第38話 魔術練習。略して魔練
「フンフンフーン」
「楽しそうだな……」
鼻歌を歌いながら段差の上を歩くシーラ。
時折すれ違う人達が二度見しているのは、シーラが可愛いからなのか変人だと思われてるのか……。
まさか魔者だとバレているからというわけじゃないと思いたいが。
「やっぱりミナトと散歩してる時が一番楽しい!」
「そりゃどうも」
「ミナトも楽しい?」
「楽しい楽しい」
「なんかつまんなそう……」
「楽しすぎて発狂しそう!! ういいいいい!!」
「なにそれ馬鹿みたい」
「この野郎…………」
俺に陽キャラは無理だとでも言うのか……!
そんなことはないっ。
元の世界では渋谷や原宿のクラブに行ってパリピってる友人達と一緒に、マ◯オパーティでパリピッた事がある猛者だぞ……!
当然一位を勝ち取ったしな!
「それよりも、こんな町の中を散歩してるだけでいいのか? もしアレだったら町の外に出てみるのもアリだと思うけど……」
「別にいい。なんか前よりも高い位置から周りを見れるから、それだけで楽しいもん」
身長が伸びたからですなそれは。
30cm定規一本分ぐらいは伸びてるんじゃないか? たぶん。
そもそも頭身が変わってるもんな。
「まぁシーラがそれでいいんならいいけど」
「あ……ちょっとやってみたいこと思い付いた」
「何?
「…………魔法を上手く使えるようになりたい」
「ほう……」
なるほどな。
確かにシーラは火魔法を扱えるようになったが、この前の戦闘以来使ってないから、覚えてる内になんとかコツを掴みたいってことだろう。
上級以上の火魔法を使うシーラが後衛にいてくれれば、例え中級魔人が再び現れてもこの前ほど苦戦はしないだろう。
まさか俺のパートナーとして戦うって話が、こんなにも早く実現するなんて思ってもみなかったな。
「そしたら町から少し離れた所で練習してみるか。俺もシーラがどこまで魔法使えるのか知りたいし」
「うん!」
元気いい返事頂きました。
俺達は町を出て、少し離れた郊外で魔法の訓練を行うことにした。
時々人の往来があるようだが、まさか火だるまにするほど変な所に魔法は飛んでいかないだろう。
「それじゃあ火魔法使ってみ」
「うん」
シーラが目を閉じて静かに集中し始めると、周りの空気がピリピリしていくのを感じた。
──────────────────
〜【回想】〜
「魔法のランクは全部で6種類に分かれてるんだ」
「ほうほう」
生産魔法から講義を始めると言ったガルムは、何もない岩の壁をバシバシと叩きながら、まるで先生のように説明を始めた。
ナメてんのかと一瞬思ったが、こいつの場合割とマジメだから困る。
「魔法っていうのは実は、この世界で最もセンスが求められるものの1つなんだ」
「なるほど、初級魔法すら使えない俺はセンスがないと」
「そうは言ってないでしょ。卑屈になるの禁止」
俺がどの魔法も使うことが出来なかったのは記憶に新しい。
「センスがある人っていうのは、魔法を詠唱した時に魔力の流れが自分の身体のどこを通っているのか判別できたりするんだ」
「お前も?」
「そうだね。前に見せたように初級の魔法を撃った時は、手首の辺りから指先に魔力が流れているのを感じとれるよ」
「なるほど」
「それで魔法のランクについてだけど、初級、中級、上級、魔術級、魔導級、マスター級。魔法のランクはこの6つで、上にいくほど扱いが難しくてセンスが問われる。特に上級と魔術級には所謂、超えられない壁があると言われていて、魔術級を使えるようになればその人は魔法のセンスがあると言われるぐらいなんだ」
上級と魔術級の壁…………。
つまり最低でも魔術級は使えるようにならないと、特別にはなれないと。
