第6話 「日曜日」
日曜日の15時、前と違って丁寧に塗られた蒼い空だった。
空白なんてどこにも無かった。
手早く支度を済ませ、10分前にはいつもの公園に到着していた。
「暑い」
喉の渇きを音楽で誤魔化す。
好きなバンドのアルバムの2曲目、アコギの爽やかなバッキングで曲が盛り上がる頃、小さな柵の向こうから、白い花が僕に気づいて走り寄ってくる。
僕は絡まったイヤホンを急いでポケットに突っ込む。
どうやら早く来ることを想定していなかったらしく、小石に躓くくらいには驚いていた。
「今日は早いね〜」
「結構楽しみだったからさ」
「そっか私も。じゃあ行こっか」
僕らは近くのスーパーマーケットでバニラアイスとサイダーを買ったあと、母校へと向かった。
母校へは電車で20分、その後徒歩で10分くらいの場所にある。
途中、通りすがる散歩中の子犬に目を輝かせたり、風が気持ちいいって坂を駆け下りたり、そんな姿が微笑ましかった。そんな時僕は笑いながら
「小学生か!」ってつっこむけれど、
「楽しいから良いじゃん!」
なんて笑顔で言うもんだから勝ち目がない。
流石に母校が近づく頃には疲れてきたのか、歩幅は段々と小さくなっていた。
気づかれないように僕もそれに合わせていく。
ゆっくり、ゆっくりと。
予定では10分の道のりが20分もかかったり、サイダーも温くなってしまったけど悪くはなかった。
むしろ心地よかった自分がいた。
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