第11話 助っ人参上!
ダンッ! ダンッ!
ガルムに教えてもらった国に向かうべく、森を歩きながら銃を試し撃ちしてみる。
本当に反動が少ないため、練習すればすぐに当たるようになるだろう。
それにガルムの99%の魔力が俺にはあるため、そうそう魔力切れを起こすことはない。
つまり弾はほぼ無尽蔵だと考えて問題なさそうだ。
ちょこちょこ虫型の魔物と思われるものが現れるが、ダンジョンの中にいた奴らと比べるとまさに虫けらだ。
サッカーボールほどの大きさがある魔物もいたが、全て銃一発で吹き飛ぶ。
剣術も魔法も必要としない、まるで作業だ。
ちなみに魔力を多く込め、魂として魔人に撃ち込む(
とりあえずシャンドラ王国の方角は教えてもらったが、距離がどの程度離れているのかまでは分からないので、少々足を早める。
ダンジョン内にいた頃は、風呂なんかはガルムが魔法を使ってお湯を出していたが、俺は現在水魔法が使えない。
お風呂に入ることができないのだ。
さらにそれだけじゃない。
火魔法も使えないからサバイバル生活もできやしない。
肉も焼けないぜ。
肉がなければ虫を食べればいいじゃないって?
バカおっしゃい。
今まで何もせずとも飯が出てきた18年間を過ごしてきたのに、そんな昆虫食なんてゲテモノ食えるわけがないじゃん。
ガルムが作る飯は中々うまかった。
ちゃんとした肉が出てたあたり、あのダンジョンにも虫型の魔物以外も生息していたんだろう。
こんな森の……イノシシとか熊とかに似た生き物が出てきても結局食えねえし、早く国に辿り着いたほうがいいよな。
多少力を込めて地面を蹴るだけで、走り幅跳び世界王者と同じくらい跳ぶことができる。
この身体能力のまま元の世界に戻れば一躍ヒーローだ。
これでも俺の現在の身体能力はガルムの70%ほどらしい。
ガルムの話では、今後も今まで行ってきた修行を行えば、100%フルに身体能力は上がるのだとか。
さらに言えば、ガルム自身はそれ以上成長することはないようだが、俺の場合はその後もサボらなければゆっくりとだが成長はするらしい。
いつか俺1人でも上級魔人を倒せる日が来るかもしれない。
胸熱だ。
「おっ」
少し森が開けてきた。
ダンジョンからここまで道が舗装されていたわけではないので、変な所から出てきたのかもしれないが草原が広がっていた。
草原には一本道が引かれており、森を避けるように舗装されている。
森と反対側に向かえばシャンドラ王国があるのかもしれない。
ドォォォォン!!
突然爆発音が鳴り響いた。
見ると、炎の柱が立ち昇っているのが見えた。
方向的には今から向かおうとしている方向だ。
「凄いメンドくさい事に巻き込まれそうな予感……。でも野次馬精神でちょっと見に行ったろ」
遠くから見るだけならタダだから。
この世界で初めてガルム以外の人間を見る事ができるかもしれないし、他の人がどれだけ動けるのかも把握しておきたい。
場合によっては、俺最弱説も0じゃないからね。
魔物が弱いだけで、この世界の人間はみんなガルムぐらいの事はできるかもしれないから。
俺は音のした方にヒソヒソと走り出した。
丘の上から見える位置まで移動すると、魔物? に囲まれている馬車を発見した。
魔物かどうか分からないのは、なんかワニみたいな奴が二足歩行で、なおかつ鎧をつけながら槍を持っているからだ。
今までの虫型とは違って爬虫類のような感じなのだが、あれも魔物なんだろうか?
もしくは魔者か?
とにかく、そのワニみたいな奴ら20体ぐらいに兵士みたいな格好した人達が10人ほどで対応している。
その周りには倒れている人も数名いる。
まさか死んでるのか……?
