13.メイド救出作戦
『データベース照合、該当あり。氏名 デルモア・マーニバスラ ロスタコンカス大統領です。』
「うぇっ?」
自分でも驚くほど変な声が出た。親方! 空から大統領が降ってきた!
大統領は落下のショックからか、失神している。
『接近警報。無音ヘリと思われる機影3接近。』
僕は即座に振り返る。3機のヘリが間近まで接近していた。
『データベース照合、該当あり。戦闘ヘリ"ドミニオン"1機、輸送ヘリ"ストーク"2機です。』
ヘリが滞空する。ラぺリング!? 兵員が降下してくる。
全員揃いの装備だ。動きも訓練されている。どうみても軍隊だな。
リック曰く「"テロリスト"が"裏口"から攻めてくる」という話だったが、実際には「"どこかの軍隊"が"正面"から攻めてきている」
ずいぶんと話が違うじゃないか。
「アイ、防衛型射出!!」
『了解、エグゾスーツ射出します。』
降下部隊は20名、全員こちらに銃を向けている。どこの部隊だ?
『武装、装備からデータベース照合、照合エラー。所属不明の武装組織です。』
間違いなく狙いは大統領だ。僕は大統領を地面に寝かし、しゃがんだ状態で背後に隠すようにする。
「なんだ貴様は。」
部隊長らしき男が銃を向けつつ、僕に誰何してくる。
その時、官邸の正面玄関が開け放たれ、警備が飛び出してくる。
『武装、装備からデータベース照合、ロスタコンカス大統領護衛の特殊警備隊です。』
警備隊は前方の軍隊、そして僕を見て、それぞれに銃口を向ける。一瞬のにらみ合い。
卵型コンテナが落着する。その瞬間、銃撃戦が始まる。僕は大統領を庇いつつ、コンテナからエグゾスーツを展開、防衛型装備に換装する。
銃撃が殺到。スーツの装甲で弾く。少しなら耐えられるか。フライングシールド展開、大統領の周りに5枚を滞空させる。
戦闘ヘリ"ドミニオン"の30mmガトリングが回転を始める。まずい、掃射される。
コンテナを持ち上げ盾にする。コンテナの表面に凄まじい衝突音が連続で響く。
『対象の攻撃行為を確認、攻撃対象はロスタコンカス大統領マーニバスラ氏と確認、対象を敵性勢力と断定、サポートAIによる代理承認、制圧許可。』
「アイ! 大統領の防衛を頼む。」
『かしこまりました。』
僕はコンテナの影から上へ飛び上がる。ドミニオンのガトリングが僕の動きに追従する。重力ドライブで軌道修正、ガトリングが空を切る。
ドミニオンの上をとりつつ接近、落下しつつ片側のミサイルランチャーを蹴りぬく。
下を通り抜けながらガトリングを破壊。反対側に抜けつつ逆側のミサイルランチャーにも蹴りを入れた。
衝撃で激しく錐もみ状態になるドミニオン。僕は巻き添えにならないよう、ドミニオンから距離を取った。
下からの銃撃、降下した部隊からの銃撃もされている。重力ドライブを吹かし、空中で回避機動をとる。
警備隊からは銃撃されていない。僕が大統領を守っていることが分かっているようだ。
大統領をちらりと確認する。警備隊がいつの間にかコンテナを利用し大統領を護るように戦っている。
とりあえず、大統領は警備隊に任せてしまっていいよね、きっといいはず! よし任せた!!
