14.VSダークロード
「ユウが?」
「はい。悪魔の復活を画策している疑いがございます。」
軍師のトリスタルから、進言があるとのことで話を聞いていたが、内容に驚きを隠せない。
「余はユウと面識もある。話をした限りは、そのような企てをしていたとは思えぬが・・・・。」
警戒はしつつも、余の話を真摯に聞いていた姿を思い出す。
「私は、あの者と剣を交えたこともございます。怪しげな術を使い、この世界の者とは思えぬ戦いぶりでございました。」
トリスタルは控えながらも、進言を続ける。
「さらに物見の報告では、あの者"小の月から来た"と述べていたと。」
小の月、はるか昔に悪魔が姿を変えたと言われるものだ。
それが事実なら、伝説の悪魔と何かの繋がりがあることは確実だ・・・・・。
畳み掛けるように、トリスタルは続ける。
「恥ずかしながら、私の力ではあの者を打倒することが叶いません。何卒、ダークロード ガイラ様のお力をお借りいたしたく・・・・。」
「うむむ・・・・・・。」
情報は、限りなくクロと示している。しかし、ユウとの語りの中で、そのような裏は感じなかった。
「ガイラ様、何卒・・・・、ご決断を。」
余は亜族を率いる王、時には感情を廃しての決断が必要だ。
「わかった。今の居場所はわかるか?」
「ありがとうございます!! 現在は、"試練の地"山頂に。」
「ダークマターを呼べ。」
危険の芽は摘んでおかねばならない。
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ラファがヒロムと二人で円陣に消え、なんだか寂しい気分になった。僕は神殿から外に出て、山頂から下の景色を眺めていた。
円陣の先で、ラファはどんな結末を見てくるのだろう。これで、旅は終わることになるのか・・・・・。
終わった後、僕はどうするのだろう。
自分でも整理のつかない気持ちと考えが次々と浮かんでは消える。しばし取り留めのない思考に沈んでいると、アイが語りかけてきた。
『銀河連邦は大きな存在です。その中で決められているルールは厳しいものです。』
「そうだね、許可とらないと、まともに戦えないしね・・・・・。管理者厳しいしね・・・。」
『今、宇宙はAIがそのほとんどを管理しています。』
銀河連邦は管理者、ジアースもRim、僕の体ですらアイが管理してくれている。
『生きている人たちの幸せが、私たちAIの幸せです。』
少し間をおいて、アイが続ける。
『だから、私は、あなたが一番幸せと思う道を選んでほしい。』
僕は、そんなに献身されるほど価値ある人間なのか、不安になってしまう。なんだろう、付き合いが長くなるほど、AIたちの方が人間味を感じる。
『管理者もわかってくれますよ。』
あー、それはどうかなぁ・・・・。
『ユウ坊! 生きてるか!!』
そんなしんみり雰囲気を、ロボットの大声が盛大にぶち壊す。
「生きてます、生きてますから、サイトウさん、声でかいです。」
『とりあえず、動力は生き返ったが、やたらと機嫌が悪くてな。なかなか出力が上がらねぇ。』
「それでも、早速動力を回復してくれてありがとうございます。」
『なんてことねぇよ。まだGネットと通信もできねぇしな。とりあえず、もうちょっと調整してみるから、少し待っててくれな。』
「わかりました、ありがとうござ・・・・」
『重力震検知。10m以内で重力操作が行われました。』
振り向くと、すぐ背後に闇の渦が出現していた。そこから黒い甲冑が出てくる。ガイラさん?
ガイラに続いて、四天王のトリスタルが出てくる。
「ガイラさん・・・・?」
ガイラの右手に闇が集まり、大剣が形成される。
「ユウよ・・・・」
『下方、地中に重力震。下方からの攻撃に注意。』
僕がとっさに飛び上がると、土槍が地面から飛び出す、トリスタルか。
さらに続けて石槍が飛来する。フライングシールドで弾く。
「くっ!」
ガイラは苦渋を滲ませつつ接近してくる。大剣に闇が収束する。振り下ろされた。
咄嗟にフライングシールド2枚を間に挟む。シールドは即座に粉々になり、僕は余波で吹き飛ばされる。
山頂から空中に投げ出され、落下していく。
「サイトウさん! 重火力搭載型射出を!!!! シールド付きで!!」
『おう!!!』
山頂からはガイラが追ってくる。トリスタルも一緒だ。
ガイラが大剣を振る。黒い斬撃が音もなく滑るように飛んでくる。スキル無効化を発信!
黒い斬撃は接近直前に霧散する。
「やはり、怪しげな術を!!」
トリスタルが声高に告げる。ガイラは空中で加速し、接近してくる。闇を纏った大剣が振り下ろされる。
フライングシールド残り2枚、で大剣を捌く、横合いからトリスタルが石槍を飛ばしてくる。回避!!
下から卵型コンテナが飛んでくる。サイトウさんありがとう!! 空中でコンテナの影に入る。
ガイラはコンテナを斬りつけている。その間にエグゾスーツを装着する。フライングシールド6枚展開!
