9.スターアトラクション
「どうして!? ここなら安全なんだよ?」
アリューは悲痛な声を上げ、ドーゼに詰め寄る。
「俺は、ガーランド少佐の仇がとりたい。」
ドーゼの顔には強い決意が浮かんでいる。
「でも・・・・、私、ドーゼが死んでしまったら・・・・・・・。」
ドーゼがアリューを抱き寄せ、なにかを呟いている。
無理するなと言いたいところではあるが、ドーゼも引けないものがあるんだろう。
僕は二人の会話を横目に見つつ、ソレイユへのタラップを上がる。
宇宙船ドッグの隅には、廃船状態の旧ソレイユが置いてある。ここまで共に戦ってきた仲間だし、できれば持ち帰りたい。が、まずはこの任務が終わってからだ。
「しばらくそこで待っていてくれ。」
僕は独り言を残し、新しいソレイユに乗り込む。
プラント攻略作戦、作戦名 オペレーション スターアトラクション(客寄せパンダ)。
作戦概要は至って単純だ。先行して囮部隊がパロユーロの南極側ゲートを発進、周囲のガルロマーズ部隊を叩きつつ、敵を集める。
その間に手薄になるであろう北極側のゲートから主力艦隊が発進。プラントへ向け進軍する。
囮部隊は適度に戦闘を行ったのち、離脱。所定の合流地点にて主力艦隊と合流する。
プラント攻略においては、主力部隊がプラント正面から攻撃を行い、敵の注意を引き付ける。
その間に、ロスタコンカス軍精鋭部隊がプラント内に侵入し、制圧するという作戦だ。
パロユーロ脱出時の囮部隊は、"銀河連邦軍 治安維持部隊 第807独立遊撃隊"が務める。つまり僕とラファだ。
2機だけで囮をする。一見無茶な作戦だ。しかし、サイトウさんにより魔改造されたアレであれば・・・・・・。
ソレイユでは既にラファが待っていた。
「ラファ、大丈夫?」
元々ブレイヴとして戦った経験も豊富だし、僕よりもこういう戦闘行為には慣れてるかもしれない。
「うん、問題なし、ちゃんと夫の3歩後ろを、ついて行くよ。」
うん、問題あり。Rimへのお説教ノートに付け加えておこう。
「アイ、ソレイユ発艦、およびその後の操艦を任せる。」
『かしこまりました。』
宇宙船ドッグのゲートが開く。
「ラファ、行くよ?」
「おっけぃ」
「ソレイユ発進!」
『ソレイユ発進します。』
ソレイユは重力ドライブにより最大加速し滑るように宇宙船ドッグを発進、パロユーロの空へ躍り出る。
早速周囲には敵性反応が多数並ぶ。
『ソレイユ格納庫のハッチ展開、いつでも出撃どうぞ。』
「ハーキュリーズ、いくよ。」
ラファ専用 重火力搭載機動型エグゾスーツ「ハーキュリーズ」。
ラファ用に調整されたドレッドノート級装備だ。専用の大型剣「フォースロードセイバー」を搭載している。
ハーキュリーズが格納庫から飛び出し、空を舞う。
僕も続けて出るぞ。
「ドレッドノートアトモスト 出撃する!!」
これまでより遥かに大型の機体が格納庫から飛び立ち、空を駆ける。
ドレッドノートアトモスト、全身に装甲が追加され、増設の大型バックパックには多数の武装と増設コンデンサを搭載、浮遊系装備も従来の数倍装備。
サイトウさんにより魔改造を施されたドレッドノートだ。
超重量級の機体だが、重力ドライブの重力操作により重さを感じさせない。
視界隅にレーダーが表示される。レーダーには埋め尽くす程の敵機が表示されている。
「それじゃ、いっちょ派手に行きますか。」
「りょーかい。」
ラファのハーキュリーズは一気に加速し、ガルロマーズの艦隊に飛び込んでいく。ラファ専用の大型剣フォースロードセイバーが、巨大なプラズマアークの刃を発振する。
振り下ろされたフォースロードセイバーは、ケインズ級戦艦を両断する。すごい、戦艦を一刀で真っ二つ。
そのままの勢いで、ハーキュリーズは敵陣の真っただ中を駆け抜ける。
ガルロマーズの戦艦も戦闘機も関係なし、すれ違いざまに次々と両断してく。
ラファの軌跡を追うように、爆炎の花が咲き乱れていく。
「す、すげぇ・・・・。」
いかんいかん、見とれてたらダメだ。僕も仕事しないと。
「フライングシールド全展開! ソードサテライト全展開!」
僕は周囲にフライングシールドを100基、そして飛行する刃であるソードサテライトを20基展開する。
視界に目まぐるしくロックオンサイトが浮かび、敵機を次々とロックオンしていく。
「いけぇ!」
すべての浮遊体が一気に散開、ソードサテライトが次々と敵機を貫通し、撃破していく。同じくフライングシールドも小型機を体当たりで破壊していく。
念のため、ラファにシールド10基を追従させておく。
「砲門展開。」
ドレッドノートに搭載されている全射撃兵器を展開する。
視界には新たなロックオンサイトが多数表示される。ラファが吶喊した艦隊とは逆方向の艦隊の中へと飛び込む。
周囲の敵機を次々にロックし、レーザーと150mm砲を撃ちこむ。さらに近い敵機はプラズマブレードで次々切り落とす。
敵機の攻撃! 回避、十字砲火か!!
