第7話 「中学校」

母校に着くと、さっきまでの疲れが吹き飛んだのか、白い花は昔の担任に

「こんにちは!」と元気よく挨拶をし、校内を順に歩き回った。


鼠色の廊下に不揃いな音が鳴る。

懐かしい音だ。


良く寝ぼけながら座っていた自分の席。

調理実習で黒焦げのハンバーグを作った家庭科室。

ベートーヴェンの絵が動くなんて変な噂話が流行った音楽室。

静かでお気に入りの場所だった図書室。

昔から運動が苦手で、行くのも嫌だった体育館とグラウンド。水飲み場によく逃げ込んでいたことを思い出したりして。

いつの間にか西のずっと遠くには、

破裂寸前のトマトが一つあった。


「そろそろ帰ろう?」


そう告げて、

通り過ぎようとした美術室。


白い花は僕を逃がさなかった。

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