魔者と決戦編

第41話 4大陸と元勇者

 調べた所、この世界は大雑把に4つの大陸に別れているようだ。


 俺達がいる所がソウグラス大陸で主に森林地帯となっている大陸。


 2つ目がサンクリッド大陸で荒野や砂漠が多い大陸。


 3つ目がスノウェイ大陸で気温が低い大陸。


 4つ目がアクエリア大陸で湖が多い大陸。


 ソウグラス大陸とサンクリッド大陸は真逆の位置にあり、かなりの距離があることが判明した。

 なぜシーラがそんな所から飛ばされたのかは分からないが、辿り着くまでかなりの時間を要することになりそうだ。


 日本とブラジル的な感じなんだろうか。


 ただ何だ、俺のこの世界における職業? 

 これ討伐者ってことになんのかな。


 時間だけなら腐るほどあるし、実質ニートと同じだ。


 世界を股にかけるさすらいのニートマスター八代やしろみなとさんやで!


 とりあえず俺は一週間分の食料を買い込み、スサノ町を後にした。

 長い間お世話になったからな、ちゃんと感謝の礼を尽くさないとな。


「セァンキューでぇーす!」

「なにそれ」

「よくチャラ男が使う感謝の言葉だよ。ほらシーラも真似して」

「??? ……サンキューでぇーす」

「可愛いけどバカっぽい」

「ヤシロが真似してって言ったんじゃん!」


 教育上めっちゃよろしくないなチャラ男語。

 今後は二度と使わせないようにしよう。

 ザギンでシースーベーターしない? なんてP《プロデューサー》語もあるけどこれもやめとこう。


「えっと地図を見ると…………方向的にはこっちか」


 町で買った地図を見ると、シャンドラ王国とは反対の方角だったから助かった。

 来た道を戻るのもなんかヤダし、シャンドラ王国に戻るのもヤダ。


「ここからひたすら歩くことになるけど覚悟はオーケー?」

「…………余裕」

「魔物とかもバンバン出てくるけど?」

「…………倒せるし」

「キモい虫とかもいると思うけど?」

「…………森ごと燃やすもん」


 やめろ!


 というかそもそも木々がある所で火魔法を使わせること自体危ないな。

 山火事的なのになったら責任とれねーし。


「危ないから森で火魔法を使うのは禁止な」

「えー……そうしたら戦えないじゃん」

「いいよ別に。俺が全部やるから」

「やだ。私も戦う。ミナトの後ろから攻撃する」


 ダダこねおって……。


 パートナーとして自覚があるのは大変喜ばしいんだけど、半分はコレ自分の力を試したいだけだろうな。

 なぜ分かるかというと、結晶獣のダンジョン内で初めて戦おうとした時の俺がこんな感じだったからだ。


 他人のフリ見て我がフリ直せってね。

 もちろん俺は既に直ってるけどな。


「森がシーラの魔法で燃えたら大変だろ。俺達は水魔法を使えないんだから燃え盛る一択だぞ」

「むー……。じゃあ私も剣を持って戦う」

「はいじゃあ『雷鳥らいちょう』持ってみて」

「ふんっ……! ぐぐ……! っはぁはぁ…………ミナト、わざと重い剣持たせたでしょ」

「んなことするかよ! ちなみにコレ、かなり軽い素材で作られてるらしいから、他のはもっと重いらしいぞ」

「むーっ」


 ふっふっふ。


 口で言っても分からない相手には実際に体験させてやるのが一番なのさ。

 百聞は一見にしかずってね。

 おっと、一人でことわざ縛りみたいになってしまったぜ。


「とにかく、基本森の中とかでは火魔法禁止な。どうしてもっていう時だけは許可出すから」

「…………分かった」


 偉いぞと頭をクシャクシャと撫でた。

 頭を撫でると不機嫌な顔から笑顔になるから便利だ。


 ペットみたい。


「ほんじゃあ行くぜ! 目指せ! 最終目的地はサンクリッド大陸!」

「おー」



 ────────────────────



「…………それで? 計画は順調に進んでいるのか?」

「さぁどうでしょうね? 異世界から人間を召喚して、ヴィルモールの遺した武器を手に入れるところまでは順調なんですけど。どうも召喚した人間が楽観的というか適当というか……」

「召喚した人間に似るんじゃないか?」


 男がククッと意地悪く笑った。


「失礼な。僕は割りかししっかりしている方だと思いますよ」

「どうだかな。貴様は思ったよりも不真面目な人間だ。これで元勇者だというのだから笑える」


 そんな不名誉な笑われ方は勘弁してくれと僕は思った。


 ミナトと別れてから1ヶ月、移動に移動を重ねて僕はスノウェイ大陸の端、コールドリード山脈の一角に来ていた。


 ヴィルモールの遺した武器を無事に手に入れられたことで、僕の実質的な仕事は完遂したと言える。


「もしその男が道中でアッサリと死んでいたら? 貴様が見守っていたほうがいいんじゃないか?」

「過保護過ぎても人は成長しませんよ。いざという時に誰かに助けてもらえる、なんて考える悪い癖がついてしまう。それにもし死んでしまったのなら、別の人間を召喚すれば良い」

「ならば、魔人を使役する目的を無視する可能性は?」

「その点も問題ないでしょう。例えミナトがそれを拒んでも、世界が彼を逃さない。彼は必ず巻き込まれますよ」

「そういう因果律の魔法でもかけたか?」


 ククッとまたしても男が笑う。


「冗談。そんな魔法はありもしませんよ。ただの僕の希望的観測です」

「それでお前は今後どうするつもりだ?」

「せっかくここまで戻って来てアレなんですけど……シャンドラ王国で異世界召喚の魔法を完成させた、なんて噂を聞いたので……その真偽の調査に出ます。もし本当なら、ヴィルモールの武器を使えるのはミナトだけじゃなくなってしまう恐れがある」

「事実であれば…………始末すると?」

「さぁ? どうでしょうね」


 僕はニヤリと笑い、その場を後にした。

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