3.撃墜
「アイ! 全砲門展開! 一斉攻撃!!」
『かしこまりました!』
巨大卵に向け、プラズマミサイルを発射、レーザー砲台を展開し照射する。
レーザーが命中するも表面の銀色装甲には効果が薄い。攻撃をものともせず、巨大卵は上昇していく。
「上昇だ! 追いかけるぞ!!」
『はい!』
ソレイユはその場で急激に機首を真上に向け、一気に上昇を開始する。
既に巨大卵にはかなり先行されてしまっている。追いつけるか!?
「ジジルア中佐! 撃墜をお願いします!!」
「ああ、こちらでも捉えた。周回軌道で狙い打つ。」
迂闊だった。あいつは星間航行してこの星まで来ているんだ、このくらいのことはやってのけることを想定しておくべきだった。
追いつけなかったミサイルが、推進剤切れで落ちていく。
数回レーザーを照射するが、効いてる感じがしない・・・・・。
ソレイユも速度にはなかなか自信はあるのだが、離されないように追いかけるだけで精一杯だ。
空が黒くなり星が見え始めた。大気層は既に抜けたようだ。
巨大卵の表面、ロケットエンジンとは別の閃光が発生する。
連邦軍からのレーザー攻撃で巨大卵が焼かれている・・・・、だが、止まらない。
ミサイルは追いつけない。レーザーでは焼ききれない・・・・・、それなら!!
「アイ、SDモードだ!!」
『かしこまりました。SDモード起動!』
ドゥジェムになって搭載された新機能の一つ、ソレイユのSDモードだ。重力ドライブが一層甲高い音を上げる。
ソレイユが急加速する! 重力コントローラでも打ち消せないほどの過重が発生し、シートに押し付けられる。
ぐんぐんとソレイユが巨大卵に近づいていく。
「防壁、全面へ全力展開!! 前方へレーザー一斉射!!」
『重力場電磁防壁、全力展開! レーザー照射!!』
「いけぇぇぇぇぇ!!!」
SD状態で放つ強力なレーザーが巨大卵の下部を猛烈に加熱、そこへ防壁ごとソレイユが衝突した!
艦内に激震が走る。今度は前に吹き飛ばされそうになったが、前方コンソールから衝撃吸収用クッションが飛び出し、受け止められる。
半融解した巨大卵の表皮を突き破りながら船体を無理やり中へと押し込む。バリバリと何かがこすれ、壊れる音が外壁から響いてくる。
メインモニタには、巨大卵の内部が映っている。まるで銀色一色の小部屋のようだ。
「プラズマミサイル、時限信管で発射!」
ソレイユからミサイルが発射される。メインモニタには、銀色の小部屋を進むミサイルが映る。
ミサイルはそのまま外壁に衝突し、室内を漂う。
「後退だ!」
ソレイユの重力ドライブを全力で逆噴射する。ガリガリと周囲の壁を削りながら、船体は強引に後退する。穴の開いた巨大卵が遠ざかっていく。
飛び去っていく巨大卵の内部から光があふれ、やがて巨大卵は光輪に飲まれた。
『突入時、レガシの反応を精査しましたが、あの物体からは反応がありませんでした。』
ということは、ハズレだったか。
光が消えると、そこには残骸だけが残されていた。
その後、惑星アルソリドに戻ると昆虫的な生物は全て活動を停止していた。どうやら巨大卵を破壊したことで止まったらしい。
どういう生態なんだろうか・・・・・。レガシが生み出している疑似生命体だから、普通な生態ではなのだろう。
一応死骸の調査を、と考えサンプルを採取しようとしたところで死骸は突然崩壊を始め、あっという間に粒子状になり消えてしまった。
停止後一定時間で死骸も消える。まるで証拠を隠滅しているみたいだな・・・・・・。
「新たな被害が発生してしまいました。」
今回の結果報告のため管理者へ連絡したところ、新たな事態が発生していた。
「惑星ペリシが壊滅しました。イノマスの時と同様、生命は全て死滅、環境も完全に破壊されています。」
あの昆虫どもが食べつくしたということだろうか。管理者も非常に苦々しい表情だ。
