!!」
俺は
「喰らええええ!!」
ドォオオン!!!!
ハンドガンの比ではない衝撃と共に、銃口から高威力の魔力が放たれた。
弾の速度は魔法以上ハンドガン以下。
それでも楽にかわせるようなスピードではない。
そのままグロスグロス直撃!
ではなく、
「これでもダメなのか…………!!」
「《
グロスクロウが左手を前にかざすと、その前に黒い渦のようなものが出来上がった。
「なん………………うわっ!!」
体がグンッと引っ張られるようにグロスクロウへと引き寄せられる。
その力はとても耐えられるものではなく、俺は成すすべもなく勢いよく引き寄せられた。
「ミナト!!」
「これは……っ!
それならむしろこのままの勢いで剣を突き立ててやる!
覚悟しろ!
「すぐに攻撃へと切り替えた判断は大したものだが……誰でも考えつく対処法だそれは」
グロスクロウが右手を構え、そして。
「《
ガンッッッ!!! という味わったことのないような衝撃が俺の体を突き抜けた。
勢いよく引っ張られた後に、逆方向へと勢いよく弾かれる。
ただ殴られるよりも体の内部への衝撃が強く、俺は飛ばされながら大量に吐血した。
「ゴフッ! がっ……!!」
「ミナトに何するの!!」
シーラが豪炎を放ったが、今までと同じように弾かれ霧散する。
「
「あっ!!!」
シーラの足元に黒い渦が現れ、地面へと
「う……動けない……」
あのスキルは自分の周りだけに使えるわけじゃないのか……!
「クソ野郎が!」
「がっ……ぐふっ……! ゼロ! 一人で向かうな! 一度態勢を……!」
「
「
台風のような風が一瞬巻き起こったが、グロスクロウの放った紫色の雷がゼロの体を貫いた。
あの魔法は確か魔王ガゼルの配下も使っていた魔法だ。
「があああああ!!」
俺も食らったことがあるから分かるが、普通の雷魔法とは違い、体を引き裂かれるような痛みを伴う。
ゼロはその場に崩れ落ちた。
「う……く……動け……ない!」
シーラも未だ動きを封じられている。
こちらの攻撃は通じず、向こうの攻撃は防ぐ
これが………………魔王か…………!
「だいぶ時間をとられた。共生派である君達は殺さない。気が変わったらいつでも俺を訪ねるといい。共に世界の救済を行おう」
こんな奴に……。
こんな狂った奴になめられたままで終われるか……!
俺はポーチに手を突っ込み、中に入っているビー球を無造作に掴むと、掴んだ分だけ地面に叩きつけた。
割れたビー球から何体もの魔人が出現する。
下級魔人、中級魔人を合わせて12体。
「まだ…………終わらせねぇ」
「君は……………………一体どういうことだ? なぜ君が魔人を扱うことができる?」
「俺に勝ったら教えてやるよ」
「ほう……。少し興味が湧いた。もう少しだけ遊んでやろう」
奴を倒すには意識外からの攻撃が必要だ。
数で圧倒して、奴の処理スピードを超えてやる!
「行くぜ魔人共!」
「「「オオオオオオオオオオオオ!!!」」」
第2ラウンドだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます