第2話 針葉樹

目の前には、細い手を伸ばしたような枝が何本も生えている針葉樹が沢山生えていた。


「なぁ、朋子、この道大丈夫なのかよ」


「大丈夫だって、男のくせに。臆病者。」


薄暗い。怖い。


その中で針葉樹は白く見えるから、また不気味だ。


なんだってこんな所に…。


「ほら、頑張って」


「なぁ、朋子…、ヤバいってここ」


サワサワと木々が揺れる音がする。

風が吹くと、葉のついた枝で全身を撫でられるかのように、ザワザワと、ゾクゾクとして気持ち悪い。


「ヤバくないって、何言ってんのよ」


「だいたいさ、ここ、どこだよ」


「どこでしょーうかー」


これ着けて


そう言われて半ば無理やり付けられた目隠し


車で、どこの方角か分からない道をしばらく走って


俺が目隠しを外されたのは、森の入り口に立ってからだ


危ないから


そう言って、取られた


「もうっ、訳分っかんね」


「もうすぐ頂上だから」


ザッザッという枯れ葉を踏む音と、小枝が折れる音


だんだんと、暗かった景色が明るくなってきた


やんわりと


そして、だんだんと光が広がっていく


奥から光が入ってくる


木々が、切れる所


「うお…」


「すごいでしょ」


出てきたのは岩場だった。


手摺りも何もない、岩場。


その下には、海が広がっていた。


青々と波打ってるその海に、光が生まれていた。


日の出だ。


海から生まれた日の光は、海を、木々を、自分達を照らし始め、その光は力強さを増していった。


「キレイだ」


「キレイでしょ」


「うん」


目が離せなくて、しばらくぼうっ、と見入ってた。


「この景色、見せたかったんだ。頑張って歩いてくれて、ありがとう」


「始めから言えよ、怖かったんだぞ」


「まあ…サプライズ?」


「あぁ…」


「誕生日おめでとう」












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