距離が遠くてあまりリアルには感じない。
明らかに馬車を守っていることから、多分馬車の中にはどっかのお偉いさんがいるのだろう。
この位置からだと誰が乗っているのかは分からないな。
見ていると再度、ドォォォン!! という音がし、
どうやら先程の爆発音も含めて、今の爆発は兵士が使った魔法のようだ。
火魔法じゃなくて爆発系統も作り出せるなんてちょっと面白いな。
兵士による爆発魔法、それでも鎧ワニは
馬車が目的なのか人を食べることが目的なのか…………。
さて、俺はどうしようかな。
ぶっちゃけ見ている限り、兵士と鎧ワニの動きが大したことなさそうなことから、やっぱりガルムはこの世界でもかなり強い奴だって分かっただけでも満足したわ。
なんかああいうガチの殺し合いみてるとなんか怖いし。
申し訳ないけど関わらないのが吉なのでは、と。
そういうことだから、この世界の住人さん頑張って。
俺がシュタッと敬礼をしてその場を離れようとした時、馬車の中にいた人が出てきた。
目を奪われたよ。
美人さんでした。
サラサラと流れるようなブロンドヘアに端正な顔立ち。
なんとお姫様であらせられましたか。
年齢的には俺と同じくらいなのだろうか、気品溢れる中にも活発そうな性格が伺える。
それなら話は変わってきますよ。
何度このシチュエーションを妄想したか。
ピンチの所に颯爽と助けに入る俺? 的なこのシチュエーションをねぇ!
だが俺は一旦落ち着く。
ここですぐ助けに行くのもいいが、俺はスッマートな人間。
まずはもう少し近づいた位置から射撃で援護。
そして誰が助けてくれたのか分かっていないところで俺が登場し、ハッピーエンド。
完っ壁。
とりあえず俺は近づくために丘から滑り落ち、所々に生えている木に身を隠しながら進む。
その際に気付いたのが、先程の爆発魔法は兵士が使っていたのではなく、馬車の中にいた女の子が使っていたということだ。
彼女が何かを詠唱すると、身体の周りに呪文のような光の文字が現れる。
その後鎧ワニが音と共に炎上していた。
なんか彼女だけでも倒せそうな勢いだが、それでも1人、また1人と鎧ワニの槍の餌食になっている。
これ以上犠牲者を出さないためにも、俺は銃に魔力を込める。
彼女らを助けるのは下心からだが、助けないよりかはマシな行為だろう。
やらない善よりやる偽善だ。
魔力を弾に変換し、銃口を50mほど離れている鎧ワニに向ける。
ここからでも十分に当たるだろうという予測だ。
そして俺は引き金を引いた。
ダンッ! という音とともに弾が射出し、鎧ワニに向けて一直線に飛んでいく。
引き金を引いてからすぐに鎧ワニの鎧が砕け散り、後方へと吹っ飛んでいった。
見事にヒットしたということが見て分かった。
「な、なんだ!? ワニレオンが急に吹っ飛んだぞ!?」
俺が銃を当てたワニと戦っていた兵士の1人が驚いたように声をあげている。
あの鎧ワニはワニレオンという名前なのか。
頭に皇帝がついて「吾輩の辞書に不可能はない!」とか言いだしそうだな。
それにしてもいい感じじゃない?
面白いようにワニレオンが吹っ飛ぶし、この調子で他の奴らも全て片付ければバッチリだぜ。
俺は2体目に照準を合わせ、引き金をひく。
今度は肩に当たり、同じように吹っ飛んでいく。
流石に何かに気付いたのか、兵士達が周りをキョロキョロしだす。
安心しな。
俺が全部ぶっ倒してやるからさ。
3体目に照準を合わせ、引き金を引いた。
が、これがワニレオンではなく、戦っていた兵士の足を貫通した。
やべぇ。
「ぐああああああ!!」
「大丈夫か!? 味方かと思ったが、援護してくれてた奴は俺達の敵でもあるみたいだ! 気を付けろ!」
や、やっちゃった…………。
これでもう顔出せねぇ…………!!
