第3話 「昼休み」

それから3日後、ペンキを雑に塗りたくったような空。いつもの教室に白い花は添えられていた。


「夏休みどこ行く?!」

「みんなで海でも行こ!」

「いいねそれ!青春って感じする!」


夏休みが2日前の昼休みの教室は、蝉の集落に迷い込んだみたいに五月蝿い。

それでも僕はまた大きな欠伸をしながら近づく。声をかけること自体が久しぶりで、上手く声が出ていたかはわからない。


多分、蛇口を閉めた時の水滴に似ていたと思う。


きゅっと絞り出たのは最近やたらと耳に残るあのフレーズだった。


驚いたのか少し間を置いた後、ほっそりとした茎が優しく花弁を垂らした。


「やっと」そう聞こえた気がした。

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