『接近警報。車両多数接近。』
敵の増援!? 官邸前の道に車両が十台ほど停車、中からは警備隊が降りてくる。警備隊の増援か。
車輛から降りた警備隊員は、すぐに銃撃戦に参戦し始める。
『さらに接近警報。人型の物体が接近中。』
周囲に15の人型が着地する。
「エグゾスーツ部隊まで居るのか・・・・。」
====================
前回と同じ手順で大統領を確保。ただし、前回と違うのは3階窓からダイブしていただいたことだ。
ユウのやつなら、後はうまくやるだろう。
官邸内の警備隊員は次々玄関方面へ集合しているようだ。俺とドーゼは官邸内の一室に隠れ、やり過ごす。
やがて、外から戦闘音が響き始めた。始まったな。
「女を探せ。」
俺はドーゼと連れ立ち、ターゲットの女を探す。
見つけるのはすぐだった。1階にあるキッチンに使用人たちは集まっていた。
「アリュー!」
「ドーゼ!?」
あれが、御執心の女か。そーいや生で見るのは初めてだな。気の強そうな女だ。少々優柔不断気味なドーゼには丁度いいのかね。
「無事でよかった・・・・・。」
「ドーゼ、どうしてここに!?」
二人してピンクムードか?
「はいはい、恋人同士の逢瀬は後にしろ。ほれ、さっさと脱出するぞ。」
「こ、恋!?」
「お、逢瀬!?」
似たような反応するな。
「し、しかし、大統領閣下を差し置いて、先に逃げるなど・・・・・。」
年配の男が異を唱えてくる。
「ドラスマリオさん・・・・。」
メイド女が気遣わしてな顔でつぶやいている。今はグダグダ迷ってる暇はないんだよ。
「あんたたちが残っても、戦えないだろ? むしろ防衛対象が増えて、警備隊には邪魔なるぜ。」
下手なプライドは捨てて、さっさと逃げてくれ。そうしないと俺たちも逃げられない。
「ぐっ、たしかに・・・・。」
ドラなんとかは悔しそうにしばし考え込んだが、決意したように使用人たちに指示を出す。
「ここは、警備隊の邪魔にならないよう、早々に退避しましょう。出口は・・・、」
「業者の搬入口から逃げな。」
正面は戦場だからな。
官邸から出ると外の様子が分かった。見える限りで周囲の数か所から煙が上がっている。
「警備隊詰所も襲われているんだ。」
さすがドーゼ、何周もしているだけに詳しい。
「お父さんが!」
メイド女が悲壮な様子で言う。
「私は近隣の災害避難所に向かいます。みなさんはご家族の心配もあるでしょう、私とご一緒いただいても良いですし、ご帰宅されてもかまいません。」
ドラなんとかのオッサンが全員に向かって言う。
「十分に気を付けて、またお会いできることを期待しています。」
街中はひどい喧噪だった。しかし戦闘行為自体はそれほど拡大していないようだ。
何度か人とぶつかりながらも、俺たちはドーゼたちのアパートに辿り着いた。
時計を確認する。もうすぐ19時だ。
これまで毎回、メイド女は19時15分くらいまでには死んでいるそうだ。これを過ぎることができれば、任務達成だ。
メイド女が自室に駆け込む。どうやら親父さんは無事だったらしい。テレビを見て娘さんを心配していたようだ。
ドーゼのやつもらい泣きしてやがる。まだ終わってないぞ?
「ここも安全かわからない。近くの避難所に避難しよう。」
ドーゼがメイド女親子に声をかけている。もう終わった気でいるんじゃないだろうな?
空を裂く音・・・・、振り返る、ミ、ミサイル!? どこかからの流れ弾か!!
まっすぐアパートに向かってくる!
これが、運命だってのか!? 着弾する!! とっさに両手で顔をカバーする。
間近で爆発音と閃光。
・・・・? 無事? 無傷だ。
め、メイド女は!!
部屋の中で、ドーゼが親父さんとメイド女を抱え込んでいる。3人とも無事だ。
アパートの前に見覚えのある板が10枚、回転しながら防壁を展開している。
「毎回毎回ギリギリすぎだろ・・・・。」
ゆっくりと降下し、ユウがアパートの通路に着地する。そんなに毎回ギリギリなのかね、俺はしらねぇが。
ドーゼの左手に小さな光が灯る。手のひらサイズの円盤が地面に落ちた。渦巻き模様が描かれている。
メイド女の家に上がり込み、ドーゼの手から落ちたそれを拾い上げる。
「それは僕に渡すっていう取り引きだったはずだけど?」
玄関の外に立ち、ユウがこっちを見ていた。
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