コンテナの外殻を突き破られる。ガイラが闇を纏った突きで吶喊してくる。
「ガイラさん!! 一体なぜ!!」
シールドを目隠し替わりで回避する。早くもシールドが2枚両断されている。
「余には疑わしきを摘み取る責任がある、無力化させてもらう。」
僕とガイラは空中戦を繰り広げる。
ガイラの剣閃を捌きつつ、飛来する石槍を回避する。トリスタルは遠方から、石槍による支援射撃に徹しているようだ。
地上戦ではトリスタルの攻撃が激しくなるため、地上には降りられない。
このままではどうしようもない、撤退もさせてもらえない、攻撃もできない。行きつく先は敗北だ。
「ここまでやるとはな。それにスキルが一切効かぬというのが、存外やりづらい。」
ガイラは僕のシールドと切り結びながら、言う。
「これなら、どうだ。エグダオル、エグダヘスト」
あれは、身体強化と速度強化!? エグダは聞いたことのない接頭語だ。
刹那、ガイラが視界から消える。なにかまずい!!
「SD!!」
身をかがめると、後方から、胴体を真っ二つにする軌道で剣閃が走る!!
SDモードと同等か、それ以上の速度だ!!
ガイラが赤い残像を残しながら、連続で斬りかかってくる、僕は黄色い残像を作りながら、ガイラの剣閃を捌く!
「これにも付いてくるか!!」
ガイラはやや歓喜が混じった声をあげる。
赤と黄、山間を二本の光が飛び回る。
ガイラの剣閃は視界を埋め尽くすように繰り出される。シールドの耐久度が目に見えて減っていく。
『おう、ユウ坊!!待たせたな!!』
「サイトウさん!!」
『Gネット接続確認。』
『対象からの敵性行動を確認、対象を敵性勢力と断定、銀河連邦管理者へ攻撃許可要請・・・・・要請承認、制圧許可。』
スタンナックル起動!!
「よっしゃぁ!!」
ガイラが上段から斬り下ろしてくる、左拳で往なし、右で殴る、左手でガードされたか。ガイラが剣を切り返してくる、体を屈めて回避、しつつ、左で攻撃、脇腹に当たる。
「ぬぅ!」
ガイラに電流が流れる。スタンするほどではないか。
「急に攻撃を!?」
ガイラが動揺している。ガイラの剣閃をシールドで弾き、懐へ入る、右!! 再度左手で止められる、ガイラが膝蹴りを繰り出す、左手で防御するも距離を取られた。が、既にスタングレネードを投擲済み。
ガイラの鼻先でスタングレネードが炸裂する。
「が!!」
ガイラが左腕で顔をかばっている。
右手スタンナックルが激しくスパークする。接近、ガイラの鳩尾あたりに拳をめり込ませ・・・・・。
『前方後方、重力震!』
僕の右拳が石槍と衝突し、ガリガリと石槍を砕く。
ガイラの腹部から石槍が飛び出し、僕の右拳を堰き止めている。小さい闇の渦?転移に使う渦から石槍が出ている。後方も!?
「ぐあぁ」
僕の背後にも小さい闇の渦、そこから伸びる石槍が、僕の背中に刺さっていた。
トリスタルが地上からこちらを見ている。手元には黒い渦と石槍。顔にはおぞましい笑みを浮かべている。あいつめ・・・・。
刹那、視界を覆うような大剣が迫る。ガイラが振り下ろす剣は、僕の胴体を見事に捉えた。
左肩から右わき腹へ、大剣の切っ先が通過していく。
『肉体に損傷、重要器官損傷重大、生命維持に緊急移行!』
「っ!!」
ガイラから一瞬の動揺が漏れる。あぁ、まだ目がよく見えてないのか・・・・、僕を斬るのに、ためらいがあったのか・・・・・。
『損傷部を圧迫強制閉鎖、心肺機能停止確認、器官組織保護に移行、神経系の稼働維持優先へ移行。勇介様、意識を切らさないでください。』
胴体は切り落とされてはいないようだ、よかった。そんなことを思いつつ、
『勇介様、意識を強く持ってください!!』
ああ、視界が白くなる・・・・・・。
『勇介様!!』
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トリスタルの手前、無傷で捕獲というわけにはいかなかった。適度に無力化したところで、尋問目的と称して拘束する。
命まではとらずに済む、そう見積もっていた。
ユウの戦闘能力は想像を遥かに超えていた。手心を加えていては、余が逆に討たれかねないほどに・・・・。
ユウが攻勢に転じてからは、さらに余裕がなくなった。
余は・・・・、俺は自身の力を驕っていたのかもしれん、それゆえに、致命傷ともいえる傷を加えてしまった。
落下していくユウ。俺は事態に戸惑い、ユウが落下していくのを茫然と見送ってしまった。ユウは山の斜面を滑落し、山間の谷へと消えてしまった。
そして、事態が悪化するときというのは、最悪のタイミングで起こるらしい。
ラファが、一部始終を見ていた・・・・・。
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