第32話 スサノ町防衛クエスト(中編)
「2体目ゲッツ!」
俺は続いて2体目にも
兵士達と戦っていた下級魔人を横から割り込む形となったが、1体目である程度の実力は分かったからか、2体目は比較的にすんなりと倒すことができた。
「すごいな彼は……。ほとんど1人で2体目も倒してしまった……」
「討伐者か? だとしたら滅多にいないA級ランクの討伐者か、もしくは二桁といないS級ランクの討伐者かもしれないな」
S級というのは勇者と同じレベルって話だよな確か。
まぁガルムが本当に2代目勇者だっていうのなら、あながち勇者レベルの実力っていうのも間違いじゃないけどな。
とりあえずこれで残るは1体だ。
見ると、本屋を教えてくれた3人のパーティと、4人のパーティが残る下級魔人を相手していた。
「残るはB級討伐隊『
先程、俺と共闘していた討伐隊のリーダーが俺の隣にやって来た。
「俺は『ジャイロスター』のリーダー、ジャイロだ。さっきは命拾いしたよ。ありがとう」
「3人のほうがB級ですか?」
「ああ。この町を拠点にしてる討伐隊で、結構な腕利きって話だぜ?」
確かに人数が多い4人のパーティよりも、連携に隙がなく、お互いがお互いをカバーしながら戦っているのが見て取れた。
とてもじゃないけど、俺には誰かとあんな風に戦うなんてできないだろうなって思う。
一朝一夕で身につくようなコンビネーションじゃないよあれは。
「とりあえず、彼らに任せておけば最後の1体も問題なさそうだな」
「ちなみにあなた達の討伐隊ランクはどれぐらいなんです?」
「ん? 俺達はC級だよ。討伐隊のランクは個人に比べて上がり易くはあるけれど、俺達全員C級だし、アンタに比べたら妥当な実力だよな。アンタはやっぱりA級以上なのか?」
「…………ご想像にお任せします」
「なんだよ。隠さなくてもいいじゃないか。シャンドラ王国にはA級の討伐者や討伐隊が結構集まるって話だし、こっちに流れてきても不思議じゃないぞ」
隠してるわけじゃないし、実際はD級だし。
シャンドラ王国は初代勇者の生まれた国で、討伐ギルド総本部があったからなぁ確か。
もし手配かけられてたら、そんなレベルの人間が襲ってきてたのか。
あぶねーあぶねー。
「ぜあああああああ!」
『鋼殻のブルータス』と呼ばれた討伐隊の剣士が下級魔人を切り裂いた。
それに続くように、周りの人間が連続的に魔法を魔人に浴びせる。
「グルオオアアアアアアアアア!!」
俺は一応銃を準備していたが、さすがに最後に良いとこをかっさらうのは気が引けたので、魔人に
下級魔人は呻きながら、サラサラと体が砂になっていき、その姿はこの世から消えて無くなった。
「下級魔人を倒したぞおおおおおお!!」
「やった! 初めてだ!」
「私達でもやれるのよ!」
『鋼殻のブルータス』の喜びようから見ても、この世界における魔人は、かなり強敵に分類されるようだ。
なにはともあれ、負傷者こそ出たものの死亡者は1人も出さずに下級魔人を3体倒すことができたのだ。
討伐隊の士気も上がり、結果は上々といえるだろう。
「続いてこのまま町に入りこんだ魔物達を討伐しよう!」
よし、俺もこの場を離れるか。
「ミナト!」
俺はその声にいち早く反応した。
シーラが大声で俺の名前を呼ぶ時、それはシーラに身の危険が迫っている時だからだ。
即座にシーラが隠れている路地に目を向けた。
が、シーラは何かに襲われているわけでもなく、命が脅かされているわけでもなかった。
「ミナト! 私じゃなくて上! 何か来てる!」
シーラが空に向かって指を指していた。
その先には、何かが一直線にこの場所へ飛んで来ていた。
飛んで来ているといっても鳥のようにではない。
まるで彗星のようにだ。
「なんだアレ……ってか危な! こっち落ちてくんじゃん!」
爆弾かなんかだったらヤベェ!
今すぐにこの場所を離れないと!
「シーラ! 急いでここから……!」
ダメだ! 間に合わねぇ!
轟音と共に、その何かは俺達がいる広場のど真ん中に落ちて来た。
地面はまるで下級魔人が殴ったかのようにエグれ、土煙が立ち込めている。
どうやら爆弾ではなかったようだが……。
「な、なんだ!?」
「何かが落ちてきたぞ!」
「一体あれは……?」
その場を離れようとしていた討伐隊や兵士が、突然落ちてきた何かに驚き、広場を囲むように戻ってきた。
土煙が消えていき、落ちてきたものの正体が露わになる。
「嘘だろ……」
誰かが絶望の一言をポツリと口にした。
変なフラグを立てるなよと突っ込んでやりたかったが、既に遅いらしい。
落ちてきた何かは、全身が黄色い体をしており、その体はまるで中世の騎士が身に付けているような鎧を身に纏っている。
いや、この表現は適切じゃないな。
鎧を身に纏っているように見える肉体だ。
赤い体をした魔人が、別の形の鎧を身に纏っているような肉体をしていたように、奴もまた鎧を身に纏っているような肉体をしている。
そしてその顔は、例によって悪魔のような顔。
「ち…………中級魔人だああああああ!!!」
ガルムが、魔法を使えなければ手強いだろうとまで言っていた相手が、突如として俺達の前に現れた。
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