今颯爽と顔出して「援護していたのは俺だが?」とかやってみな?
爆発魔法が俺に飛んできて粉微塵だよきっと。
「あそこに……人影が……?」
「む、本当ですか!? おい! 向こうにも何人か向かえ!」
ヤベッ!
女の子が俺に気付いたのか、こちらを指差してきた。
兵士が3人こちらに向かってくる。
もうこれはカッコよく彼女を助けている場合ではないぞ。
俺が誤射したせいとはいえ、こんな所で犯罪者としての汚名を着せられたらこの先、この世界で生きづらくなっちゃうこと間違いないって。
だからもうなりふり構ってられない。
「紡げ、
俺は木陰から飛び出し、こちらに向かってきている兵士3人に初級雷魔法を放った。
初級といえど、魔力を込めればその分だけ威力は増す。
中級や上級のような複雑な動きは出来ないが、使い勝手はいい。
「「「ぐああああああああ!!!」」」
兵士達は突然の魔法に対応できずに、俺の雷魔法を食らって倒れた。
向こうにとどまっている兵士や女の子にも動揺が走るのが分かった。
申し訳ない。
俺の未来を守るためには仕方がないことだったんだ……!
「なんと……このタイミングで盗賊か……!! なんとしてもニーナ様だけは守れ!」
「ああ……私のせいでまた人が……!!」
これは完全に悪者になってしまった流れですなぁ。
ま、兵士に対して堂々と攻撃したんだからそう思われても仕方ないよな。
でも勘違いしてほしくないなぁ。
俺はこの3人を気絶させただけで、殺してなんかいない。
これでも威力は大分抑えたんだからな。
本当に殺す気で撃つ時は…………これぐらい魔力を込めるもんだぜ……!!
俺はガルムに何度も食らわされた雷魔法を思い出しながら、両手に魔力を込める。
上級魔人に放ってやったアレだ。
「紡ぎ、発光せよ! 神の雷を持って細胞を死滅させ給え!
俺の手元から放たれた雷撃が馬車の頭上へと帯電していく。
「なんと上級魔法か!? ニーナ様! 防御呪文を───」
そんなの意味ないぜ!
なぜなら、する必要がないからな!
帯電した雷から稲妻が雨のように降り注ぐ。
その全ての稲妻は兵士や女の子を避け、全てワニレオンへと直撃していく。
「ウオオオオオオオオ!!!」
全てのワニレオンが雄叫びをあげながら朽ちていく。
圧倒的オーバーキルにより、真っ黒の焦土と化してしまった。
やり過ぎ?
いいや、天罰だぜ!
「こ、これは…………!?」
「私達を狙っているわけではないのですか……?」
「いや、生け捕りかもしれません! 油断はせずに!」
ええ……超疑うじゃん。
これは何をやってもやっぱり信頼を回復するのは無理そうだな。
ということで。
「お邪魔したようで失礼しました! ここに倒れてる三人は気絶してるだけなんで、置いていくことのないようにお願いします! じゃあ本職はこれで!」
「なっ…………!!」
それだけ言い残して俺は反転して走りだす。
多少遠回りになりそうだけど、迂回して彼らとは会わない方が良さそうだ。
それに、完全にヒーロー誕生物語失敗したわ。
やっぱり妄想と現実は齟齬が生まれやすいということを改めて認識。
もう少しミスなくできれば快適に過ごせそうなんだけど、ま、いっか。
とりあえずシャンドラ王国に行ってこの世界の知識増やそうかな。
幸いなことに召喚の恩恵ってやつで言葉は通じるから、問題は文字がどうなのかだよなぁ。
もし読めなかったらどうしよ。
頭も補正かかって良くなってないかなぁ。
なんて、そんな時は可愛い通訳でも雇えばいいか。
金ならあるんですよ。
やっぱり世の中財力よ財力。
俺は舗装された道が見えるギリギリの場所まで離れると一度足を止め、シャンドラ王国があると思われる方向を確認すると歩きだした。
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