第9話///敵のボスは男じゃない?

 庄屋しょうやというか村の代表の建物は、村落そんらくの奥にあるものだ。だってそこから田畑を拡張していくんだもの。住居が増えていくと共に田畑も拡張していく。村の入り口は耕地であり村の一番奥に村長というか頭目らすぼすがいるのだけれど……

「うわぁ、イイとこ住んでんなぁ」

 好奇の目に晒されながら村の最深部にドーンと建てられた建築物は木造平屋の大豪邸。この辺りの地方だと『シャレー』と呼ばれる建築様式だろう。まぁ異世界なので断言したらダメだけれど。

「親方ぁ! 親方ぁぁぁ! アタシです。アリスタです」

 家の前でそう叫ぶと細身の美人が戸を開けた。

「おや、お前さん帰りが遅いんで援軍を送ったんだがね……首尾しゅびはどうだったんだい?」

「それが……」

 まぁ話しにくいだろうね。たった一人に倒されました。コイツですって世界だもの。なのでなるべく穏やかな声音で僕が言葉を発した。

「あー、すみません。あの人たちは、僕が倒しちゃいました」

「……なに?」

「いや、スコンスコンと手早く倒しましたが死人はいません。後続の一五〇人?ですっけ? その方々も殺さないように厳命してあります」

 なるべく穏やかに話したつもりだが、相手の顔色がみるみる変わる。

「それで……お前は何をしにきた?」

 僕の答えは決まっている。できたら楽に済ませたいからだ。

「穏便で平和的な交渉をしにきました。近隣の村と共存する方法と嫁探しの提案などです」

 一拍、置いて美麗な女の頭目らすぼすが歯を見せて……いやノドチンコまでみせて大笑いをした。

「面白いことを言う! ならば私を力でねじ伏せてみよ」

 従者みたいな少年が、彼女のエモノをうやうやしく差し出す。細身の剣なのは見て取れるが、細かいことはわかりゃしない。僕は足元の石ころを一つ拾って不敵に笑って返事を返した。

「まぁ、そうなりますよね。イツでもどうぞ」

「いや、アンタそれはいくら何でも……」

 ここまで案内してくれたアリスタさんが逆に慌てる。僕の強さを充分に知りながらも頭目らすぼすを舐めすぎだと警告するように。

「だぁいじょうぶ。アリスタさんは離れていてね」

 僕の一連の行動に頭目らすぼすたる美人さんは明らかに激昂げっこうしていた。怒りすぎて言葉が上手に出てこない。

「ばっばっば……馬鹿にしてぇぇぇぇ」

 手にした抜き身の剣を閃かせ僕に迫ってくる。

 目配せをすれば弓手ゆみてはいない。まぁ、突然の出来事で準備をする間もなかったろう。ならばこれを逃さず相手をすれば自然とタイマンに持ち込める。いざとなったらこの人を捕らえて人質にしてやるのさ。

「いらっしゃいませ~」

 僕は知らずと呟いた……お楽しみはこれからだ(笑)。

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