第34話 スサノ町防衛クエスト(延長戦)
『1番最初に使えることができるようになった魔法がその人の得意魔法になるんだ』
ガルムが言った言葉を思い出す。
俺が教えていたのは雷魔法で、シーラはそれを使うことができなかったわけだが、もしかしたらそれはこの理由が原因だったのかもしれない。
もしくは今起きたことに要因があるのか。
詠唱せずともシーラは炎を周りに出現させた。
魔者の場合、覚醒と思われる事象を終えてから魔法を詠唱せずとも使うことができるのかもしれない。
俺は何も知らないのだ。
だから予測を立てて物事を考えるしかないが、それでも今、俺の目の前で何が起きているのかは明確に理解できる。
成長し、年相応になったシーラが俺の前に立ち、中級魔人との間に炎を
「あの子は今……詠唱せずに魔法を使った?」
「マスター級の魔法を使えるってこと?」
「いや、さっきまでは小さな女の子だったのを俺は知っている。それが突然成長した姿になって無詠唱の魔法…………魔者の特性と一致する」
「じゃああの女の子は魔者なのか!?」
周りの討伐者が様々な憶測を話している。
魔者は魔王に
そんなこたぁ後で考えりゃいいんだよ傍観者共め。
気にするべきは正面の奴だけだ。
「……ミナトに近づかないで!」
ゴウッ! と音を立てて炎はより一層燃え上がった。
それでも中級魔人は一度たじろぎはしたものの、足を再び動かしこちらへと向かってくる。
「シーラ! 詳しいことは今は聞かない、魔法を使うことができるのか!?」
「うん……何でだかは分からないけど、火魔法を使うことはできる」
「ならそのまま全力であいつにぶつけてくれ! 奴がこっちに近づけないようにするんだ!」
「分かった!」
シーラが手を動かすのと同時に、炎も操られているかのように動く。
炎は
「やあああああああ!!」
豪炎が魔人に直撃する。
討伐者が放っていた上級魔法よりも、威力は遥かに超えているように見えた。
これが魔者が使う魔法なのか。
「グオオオオオアアアアア!」
魔人の叫び声が聞こえた。
さっきまでスカしていたくせにザマーみろだこの野郎。
俺は銃を炎に包まれている魔人に向けて放ち続けた。
完璧な長距離戦術。
上級以上の魔法を放つシーラと、勇者に近い身体能力を持ち、伝説の武器を所持している俺。
2人の実力を足したスペックだけなら、マスター級の魔法を使う勇者にも届きうるはずだ。
シーラの覚醒という嬉しい誤算のおかげで、俺はまだ死なずに済む。
「やあ!」
シーラは何発も、何発も炎を放ち続けている。
俺のいる所まで熱く感じるぐらいにだ。
「グルアア!」
炎の中から魔人が勢いよく飛び出してきた。
その身体は炎に焼かれ、銃により大量に出血をしていたが、止まることなく一直線に俺たちの所へ向かってきていた。
シーラが両翼から巨大な火球を魔人にぶつけるも、長剣を
「ミナト、止まらない!」
「下がれ!」
身体がバラバラになりそうでも俺は立ち上がり、動かない左手をダラリとさせながらも右手で銃を構えて走り出した。
魔人のスピードと俺のスピード。
交わるまでの時間は一瞬だ。
それでもお互い満身創痍。
勝負はこの一度で決まる。
魔人が長剣を横に振るってきた。
俺は姿勢を低く低く保ち、その一撃を
と、同時に魔人の右足の甲に銃を撃つ。
グシャリと音がして、魔人の右足が潰れた。
躱したはずの長剣がすぐさま上から振り落とされてきていた。
右足を潰され、バランスを崩した魔人が、倒れこみながらも攻撃してきたんだ。
上体は既に躱せない。
だから俺は伝説と言われてる武器の硬度を信じて、銃でその一撃を防いだ。
ギャリィン! と激しい金属音と衝撃に襲われたが、銃は全くの無傷だった。
バランスを崩した魔人はそのまま斜めに膝をついた。
そして俺の銃口の前に魔人の顔が。
「………………チェックメイトだ」
ほぼゼロ距離で顔面に銃をぶっ放し、トドメをさした。
そしてもちろん、即座に銃に大量の魔力を送り込む。
銃が発光し、カチリと音を立てて
「これだけ苦労したんだ……。モノにできなきゃ怒るぞ」
俺は引き金を引き、ドンッッッッ! と大きな音と共に光が中級魔人を包み込み、ギュルギュルと回転しながら黄色の小さなビー球に変化した。
どうやら使役化には成功したらしい。
「…………やったあミナト!」
シーラがフラフラの俺に飛びついてきた。
さっきまでの小さき
「やったやった! ミナト生きてるよね!」
「生きてるよ……。ボロボロだけど……ってぎゃああああ左腕バンバンしないで痛い痛い痛い折れてるから腹も裂けてるからああああ!!」
嬉しいのは分かるけど俺の上で跳ねないで死んじゃう!
「うおおおおおおお!!!!」
周りで歓声が聞こえた。
他の討伐者達だろう。
歓声もいいけど誰か便利な便利な治療魔法は使えないんだろうか。
まだこの先、別の奴がやってくるとも限らない。
早いとこヘルプミー。
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