第18話 有能な店主
3日後、俺は武器屋に再度赴くと店主の男が待ってましたと言わんばかりの上機嫌で出迎えてくれた。
「おう、タイミング良く来たな! ついさっき、アンタの頼んでいたケースが仕上がった所だ!」
なんとわずか3日足らずで作ってくれたみたいなのだ。
「思ったよりもずっと早くない?」
「初めての形の入れ物だったからな、アレコレ考えてたらその内ノッてきてな、思いのほか手が進んだんだよ。素材もウチにあるやつで1番いい奴を使ったからな」
そう言って店主がカウンターに作ったばかりの商品を置いた。
銀色に光っているそれは俺の銃と同じ様な形をしており、ベルトにくっ付いていた。
「色はアンタが待っていた武器に合わせて銀色にした。素材はカデナ鉱石といってだな、
ああ、『雷鳥』と同じ素材だ。
「皮とかで作るものだと思ったんだけど、鉱石で作るんだな」
「デザイン製も欲しくてな、銀色を出すには皮じゃ難しいと思ってカデナ鉱石にした。鉱石といっても、これの素晴らしいところはゴムのようにグニャグニャと曲がるところだ。だから機能性に関しても問題ない」
「なるほど」
「そんで、ボタン留めの形にした。一つは、その武器本体をしまった時に、動かないように持つ部分を留めるためのボタン。もう一つはその上から被せるようにして武器本体が見えないようにするための物を留めるボタン」
店主がケースをを指差しながら一つ一つ説明する。
なんとなく警察官が待っている拳銃入れに似ている気がする。
そんな間近で見たことないけど、アレも確か拳銃本体が見えないように被せるものが付いていたはずだ。
ネット知識だけどね。
「取り出す際には、まずこの被せてあるものを外し、続いて本体の持つ部分を留めてあるボタンを外す。二段階で面倒臭く感じるかもしれないが、下から上にスライドすればボタンが連続でパパッと外れるようになっている。武器を落とす心配もなく、取り出すのに手間取る必要もない。我ながら良く出来たと思っている!」
店主が自慢げに腕組みをしながらウンウンと頷いた。
俺は何度かボタン留めて外してを繰り返してみたが、確かに簡単に二つのボタンは外れる。
これなら急に敵が出て来ても、早撃ちのガンマンのごとく取り出せるだろうな。
やるじゃんおっちゃん!
「そんでこのベルト。どうやら兄ちゃんも腰にその武器を差してたみたいだからな、腰に巻けるようにベルトを一緒に作った。ベルトは普通の皮で、そんなにディティールに拘ってはいないが……まぁベルトぐらいなら壊れても作り替えられるからな」
どうせならそこも拘って欲しかったけど……これ言うとまた時間かかりそうだし、とりあえずはいいか。
「んで、どうよ。この出来栄えは。満足いったかい?」
「ん〜………………」
俺は腰の銃を取り出し、ケースの中に銃をしまった。
ピッタリフィットし、特に不満な所はどこにもなかった。
「うん。問題ねーや! あんがと!」
「いいってことよ。こっちも大分潤ったからな」
まさにwin-winの関係だな。
俺はベルトを腰に巻きつけ、銃が右側に来るようにセットする。
確かにデザイン的にも悪くない……バッチリだぜ!
「良く似合ってるぜ兄ちゃん」
「
「何を一人で騒いどるんだ」
俺は武器屋を後にした。
今日の目的は無事達成できたし、どうするか。
やる事ないから、シーラの所にでも顏を出すかな。
俺はシーラが泊まっている宿屋に向かった。
毎日シーラの所に顔を出してやらないと外に出ることが出来ないので、暇があればシーラの所に行くようにしてる。
まぁ毎日がニートみたいなものだから? ほぼ一緒にいるわけですけどね。
金はまだないけど。
「シーラ、今日も来たぞー」
俺が部屋の外からノックをしながら呼ぶと、ガチャリとドアが開いて、嬉しそうな顔のシーラが出て来た。
「ミナト!」
「調子はどう?」
「バッチリ!」
この数日で大分シーラも変わった。
全てに失望していた目は今ではキラキラと生気を取り戻し、パタパタと走れるまでに回復してる。
まだ身体は細いが、身なりを整えて腹一杯飯を食って休んだことで、たった3日でここまで回復することができた。
もしかして俺はカウンセラーとしての素質があったのか!?
なーんて、単純にこの子の精神が強かっただけだろうなぁ。
だって俺は特に何もしてないし。
こういう時どうしたらいいのか分からんから、一緒にいて一緒に話をしてただけだから。
「今日はどこ行くの?」
「どうしようかねー。街の外にでも出掛けて見るか」
「うん」
まだここに来てから国の外には出ていない。
そろそろ俺も外に出てみたかったので、今日はシーラと国の外にでることにした。
もし近くに魔物なんかがいれば、久々に銃をぶっ放したいし。
俺はシーラを連れて宿屋を出たが、そのタイミングで丁度俺の事を見た国の兵士っぽい人間がこちらに走ってくる。
なんだなんだ。
ちょっと身構えちゃうじゃん。
「
「マジか!」
遂に来たか……!
俺が勇者になるイベントが……!
「ミナト……外は……?」
まだ他の人が怖いのか、シーラが俺の後ろに隠れるようにして聞いた。
「悪い、ちょっと用事ができちゃったからまた明日だ。城に戻らないといけなくなったからさ」
「えー………………」
目をウルウルと潤ませながら俺を見上げてくる。
切なくなるからやめて。
「早く終わったらまた来るから。もし今日がダメでも明日があるし」
「…………………分かった」
「よし」
俺がシーラの真っ赤な髪をわしゃわしゃと撫でる。
なんかちょうど撫でやすい位置に頭があるから癖みたいになってるわ、コレ。
「そんじゃあシーラは部屋に戻っててな」
「…………ミナト」
「何?」
「…………いなくなったりしない?」
「なんだよそのフラグ。いなくならないよ」
そう言うとシーラは満足そうに宿屋に戻っていった。
「ほならね、行きますかね、王城に」
兵士の方に案内してもらいながら、俺は城へと戻った。
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