第4話 神ゲー
さて……私はまず、こちらの世界で前回犯した失敗を振り返りました。
なぜ16位なんて順位を取ってしまったのか?
端的に言うならば
「お兄様がカッコよすぎるのがイケないのです!!」
根を詰めて勉強していた私に何を思ったのか、お兄様は「息抜きだ」と言って私の手を握り、街へと繰り出しました。
地球ではひとりっ子だった私です。
兄とはいえ、一人の男性としてしか見ることができず、手を握ってエスコートされるだけで胸が高鳴ってしまいました。
内容もショッピングや喫茶店でお茶など、まるでデートです。
そして帰り道に
「久しぶりに妹の可愛い顔が見れて嬉しいよ。ちゃんと息抜きになったみたいだ」
と、笑顔で言うのです。
普段はクール系のお兄様ですから、その笑顔はとびっきりです! 反則ですっ!
おかげで三日は気持ちの切り替えができず、ふわふわとした夢見心地でした。勉強なんて手に付きません。
というわけで……
――お兄様に注意!
という張り紙を、勉強机から見えるところに貼ります。
これで安泰です。
もっとも、後日この張り紙がキッカケで家族会議になるとは思いもしませんでした。
--
そんなこんなで、私は適度に公爵令嬢としての立場を楽しみながら、勉強も頑張ってます。
アイリスやヒューナと友達らしいお喋りや遊びをしたり。
美容のためにエステへ通ったり。
よくわからない貴族のパーティーに参加したり。
地球での鬱憤を晴らすかのように、色々なことを楽しみました。
もっとも、警戒しとくべき事もあります。
平民との身分差恋愛のフラグを折るべく、お助けイベントを見逃したり。
可愛い同級生と百合展開にならないよう、あまり接触しないようにしたり。
血の繋がった兄と禁断の恋に落ちぬよう、お兄様スマイルを直視しないようにしたり。
前回の教訓を活かすべく、恋愛事だけは避けました。
なぜか私には恋愛に対する免疫がないようです。今までの反動でしょうか?
とにかくその結果、私は無事に二年の春まで上位一割に滑り込み、メイアとしての生活を維持することができました。
ですが、どうしても避けられない相手が一人います。
「よお、メイア」
「ご機嫌麗しゅう、キルト様」
この国の第三王子『キルト・アルカディア』様です。
金獅子の愛称通り、今日も線の細い顔にキリッとした表情を乗せて、金髪をなびかせます。
「だからそんな堅い言葉じゃなくて、もっと気楽に話してくれていいんだぜ?」
「そんな、キルト様にタメ口だなんて……」
「お前は俺の婚約者だろ? だったら何も問題ないだろ」
「そうは参りません」
こうやって一線を引いておかないと、いつ攻略ルートに入るかわかりません。
親同士が決めた許嫁ですが、この王子に迫られたらアッサリ陥落する自分が目に浮かびます。
少なくとも卒業するまでは、言い寄ってほしくない相手です。
ちなみに……。
他のキャラとメイアが恋人同士になると、キルトは容易く婚約を破棄します。
王族という地位と、俺様系の性格からして、なぜこんなにも簡単に婚約を破棄するのか疑問でしたが
――好きになった女の幸せを邪魔できる訳ないだろ
という痺れる台詞を残して、メイアのことを祝福してくれます。
さすが『ボクとキミ』で人気投票一位に選ばれるだけありますね。
「ところで、今日の放課後は空いてるな? ちょっと付き合ってもらうぞ」
「勝手に決められても困ります。私にも予定がありまして……」
「ほぉ? どんな?」
嘘は許さんぞ! と言った視線に射竦められ、私は正直に答えます。
こんなところで王族スキルを使わないでください。
「べ、勉強です」
「なら問題ないな! 終わったら教室で待っていろ」
あぁ……なぜでしょう? これは個別ルート入ってる気がします……。
今日、何をするのかは知りませんが、きっと私の心はキルト様に傾いてしまうことでしょう。
心酔しなければいいのですが。
……と、それが無理だったことは、これ以上ない形でわかりました。
なぜなら、次に行われた春の定期テスト。
私は12位までに入ることができず、九ヶ月振りに地球へと帰還させられたのですから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます