第12話 シャンドラ王国
先程の戦闘について、時間が経つと反省したくなるようなことが次々と頭に浮かんでくる。
その時は自分に酔っていてカッコつけていたけど、客観的に今考えてみると急に現れた奴が味方1人の足を負傷させ、それに加えて3人を魔法で気絶させたことになるよな。
クソ野郎じゃん。
去り際のセリフも今考えると超恥ずいからね。
何が「お邪魔しました!」だよ。
お前邪魔しかしてねーじゃん。
なんだかなぁ、このRPGみたいな世界の景色を目の前にして興奮してんのかな。
もうちょっとこう……クールにね?
余裕を持って行動できる、そんな大人に俺はなりたいです。
よし、反省終わり。
ひたすら歩いて三千里、ではないけれど、舗装された道から少し離れた部分を歩き続けて1時間ほどだろうか。
少し人通りが増えてきた気がする。
そして遂に大きな城が視界に入り始めた。
俺は舗装された道に戻り、行き交う人々をキョロキョロと田舎者のように見ながら、城に近付いた。
近付いてみて分かったが、城はその大きさから1番に見えただけで、その周りは城壁で囲まれており、城下町のようなものが広がっている。
城もかなりでかいが、その外壁もぐるりと周りを町ごと囲んでいる。
外壁の端っこが見えないくらいだ。
そして、もちろんのごとく正面には大きな門のようなものがある。
門は既に全開で、どうやら出入りは自由らしい。
身分証提示みたいなものがあったらどうしようかと思ったぜ。
その正面玄関には先程ワニに襲われていた兵士と同じ格好をした人が何人も立っていたことから、やはり馬車に乗っていたの女の子はこの国でも重要人物であることが予想できた。
だったらもう少しマトモな護衛を連れてくべきなんじゃね? とも思ったが何かしら事情があったのだろう。
まぁマトモな護衛連れてたらピンチの場面に出くわしてなかったわけだけど。
そんなチャンスを逃して仲良くなれなかったのはマジで失敗だったみたいだなぁ。
最初から素直に魔法か剣術で助けに入れば良かったぜ。
おっと、反省はさっき終わったんだった!
ガヤガヤと
というかシャンドラ王国でいいんだよな? ここ。
特にそれらしき名前が書かれてなかったから勝手にそう思ってたけど。
俺は中に入ってキョロキョロと辺りを見回すと、確かにここがガルムの言っていたシャンドラ王国であることが分かる垂れ幕を見つけた。
『初代勇者の生まれた国 シャンドラ王国へようこそ!』
文字は……日本語でもなんでもないけど、自然と頭に入って来るな。
これも特権になるのか……?
それにしても初代勇者か……。
ガルムが最後に言っていた勇者ってのはコレのことだよな。
初代ってことは何人も勇者がいるのか?
俺は街並みの風景を楽しみながら、何か面白そうな所はないかと城の方向に歩いてみる。
なんというかヨーロッパのような造りだ。
ドイツを思い出すなぁ。
ドイツ行ったことないけど。
「おお!」
散策途中、一際大きく目立ち、重装備や魔法使いのようなローブを着た人達が出入りして賑わっている建物を見つけて、俺は思わず声をあげた。
その建物の看板にはデカデカときらびやかに『討伐ギルド総本部』と書かれていた。
「やっぱりあるんだなぁこういうの。ゲームや漫画と似た雰囲気を感じる」
親の顔よりも見た設定。
なにはともあれ、城に行く前にちょっとギルドに寄っていって情報収集だ!
何事もね、情報量がものをいうんですよ。
ネット社会に揉まれている現代っ子だからこそ情報の貴重さが分かるんだぜ。
俺は討伐ギルドの門を意気揚々とくぐった。
中にはそれはもう沢山の冒険者? 討伐者? がいらっしゃった。
老若男女問わず、マッチョもマッチョでないのも、エロい人もエロくない人も、イケメンもブサイクも、美女もブスも。
酒っぽいのを飲んでいる人も飯を食っている人達もいる。
酒場でもあるのか。
俺はさっそく受付のような所に行く。
討伐ギルド総本部と書いてあっただけに、世界中の中心のギルドがここなんだろう。
受付にいるお姉さんも可愛い。
元の世界でも大手企業の受付の人は顔採用で可愛い人ばかりなんて噂も聞いたことあるし、その辺りは同じ人間同士、感性も同じだな。
「すいません」
「はい。どういったご用件でしょうか」
俺は初心者なんかとは思われないように、こういう所はもう慣れてますよオーラで受付のお姉さんに話しかけた。
お姉さんは見事な営業スマイルで応対してくれた。
「ここではアレですか、どういった仕事を紹介してるんですか?」
こういう所ではクエストの受注をすることができると、相場では決まっているのさ。
漫画やアニメの相場ではな。
「はい。主に王国周辺の魔物の駆除や、重要防護指定人などの警備などがありますよ。下級魔人の討伐クエストなどもありますが、この辺りには魔王の手も及ばないため、滅多にありません」
「なるほど。ちなみに今あるクエストで1番難しいのは?」
「A級の魔物に指定されているワニレオンの巣の破壊ですね。最近、近くの川辺に住み着きまして、自分達で鎧も作れる知恵があるので自分達でも殺せそうな相手を選んで襲ってくるので困っているのです」
ワニレオンってさっきの鎧ワニだよな。
あいつらもA級の魔物だったのかよ。
ダンジョン内にいたアリとかクモの魔物のほうがデカくて強かった気がするけどなぁ。
A級っていってもピンからキリまであるのかも。
「報酬は?」
「50万
分からん。
50万円でいいのか?
「いかがなさいますか?」
あの程度だったらサッと行ってサッと帰ってこれそうだな。
一応受注しておいて、とりあえず城に行ってから考えるか。
「それじゃあお願いします」
「分かりました。それでは討伐者IDをお貸し下さい」
「ん?」
「はい?」
討伐者IDってなんぞ?
「えっと…………一応討伐ギルドに加入されている方全てにお渡ししているものなんですけど…………。これがないとクエストを受注することができないので……。もしかして初めての方ですか?」
ああああああバレたあああああ!!
IDとかそういうの必要なタイプだったかあああ!!
門の入り口で必要なかったから安心しきってたわ!!
「いやっ……その……あっ! そうそう、宿屋に忘れてきたんだった! 着替えた時にうっかりとね! すいませんねぇもう」
「大丈夫ですが……紛失には気を付けて下さいね。再発行には少々お時間かかってしまいますので……」
「了解しました、ご忠告ありがとうございます! では、一度失礼しまーす」
俺はそのまま回れ右してギルドから出た。
なんか最初から素直に初めてですって言えば良かった気がする……。
もう受付があの人の時は行き辛い……!!
なんか1人になってから為すことやる事裏目に出すぎじゃね……?
やっぱり寄り道するからこうなるんだよなぁ。
最初っから目的地に向かってレッツゴーしたほうが、考えがあっちこっち分散しないからいいみたいだ。
じゃあこのまま寄り道せず、あのデケー城に向かおう。
俺は気を取り直して歩き出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます