11.デルタアタック

「あの超高出力レーザーを再び使わせるわけにはいかん。破壊工作部隊を送る。バーリゴル中尉、隊の指揮をとってくれ。」

「わかりました。モント少尉、ローマルク伍長、行くぞ。」


 ガーランド少佐が戦死され、少佐の隊は俺が引き継いだ。

 俺にガーランド少佐と同じだけの働きができるなんて、エラそうなことは言えない。

 だが、できるとか、できないとか、そんなことを言っていられる状況じゃない。やるしかない。


 結局、ロスタコンカス軍の中で俺たちが一番戦闘経験が多いという状況は変わっていないのだ。



「艦隊の半分を焼いた超高出力レーザーを破壊する。そのための破壊工作部隊を護衛し、プラントまで接近する。」

「「了解!」」

 モント少尉とローマルク伍長から返事が来る。


 ロスタコンカス軍のカリーナ級から、小型艇が3隻発進してくる。あれに破壊工作部隊が乗っているようだ。

 小型艇に続き、エグゾスーツ部隊が艦から発進してくる。彼らも護衛部隊か。俺たち含めて15人だ。


 護衛部隊は小型艇の艦上に乗る。いつも艦の上で戦っているな・・・・・。



 前方を見ると壁のようにガルロマーズの艦隊が並んでいる。だが、その中央部はロスタコンカスの軍勢が食い破りつつある。

 中でもあいつらの働きが大きいのだろう。


「よそ者のあいつらにばかり任せておけねぇよな・・・・・・。」

 自身を奮い立たせるために、そんなことをつぶやいてみる。

 だが、あいつらの活躍自体は利用させてもらおう。なんといっても、こっちは非戦闘部隊を連れているしな。


「敵艦隊の注意は中央部の部隊に向いている。少々時間はかかるが、戦場になっていない小惑星帯を抜けてプラントに向かう!」



====================



 赤い大型エグゾスーツが急接近してくる!


「見つけたぞ!!」

 赤スーツは両手のプラズマブレードで斬りつけてくる。こちらもとっさに両手のブレードを展開、ブレード同士が接触する。

 プラズマブレードの成形フィールド同士が干渉し、プラズマの飛沫をまき散らす。


 左右からも2機の赤スーツが接近する。


「3機!?」


 3機の赤スーツに囲まれていた。

 残り2機も斬りかかってくる! ソードサテライトとフライングシールドで阻む。が、ソードは弾かれ、シールドは切断される。

 つばぜり合いの中、正面の1機に向け腰の150mm砲を構える。が、打つ前に赤スーツが消える。


 左側から衝撃で吹き飛ばされる、ぐっ! 蹴り飛ばされた!


 1機が銃弾と砲弾を撃ち込んでくる。ロールして回避! 

 もう1機が別角度から斬りかかってくる! 腕のブレードで受けとめる! そのまま押し込まれる。

 2機が両サイドに回り込んでくる、シールドを左右に展開! レーザーがシールドに着弾、シールドが赤熱する!!


 3機が隙のない連携で攻撃してくる。全部本物なんてことは無いはず! どれが本物だ!?

 動きはどれもそん色がない。これまで戦ってきた赤スーツの動きだ! 区別がつかない!!



 肩に被弾する! ドレッドノートアトモストの追加装甲が剥落する。

「どれが本体だ・・・・・・、そう思っているだろう?」

 赤スーツ2機が前後からすれ違うように斬り付けてくる! ソードサテライトと両手のプラズマブレードで受け流す。ソードが破壊された!


「それはぁ、違うなぁ~・・・・」

 1機の周囲をソードサテライトとフライングシールドで取り囲む。削り潰してやる!!

 背後から砲撃され仰け反る。増設バックパックの一部に破損のアラートが灯る。 一瞬の隙にシールドの包囲から抜けられたか。



 3機のシルエットがまるで1機のように重なる。そのまま僕に向け突進してくる!!

「3機!」

「すべてが!」

「俺だ!!」

 3機が連続で斬りつけながら通り過ぎていく! 防ぎきれず、シールドやソードが破壊された。


 3機に取り囲まれる。

「俺は負けない。そのために被検体になった!」


 3方から一気に接近してくる! 

「っ! SDモード!!」

 僕はとっさにSDモードで上に脱出し、3機にレーザー砲を向ける


「「「SDモード!!」」」

 3機もSDモードを起動した!? 散開し、一気に視界から消える!


「俺は!」

 背後に衝撃! バックパックで爆発が起きる! 増設コンデンサが潰れたか。

「エグゾスーツの!」

 右上から砲撃される! 右肩にアラート!

「生体パーツになったのだ!」

 下から斬り付けてくる! ブレードで受け止める。背後に再び衝撃! バックパックに多数のアラート! パージ!!

 バックパックが光輪を残し爆散する。



「3体はクローンであり本体、そしてスーツこそが肉体!」

 1機がレーザーを撃ちこみつつブレードを展開して接近してくる、腕を交差してレーザーを防御、ブレードで斬撃を受け止める!! 再びつばぜり合いになる。


「もらったぁ!!」

 背後にもう1機っ!!



