第2話 「ビーネ」

「あー、退屈だ」


いつものバス停、いつもの公園、いつもの教室、写真集を捲るような日々に飽き飽きしていた7月の放課後。

周りじゃ夏休みの予定なんかを話し始めていた。


特に最近やたらと聞く、

「高校生活最後の」というフレーズ。僕からしてみれば、いつ、どんな時だって最後だ。


騒ぐクラスメイト達を尻目に教科書とノートを鞄に詰め込む。そして、わざと大きな欠伸を振り撒いて僕は教室を出る。


外に出ると、もわっとした外気に多少苛つきながら、特に意味もなく、夏の陽で焦げた真っ黒なアスファルトの上に、ぽつりと落ちた小石を蹴り転がしながら、いつも通り帰路を歩いていた。


いつものはずだった。


いつも目の隅で通り抜ける公園のベンチに添えられていた花。


白い花だった。


横には飲みかけのサイダーと蜜蜂。


一瞬だった。


微小な一つの気泡となって、群がり音を立てながら、こことは違う外の世界へ一斉に飛び込むような感覚。


帰りにスーパーマーケットで同じサイダーを買った理由はわからなかった。

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