大便器で会いましょう

トカゲ

俺はトイレに走る


 小学校でウンコをするのには勇気がいる。

 女子はそうでもないかもしれないが、男子はウンコをしようとすると個室に入らないといけないから直ぐにバレるし大変なのだ。


 今日は朝からお腹が痛かった。

 家では出なかったのに学校で出そうになるなんて最悪だ。

 俺は授業が終わると同時に走り出した。目指すは4階にあるお化けが出ると有名なトイレだ。あそこなら誰も近づかないし、俺がウンコをしていてもバレる事はない。


 話しかけてこようとする友達を振り切って俺は走る。

 何故ならここは1階だからだ。このままだと間に合わないかもしれない。


 廊下を走るなと先生に怒鳴られるがそんなのは気にしない。

 先生だって廊下を走る行為よりもウンコを漏らされる方が嫌なはずだからだ。


 4階にあるトイレに辿り着いた。

 ここはみんなが怖がって掃除すら碌にしないので結構汚い。

 まぁ、使う人もいないから、水垢とかそういう汚れだけだけど。


 入り口からみて1番目と2番目の個室は故障していて使うことが出来ないので俺は3番目の個室に入った。

 他の階のトイレは洋式の便器になっているのに何でここだけ和式なんだろう? 

 俺は生まれてから洋式便器を使い続けている生粋の洋式便器派なので本当は和式便器には跨りたくはないんだけど、今日は緊急なので仕方がなく跨った。


 ズボンを下した俺は排泄物を便器にシュートする。

 我慢していたからなのか俺のウンコは止まる事を知らない。

 それはまるでドラゴンだ。茶色のドラゴンが白い便器を蹂躙していく。

 俺が開放感に打ち震えていると、何処からか視線を感じた。


 もし知ってる奴に見つかったとしたら俺は明日からウンコ君というあだ名を付けられて学校中の笑いものにされてしまう。チクショウ、お前らだって家ではウンコするくせに何言ってやがるんだ! いい加減にしろ!


 俺は視線の主を見つけるために周囲を見回す。

 すると俺の後ろにおかっぱの美少女が顔を赤らめて立っているのを発見した。

 「何してんの?」

 「えっと、あの、私は花子さんです。ここに住んでるんですけど、アナタがいきなり入ってきて……」

 「自分をさん付けするやつ初めて見たよ。あとトイレは住居じゃないぞ?」

 「ごめんなさい! でもそう言った方が分かりやすいかなって思って」

 俺は顔を赤らめている美少女を見て思い出した。

 そういえば、ここに誰も来ないのってトイレの花子さんが出るからとか聞いたことがあるな。

 という事は、この美少女はあの有名なトイレの花子さんという訳か?

 彼女がもしトイレの花子さんだったとしても、俺はウンコを止めることはできない。何故ならこれは生理現象だからだ。1週間ぶりのウンコだからだ。

 「キミはもしかしてトイレの花子さんなのか?」

 「そうですけど」

 「じゃあ証拠を見せてくれよ」


 俺の言葉に彼女は頷き、宙に浮くという幽霊っぽい事をしてくれた。

 これにはびっくりだ。本当にトイレの花子さんっぽい。

 「まじかよ。こんな可愛い子が花子さんなのかよ」

 「私なんて可愛くないですよ」

 こんな美少女にはできれば生前に会いたかったなぁ。

 ちょうどウンコも終わったのでお尻を拭いてウンコを流す。

 しかし、幽霊とはいえ美少女にウンコをしている所を見られるのは興奮するな。


 「邪魔して悪かったな。直ぐに出る事にするよ」

 「はい、何かすいません」

 「それでなんだけどさ、また来ても良いかな? 俺、キミと友達になりたいんだ」

 「えっ? こんな私と友達、ですか?」

 「ダメかな?」

 「そんなことない、です。あの早くズボン履いてくださいよぉ……」


 俺はこうして花子さんと友達になった。

 ウンコが結ぶ友情ってのもあるんだな。

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