「させない。」

 背中合わせのエグゾスーツ。

「ラファ!」

 ラファが赤スーツの攻撃を受け止めている。

 フォースロードセイバーの刃からプラズマビームを飛散させる。赤スーツは後ろに飛び退く。


「ありがとう、ラファ。」

「夫の、仇はとるの。」

「まだ死んでないし!!」



「ふん! 2機であろうと!!」

 再び、3機のシルエットが1機のように重なる。そのまま僕たちに向けて突進してくる。

 SDモード状態であるため、前回よりも速い!!


 1機目が斬り付けてくる。ラファが受け止め、捌く!

「チィィ!」

 2機目が150mm砲を構えるが、ソードサテライトで砲身を貫く! 砲が暴発する、ソードサテライトも巻き込まれたか・・・。

 その隙にラファが蹴り飛ばす。

「ぐぁっ!!」

 3機目が両手のブレードを交差し、十字に斬り付けてくる。僕がブレードで受け止める! ブレードからプラズマ飛沫が飛び散る。

 敵機の腰から長尺のブレードが飛び出す! ラファのフォースロードセイバーが胴体を貫いている。

「ぐぉあああああ!!!」


 そのまま蹴り飛しつつ、レーザー砲で胴体の数か所を貫く! 赤スーツの1機が光輪に消える。



「やってくれる!!」

 またも2機はシルエットを重ね、突進してくる。


 1機目が斬り付けてくる。僕はブレードで受け止め・・・・・、1機目の胸部からブレードが飛び出す! 咄嗟に左手でブレードを防ぐ!!

 左手を破壊しつつ、ブレードはドレッドノートの腹部に突き刺さる!! 赤スーツは自身のクローンごと、貫いてきやがった。

「ユウスケっ!!」

 ラファが悲痛な声を上げつつも、2機目に斬り付ける。が、背後に飛び退きラファの斬撃を避ける。


 目の前に強烈な閃光が発生する。閃光弾か!

 センサーを熱探知に切り替える。

 しかしセンサーに捉えたのは、プラント方面に飛び去る赤スーツの後ろ姿だった。


「逃げられたか・・・・・。」


 目の前には、胸を貫かれた赤スーツが残された。念のためドッキングブースを叩き潰しておく。





 立体三日月陣を敷いていたガルロマーズの艦隊は中央部から瓦解した。既に戦線はプラント側へと推移しつつある。


 僕らは一旦ソレイユに着艦した。装備の補充などを受けるためだ。

 ドレッドノートの追加装備は3赤スーツの攻撃でほぼ破壊されてしまったため、プレーンなドレッドノートに戻ってしまった。


 左手も肘から先が破壊されたが、これは予備パーツの取り付けで直せるようだ。

 胴体の破損もそこまでひどくないため、応急処置だけで再出撃できそうだ。



 サイトウさんが急ピッチで補給作業をしてくれている。

 僕らは補給を待つ間、ダイニングルームでロスタコンカス軍司令部との通信を行う。


「貴殿らの尽力もあり、眼前のガルロマーズ編隊は崩壊状態だ。これによりプラントへの道が開けた。」

 立体三日月陣のど真ん中でラファが暴れまわってたからな。


「別働部隊が、例の超高出力レーザーを無力化する作戦を遂行中だ。敵の注意を引くためにも正面に戦力を集めたい。既にプラントへの侵攻を開始している主力を追って、貴殿らもプラント正面への侵攻をお願いする。」

 ロスタコンカス軍の暫定司令部からの次なる出撃依頼だ。


「わかりました。補給が済み次第、出撃します。」

「戦果を期待する。」

 司令部との通信が切れる。



 ダイニングルームにはしばしの静寂が流れる。今は室内に人工重力を起動していないため、ダイニングルーム内は無重力だ。

 ラファはその中に浮かびつつ、パック入りの甘いアイスティを飲んでいる。


 ミルーシャで戦いばかりだったラファ。

 そんな場所から抜け出せたはずなのに、再びこんな戦乱に巻き込んでしまったことに今更ながら気が付いた。

「せっかく、戦いばかりの場所から抜け出せたのに、また戦いになってしまって、ごめん。」


 ラファはきょとんとした顔で僕を見る。

 僕の表情を見たラファは少し表情を崩し、壁を蹴って僕の胸に飛び込んできた。

 僕は咄嗟に受け止める。

「ふふ、そうだね・・・・、でも、一緒だから、がんばれるよ。」

 胸に顔を埋めながら、ラファはささやいた。


 自分で振った話題で、気を使わせてしまったことに自責を抱きつつも、そんなラファの言葉に安堵も感じていた。

 ラファの小柄な身体を抱きしめる。想い想われ、受け入れてくれることの幸せを噛みしめつつ、今はこの温もりにしばし身を委ねる。


 必ずラファを守る。そんな決意を新たにしつつ。







「できるかぎりの応急手当はしたが、各部にかなり負荷がかかってる。あまり無茶はすんなよ!」

「できるだけ気を付けます。」

 僕はドレッドノートのドッキングブースへ入ると、ドレッドノートと接続する。

『ドレッドノート起動しました。』

 視界に表示されるドレッドノートの状態はオールグリーンとは言えない状態だ。

 まあ、今ある物でやるしかないか。



「ハーキュリーズ、でるよ。」

「ドレッドノート、行きます!」

 僕らは続けて、ソレイユを後にする。


 戦火の中心は既にプラント近くまで推移しているようだ。


「いこう!」

「はいー。」


 戦いの渦中に向け、僕らは一気に加速していく。

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