4.エグゾスーツVSエグゾスーツ
『新たな兵器を確認、対象からの攻撃行動を確認、』
敵が再度砲撃してくる、直前に軌道予測が見える、射線から素早く身を躱した。
『対象を敵性勢力と断定、銀河連邦管理者へ攻撃許可要請・・・』
敵が接近してくる。連続での砲撃を躱しながら、後方へと距離を取る。
攻撃許可が無いため防御か回避しか取れないっ!!
『・・要請承認、制圧許可。』
反転、敵の射撃の隙を抜け、間を詰める。右拳のナックル部端子が帯電する。スタンナックルだ。
スタンナックルは、ナックル部にスタンガンが仕込まれており、殴打時に電流を流し、相手を行動不能にさせることができる。
僕の殴打はしかし、左腕でガードされ、右足で蹴り飛ばされる。
また距離を取られた。
「貴様、人間だろう、なぜ機械の味方をする!!」
敵が話かけつつ砲撃してくる。
「僕には、お前たちのやり方が正しいと思えない!!」
回避!
敵は左手で背中から新たな銃器を取り出す。
右腰にある砲身は150cmほどの長さがあるが、左手で取り出した銃器は50cmほどの短いものだ。
「機械に支配された世界を正すための必要悪だ! まやかしの中、無知のまま生かされることは、人の尊厳を、魂を踏みにじっている!!!!」
左手の銃器が連続で銃撃音を発する。銃弾の嵐が殺到する。
フライングシールドで防御!
「会話できない相手ではないだろ! Rimとは理性的に話し合いができるはずだ! こんな暴力的手段に訴えるよりもできることがあるだろう!!」
銃弾の雨がフライングシールド表面を激しく叩く。そこへ砲撃が衝突する。
『フライングシールド1枚破壊、フライングシールド全壊しました。』
僕は爆風で吹き飛ばされる。
「魂無き人形に、人の気持ちがわかるものか・・・・。」
耳朶を打つ言葉に、なぜか僕は妙に苛ついた。魂魂って、根本的にRimを意志ある存在として受け入れることができないのだ。
「あんたは、理解放棄している。」
姿勢を立て直し、敵を中心に旋回するように移動する。
「そういうお前は、俺たちを理解しようとしているのか?」
敵は僕の移動先を予測するように、偏差射撃を加えてくる。
上下に移動しつつ、敵に予測されないように回避する。弾切れしないのか!?
そのとき、突然壁が接近してきた。いつの間にか白いタケノコにかなり近づいていたようだ。
敵はテラスの影に入り銃撃が止まる。今、マガジン交換をしてる!?
そう気が付いた瞬間、テラスの影から銃撃と砲撃が再開した。
回避が遅れ、敵の砲弾が左肩に命中、炸裂する。スーツの状態表示にAlertが灯る。
敵が再度、砲撃姿勢をとる。僕はとっさにスタングレネードを発射した。激しい閃光と騒音が鳴り響いた。
しかしお互いスーツ越しでは、効果は無いようだ。
砲撃される。射線は紙一重で躱すが、砲弾が近接で爆散する。爆風と金属の礫がスーツを叩く。
先ほどまでの徹甲弾ではなく、榴弾だ。
爆風で煽られたが、スーツに異常は無い、強固で助かった。
警告が鳴る。姿勢を立て直し、とっさに両手で頭を庇う体勢をとる。小銃の銃弾が殺到し、激しく装甲板を叩く。そこに榴弾も飛来する。
再び爆風に煽られる、今度は全身状態表示が激しくAlertを上げる。
このまま被弾し続けるのはまずい!!
『SDモードの使用を提案!』
「使う!!」
アイの提案に即答で答える。迷っている暇はないっ!
