第17話

 3組目の失敗について、対策連合主導のもと検証が行われたが、計器類への影響がある為、2人に最接近していたのは私がいた小型航空機のみで、しかも異界物質で遮られる映像から判ることは多くなかった。

 つまり作戦中の2人の音声が解明の鍵とされたが、政府提出の音声は不自然な点が指摘され、かねてより問題だった各国での協力態勢の不備が露呈する形となった。

 作戦遂行の場に、他国の者は誰1人いなかったのだ。

 


 こうした状況で出た結論は以下のものだった。

 ミッション半ば、作り手の注意喚起に操者が間に合わず力の制御を一瞬そこなう。

 異界物質群が激しくぶれた余波で、磁界が一部損壊。

 その中にいた作り手が負傷、これに動揺した操者が再び制御を誤る――。

 周囲が手の出せる状態ではとてもなく、作り手が落ち着くよう声を掛けたが叶わず磁界が崩壊。物質の飛散落下に繋がった。

 

 実際状況は凄まじく、私もまた機外に出ることすら不可能だった。

 パニックに陥った彼女は、力が暴走状態となったことで助かったが、その後気を失った彼は成す術なく、落下飛散が始まった異界物質に砕かれて、肉片ひとつ回収出来なかった。

 そしてこの時を境に、彼女は自身に関する一切の記憶を失くした――。

 地上は人的被害では世界で数十万。

 これは初回の経験が生きた面もあったが、経済的損失は計り知れず、パニックや暴動、テロも再び増加した。

 一方で国内の被害は異界接点がある故に多国の守護があり、最少に抑えられた。



 今度こそ明確な加害国となった国の人々は、連合機関が懸念を示した操者を起用した政府を非難したが、対する政府は問題無かったの一点張りだった。

 彼女を守ったわけではない。責任の所在は曖昧にされ、国民の憎悪と鬱憤は操者だった少女へと吸い寄せられた。

 そして衆院解散の僅か前に彼女になされたことは、その家族や希望親族に新しい環境を与えると共に、失った記憶の一部を補い顔を変え、取り敢えずの安全を確保することだけだった。


 ただ私は、家族と離れることになったものの、彼女が辛い経験を忘れられたのは幸いで、再び平穏な暮らしに戻れることを喜んだ。

 その筈だった。


 最初、彼女は実験区の性質を持つ、一部施設が海中にある街に住んだ。

 だがそこで、事前に知らされるべき危険な災害実験が、なぜか彼女一人にだけ知らされないということが幾度かあった。

 私がした抗議の末に転居した先でも危ういことがあり、今度は上司となったミエノ女史の口添えを得て、次の転居先を決めることと彼女の見守りは、ほぼ私に一任されることとなった。

 彼女の生活は、漸く落ち着きつつあった。 

 



 

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