「今回も、ペリシから飛び去る物体が4つ観測されています。やはり、そのうち1つは行方不明です。」
「その行方不明の1つがすごく怪しいですね。」
管理者の監視網が何度も見落とすとは思い難い。管理者もゆっくりと頷く。
「はい、前回も今回も、行方不明になった個体がレガシ本体ではないかとは予想しています。しかし、それ以外の個体も放置はできません。」
確かに、放っておけば現地の生き物が喰い荒らされる。
「今後、彼らを"ヴァリアント"と呼称し、中心体と思われる卵状の物体を"コア"と呼びます。現在、行方不明のコアは全力で捜索中です。その間、勇介には新たな被害地の救難をお願いします。」
惑星ペリシを中心とした銀河星系マップが表示され、ペリシから3つの線が伸びる。
その線の先1つがクローズアップされる。
「惑星ガソーシャに向かってください。」
惑星ガソーシャ、地表の8割が有毒ガスで覆われた惑星で、ガスは高い腐食性と生物への有毒性を有している。
ガスは酸素や窒素に比べてかなり重いため、地表でも低層部に溜まる。白濁色のガスが溜まる様は、まるで濁った海のように見える。
惑星ガソーシャの周回軌道上にやってきた。メインモニタには白と茶色に覆われた惑星が映っている。
白い部分が非常に多いが、あれが全てガスか。地表の8割近くはガスなんじゃなかろうか。
この星の生物は、広大なガスに隔てられ点々と存在する高地に生息しているらしい。
このような悪環境ではあるが、知性体まで居るという。生命とは強かだ。
『勇介様、外部通信です。』
「管理者もなかなかに人使いが荒いな。」
ジジルア中佐は冗談めかしてそう告げてくる。引き続き第14戦隊との合同作戦だ。
ヴァリアント単体はそれほど脅威ではないが、とにかく数が多い。レガシハンターだけでは戦力的に不安が大きい。
「さて、今回はどうする?」
前回同様、今回も僕の意見中心に進めてくれるつもりのようだ。
「コアがどこに飛来しているのかわかりません。それにガソーシャには知性体が住んでいますので、艦船で探し回ることもできないです。」
宇宙時代未満の文明人に対しては、大っぴらに姿を見せられない。
「なので、とりあえず僕らが地上に降り、情報を収集してきます。第14戦隊は周回軌道で待機をお願いしたいのですが・・・・。」
「わかった。我々はとりあえず待機しておこう。」
「はい、よろしくお願いします。」
通信終了。さて、二人で降下するか。
ラファに声を掛けようとしたタイミングでブリッジの入口が開き、サイトウさんが姿を現した。
「ユウ坊! ガソーシャに降りるなら、こっちのバックパックを持ってけ。」
お? 見たところ、いつものバックパックと違いはなさそうだが・・・・・・。
「こいつは耐腐食加工がしてある。このスーツを装着してれば多少はガスにも潜れるだろう。多少だがな。」
「おお、ありがとうございます。」
さすがサイトウさん、良く気が付く。
「この後、重火力型にも耐腐食を施しておく。もし戦闘になるなら、重火力型を呼んでくれ。」
「サイトウさんいなかったら、僕任務遂行できてないっす!!」
サイトウさんは微妙な表情になり・・・・・・、なったような気がする。
「俺はお前さんのその適当さが心配になるぜ・・・・、ラファちゃん、しっかり頼むぜ?」
「ん、まかされた。家計のひもを、しっかり締めるのも、妻のつとめ。」
「いや、そこじゃ・・・・・・、まあいい、とりあえず頼む。」
サイトウさんも諦めたようだ。
僕とラファは二人乗りでフローティングバイクにまたがる。もちろん、安全のために軽装甲エグゾスーツ装備だ。
「それじゃ、行ってきます。」
「おう、気を付けてな。」
サイトウさんに見送られ格納庫を飛び出す。
ソレイユは周回軌道に残しつつ僕らはガソーシャに降下した。
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