「魔術級、魔導級は威力だけで言えばそこらのマスター級よりも上だ。ただ、詠唱する量も長いし魔力消費の燃費が悪いことから、あまり使う人はいないだろうね。魔術級以上を覚えれば、努力すればその内マスター級まで使えるようになるだろうし、極めればマスター級でも最高威力を繰り出せるから。使う人がいるとすれば、無詠唱で魔法を使えない人ぐらいかな」
「ちなみにガルムはどこまで使えんの? 全種類の魔法を使えるっていうのは知ってるけど」
「僕は生産魔法であれば、全てマスター級まで使えるよ。火魔法とか雷魔法のことだね。非生産魔法に関しては、光魔法と闇魔法はマスター級まで使えるけど、それ以外は上級までしか使えないよ」
「非生産魔法って治癒魔法とかか」
「そうそう。非生産魔法は個人の性格が出るというか……人によって波が激しいから、センスというよりもその人の生き様が影響してくるのかな」
「生き様って……。でも言いたいことは分かるかも。ゲームとかでも筋肉ゴリゴリの山賊みたいな奴が『ベホマラー!』とか叫んで後方支援に回ってたら、いや、お前は前出て戦えよって思うし」
「?? まぁそういうことだね。やっぱり治癒魔法が得意な人は女性が多いみたいだし」
「てことは俺が女の子のパンツを盗んだり、視姦してたりすれば闇魔法が得意になったりするのか……!」
「リアルな人間の闇はやめてよ。もし今僕に魔力があったら思わずミナトの四肢を焼き切るところだった」
「お前も大概闇が
─────────────────────
ボウッ! とシーラの手の平の上で炎が生まれた。
それを徐々に大きくさせ、バスケットボール並みの大きさまで成長させる。
「どこまで大きくできんの?」
「ミナト……」
「ん?」
「熱い……」
盲点だ。
長時間炎を自分の顔の前で生成するということは、もちろん自分にも熱さが、危険が及ぶということ。
実際に言われるまでそんなこと気付きもしなかったな。
あれ?
でもシーラが魔力覚醒した時、俺達の周りを炎が囲んでたのにそれほど熱くなかったよな?
必死だったからっていうのもあるかもしれないけど、それとは別に何か要因があるのかも……。
例えば自分の周りに何か魔力の壁みたいなものを作って、自分には影響ないようにしていたとか……。
「ミナト〜」
「ああごめん、無理せず撃っていいよ」
「うん」
手から離れた火球は離れた地面に衝突し、周りに生えている雑草を燃やした。
「手からだけじゃなくて、離れた位置にも作れるか?」
「んーと……できない」
そう言うと魔法を使うような動作を見せたが、実際には何も起きなかった。
「遠隔で使うには別のコツが必要ってわけか……。なぁ魔法使ってる時どんな感じ?」
魔法を無詠唱で使えるとマスター級だと言う。
それは人間にのみ適用する勝手な決め付けで、魔者とはまた違うのかもしれないけど、無詠唱で使えるコツを聞けば俺だって無詠唱で使えるようになるのかもしれない。
魔術級、魔導級は詠唱しても発動しなかったけど、飛び級で無詠唱が使えたらカッコよくない?
「んー…………なんかこうフワッとしたと思ったらグイッてなって、ギュイイイインてなる感じ」
「ありがとう。参考になったよ」
参考になるか。
シーラも感覚派の人間かよ。
天才肌は感覚派っていうけど、論理的に説明できる人間こそが天才だと思うんだよね。
自分で理解できてるって点で。
とにかく、俺も雷魔法を無詠唱で使えるように頑張ろう。
俺には銃があるし、遠距離攻撃は既に体得してるようなものなんだけど、引き出しは多くて困らないしな、うん。
あ、そういや銃の名前決めるの忘れてたな。
名前付けた方が愛着湧くって言うし、今度決めるか。
今日の所はシーラに合わせて魔法の訓練を行うことにしよう。
何も言わずに手から電気繰り出せるようになったろ!
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