「防壁!!」
肩の発生装置で重力場電磁防壁を展開、そのまま砲撃してきた敵機に体当たりする。砲門を破壊、距離を取るついでに150mm砲を撃ちこんでおく。
『新たな艦影多数。増援を確認。』
どうやら、敵が集まり始めたか。いいぞ、もっとこい!!
====================
「艦長、パロユーロ基地のゲートから発進する艦船1、識別信号は・・・・・"銀河連邦軍"!?」
なんだと!? 既に銀河連邦軍が介入しているのか!? そんな話は聞いていないぞ!
「これは・・・・・、数時間前に我が軍包囲を強行突破した艦船と同型です!!」
シャルトの奴が執拗に追っていた船か・・・・。
「司令部からは何か言ってきているか?」
「少しお待ちを・・・・・・、包囲して撃墜せよ・・・・と。」
銀河連邦軍とはいえ、たった1隻だ。
「よし、全艦船前進! 前方の敵艦への攻撃・・・・・・」
「敵艦からエグゾスーツ発進! これは、は、速い!!」
すぐ横を航行していたサーペンズが、一瞬にして轟沈する。なんだ、何が起きた!!
「敵エグゾスーツです! 本艦の後方に!!」
「モニタにだせ!!」
機体が一瞬映る。身の丈を越える巨大なプラズマブレードを振りかざしている。
なんだ、あの非常識なサイズのプラズマブレードは・・・・。
敵機は直ぐにモニタから消える。
「対空砲、敵を足止めしろ!!」
「だ、ダメです、速すぎて狙いが定まりません!!」
艦の観測カメラが敵機を追い切れない。レーダーで見ても動きがでたらめすぎる。
艦隊の隙間、戦闘機群の隙間をきれいに縫うように飛び抜けていく・・・・。周囲の空は瞬く間に爆炎で埋め尽くされる。
「だ、誰か、誰でもいい! あれを止めろ!!」
その時、メインモニタにエグゾスーツの顔が映りこむ。まるでこちらを覗き込んでいるかのようだ。
敵機のアイサイトが光る。
「う、うぁぁぁぁぁぁ!!!」
ブリッジの壁を突き破り、プラズマの炎が艦を蹂躙する。
====================
パロユーロ南極側のゲート付近で暴れているが、いい感じに敵機が集まってきた。
既に北極側からは、主力艦隊の発進が始まっていると連絡を受けた。
「そろそろ頃合いかな。ラファ、一旦引いて。」
「はいー。」
敵艦隊のど真ん中で、爆炎の乱れ咲きを量産していたラファが、一足飛びで戻ってくる。
ついでにシールドとソードも戻す。
「仕上げだ! アイ、グラビトンテンペスト ディフュージョン!」
『かしこまりました。グラビトンテンペスト、発射体勢に移行します。』
ドレッドノートの姿勢が固定される。
『SDモード起動・・・・、直列重力子コンデンサを重力子圧縮システムに直結、連装チェンバーへのエネルギー供給開始、キャノンバレル展開、』
両肩に搭載されているグラビトンレイ2門が展開、さらに増設バックパックから追加の2門が展開される。
『牽引用フライングシールド設置、反動制御用重力アンカー発射、連装チェンバー1番から20番まで充填100%、外部連装チェンバー1番から20番まで充填100%、発射どうぞ。』
視界には大量のロックオンサイト。
それを周囲の大小さまざまな敵機にセットしていく。
「発射!」
多数の敵機に次々とグラビトンレイを発射し、分解させていく。
重力アンカーを取り付けたフライングシールドが移動することで機体を旋回させ、分解の波は敵部隊を蹂躙していく。
爆発すら起こらない、分解の暴風雨が吹き荒れる。
『グラビトンテンペスト、発射体勢解除。』
グラビトンレイの銃身は背中に格納され、姿勢の固定が解除される。
集結しつつあったガルロマーズの艦隊は、無事な船を探すのが難しいほどの状況だ。
「よし、ステルスフィールド展開、僕らも離脱だ。」
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