いじめによる自殺の問題。一言で言ってしまえばあっけないものではあるが、社会構造の複雑さが、人の精神の混在性が、簡単には紐解けない問題へとしてしまっているように思う。作者様としての視点で真っ向から描き切ったことを、尊く思います。一人一人が考えていく姿勢が大切なのだと、強く感じました。
刑事もの、と言えば事件の解決ですが、御多分の漏れずこの作品もその1つです。警察モノであれば、書く人の傾向として"自分の趣味趣向や専門知識をひけらかす場"になってしまいがちな時もあったりするのですが…。この作品はそれが無くその手のいやらしさを感じずに読むことができました。読み切り、という形で時間のある時にじっくり読むのがお勧めで、見所と訊かれれば1つの事件に対して、刑事が事件を解決していくだけでなくそれを取り巻く人の心理描写だと思いました。
一話完結の長文ですが、一気に最後まで読んでしまいました。文章が巧みで、引き込まれて最後まで読んでしまいます。話の内容は重いですが、その分、ラストの展開で、少しだけ救われたような気持ちになりました。文字数にひるまずに、ぜひとも読んでいただきたい一作です。