Gravity Engine Powerゲージが赤色に変色する。横には『SD』の文字が点灯し、370%に跳ね上がった。
移動速度が急激に上がり、敵の動きもスローに見える。
敵の銃撃を躱しつつ回り込み、左手を蹴り上げ、短銃を破壊する。敵が右の砲身をこちらに向けようとする。
逆サイドから回り込み、後ろ側から右の砲身を引きちぎる。
敵右腕の袖部分からナイフが突出し振りぬいてくる、同時に左手で背部の拳銃を抜く。
ナイフを蹴り折って、接近、左の拳銃は腕を逸らし射線を外に向けたあと膝蹴りで飛ばす。
右拳が敵の頬をとらえ、殴りぬける。敵のフルフェイスがへこみ、ひび割れている。
敵は殴られ、姿勢を崩しながらも、手榴弾をこちらに放ってきた。
左手で空中の手榴弾を叩きおとす。遥かに下方で爆風が起こる。
右手のスタンナックルが激しく火花を散らす。右拳を敵の鳩尾あたりにめり込ませる。スーツを突き破り、中の肉にめり込む。
同時に敵の全身に激しく電流が流れる。
敵の動きが止まった。ぐったりと殴られた格好のまま、僕の右腕にぶら下がっている。
『SDモード終了』
Gravity Engine Powerの表示が30%になっている。終了後にはエンジン出力が低下するらしい。
僕はそのままゆっくりと地面に着地し、腕にぶら下げた敵を警備ロボットに引き渡した。
「さっそく危ない目に合わせてしまい、申し訳ない。」
僕は既にエグゾスーツを脱ぎ、真っ白な壁の医務室のような場所で医療ロボットから治療を受けていた。
スーツは着こんでいたが、砲撃や銃撃でかなり負傷していた。
結構出血もあったし、左肩は砲弾のかけらが肩に残っていたみたいだけど、あまり強い痛みは感じなかったな。これもセルグリッドによる強化の恩恵なのか。
『セルグリッドの治癒効果により、この程度の負傷も数時間で完治します。』
アイから解説が入る。僕の考える常識的な人間から大分外れてきてるな・・・・・。
「勇介君のおかげで助かったよ。38か所でサイバーアタックを行っていた人員も、全員捕縛できた。本当にありがとう。」
Rimが医務室の一角に立っている。ここが現実世界であるため、Rimは立体映像でそこに出現しているらしい。
半透明の幽霊みたいだ。
「内部からのサイバーアタックと、外部からの直接攻撃への対応でじり貧状態だったからね。あのままだと仮想世界で生きている人たちも危険になるところだった。」
「地下施設への陽動攻撃があったから、中央設備棟が無防備だったみたいですけど、もう少しうまく立ち回れたのでは?」
ちょっと意地悪い質問だったかな?
「痛いところを突いてくるね、私としても、彼らの狙いはわかっていたんだ。だけど、私の存在目的として仮想世界に生きる人たちに傷一つつけるわけにはいかないからね。どうしても地下施設の防衛を手厚くする必要があったんだ。」
Rimは嫌な顔もせず、ただ少々の申し訳なさの漂う表情でそう述べた。
そうか。Rimは人間を殺せない。死ぬような目に合わせることもできないってことか。
「それにジアース連邦法で私は最低限の防衛設備しか保持してはいけない、とも決められてもいてね。まあ、彼らも、そのあたりを知っての作戦だったんだろうね。」
Rimもいろいろな制約があるんだなぁ、僕もだけど。
「助けようとしたのはいいんですけど、攻撃できなくて焦りましたよ。」
「ああ、そうだね、既に勇介君はレガシハンターとして認定されているから。ジアース連邦の一員というよりは、銀河連邦の機関員だからね。」
「この先も、戦闘中にあんなやり取りしながら戦うかと思うと・・・。」
「こればかりは、慣れろとしか言えないね・・・・。」
まあ、そうなんだろうけど、できるだけ危ない橋は渡りたくないなぁ。
「そういえば、今回みたいなことが、またあるかもしれないですよね、解放軍もまだ残っているかもしれませんし。」
「そうだね・・・・。実は今回、ジアース連邦の正規軍は事態に追いつけず、全く動けていなかったんだ。私は軍の指揮権は無いからね。だから、連邦議会を通して、正規軍の防衛体制見直しや、連携強化を図ろうと考えているよ。」
そういえば、アイもそんなことを言っていたな・・・・。とりあえず、対策はあるらしい。僕は少し安心した。
直接的な繋がりは無いとはいえ、父さんや母さんが地下施設にはいるしね。
治療を終えた僕は、Rimに案内され、ある扉の前へやってきた。
「さて、本来は、勇介君の体に行った処置やその能力の解説と、あとはレガシハンターとして使える装備の紹介や、活動に向けての説明なんかを行う予定だったんだけど、既に一通り体験した上、実戦まで乗り越えた。なので後はこれを見せておこう。」
Rimは目の前のスライドドアを開けた。
「ブレイブ級スペースシップ ソレイユだ。」
広大な格納庫には、100m以上もありそうな宇宙船が収められていた。
船首部分が四角く張り出しており、まるでマッコウクジラのような形だ。
「勇介君のために準備した宇宙航行艦だ。ソレイユとはフランス語で『太陽』のことだそうだ。太陽系から旅立つ君に、少しでも繋がりを感じてもらえたらうれしい。」
圧倒されて言葉がでない。Rimって意外とロマンチストだな。
「既にアイ君とはリンクしてあるから。」
「何から何まで、ありがとうございます・・・・・。」
「まあまあ、餞別みたいなものだよ。それに、勇介君は既にこの船を使っているよ。」
そういうと、Rimは船首側に回り込む。
船首下部のハッチが展開され、中が見える。ここは、格納庫かな?
「ほら、ここにエグゾスーツを格納している。先ほどの戦闘で君が召喚したスーツは、アイ君が遠隔で操作して、この船から射出されたんだ。」
どこからともなく飛んできたあの卵は、ここからきてたのか!
「これで、一通りの準備は整ったかな。食料や資材も既にソレイユに運び込んである。破損したスーツも修理して、格納庫に戻してある。あとは、いつ出発するのか、勇介君次第だね。」
「本当にありがとうございます。とりあえず・・・・・・・・今日は休んでいいですか?」
いろいろ気疲れした。続きは明日から頑張ってもいいよね。
明日は普通にベッドで目覚めたい。もう森の中はごめんだ。
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