第10話

 2人のうち一方は『異界物質の操者』と呼ばれる。

 全員が10代くらいの少女で、異界と異界物質に対する膨大かつ強大な反発力を持ち、その強大さゆえ弾く物質を操れる、という相反した特性を持つ。


 もう一方は『磁界の作り手』である。

 性別、年代は様々で、異界物質への強力な反発力と親和力を持ち、2つを精密なコントロールで使いこなし、反発親和を『同時発動』出来るのが最大の特徴となる。

 彼らの力もまた凄まじいが、反発力は普通に物質を弾くのみで、操者のように操れない。


 高密度に物質が集まれば、新しい異界接点に変化することが分かっている。

 異界物質の一掃とはつまり、操者と作り手2人1組で物質を集め、接点を作ることだった。



 手順はまず、事前に軌道修正され、一カ所から数カ所に集められた異界物質を前に操者が待機する。 

 対して作り手は、密集した物質内に入り反発親和の同時発動し、自らを核として、周囲に物質を拮抗状態でとどめる。これが゛磁界゛だ。

 この磁界目がけ、操者が一気に大量の物質を飛ばしてより巨大な物質の塊を作り上げる。

 作り手は磁界に充分に物質が密集したら、力を親和力のみにし、自分に向け物質を急激に引き寄せる。

 結果、物質はより密度を高め、接点に変化する。

 接点誕生と同時に作り手は異界側に入ってしまうので、続けて反発力のみ発動させ脱出する。

 無意識レベルでは無理だが、作り手はそれで異界から脱出口を開けるのだ。

 帰促課もこれで異界から人を連れ戻す。



「これがの経緯」

「ややこしいですね…」

 指導教育係を担当する飛羽流ツルアに説明すると、彼女は頭を抱え唸っていた。


 確かに異界物質をひとまとめすればいいのだから、操者か作り手どちらかで良さそうだが、駄目なのだ。

 磁界の作り手だけでは接点を発生させる量の引き寄せは困難で、だがある程度まで塊を作り維持すれば、後はこれが周りに近づく物質を勝手に取り込みだす。

 また操者は一度に大量の物質をコントロールできるが、一カ所に長く集中させられない。

 だから作り手が磁界を作り、操者がそこへ物質を飛ばす。

 互いに補わねば接点は出来ず、2人1組なのはその為だ。


 また、物質は消えるが新しい異界接点が出来る欠点もある。

 だこれは他の接点同様、永続的にあるわけでなく、欠点とされるのはむしろ、操者が急成長はじめた落下直前の状態でしか、物質を操れないことだった。


 様々な異界の物質が同調するように緩くつらなるのは、物質が現世界の成分や他の異界物質と融合する為と思われ、急成長も同様に、ある一点で爆発的に成長すると、それが連鎖するからと考えられている。

 一方、操者の強大な反発力は、裏返せば強大なこの世界との゛親和力゛とも言え、それゆえ彼女らは異界物質に混じる現世成分が多いほど、物質を操り易いようだ。

 実際、物質の成長が然程無い段階では上手く扱えないのも、この為とされる。

 中途半端な操作で刺激を与えれば落下飛散を早め兼ねず、よって現象が始まるギリギリまでミッションは行えない。


 必然的に一発勝負となるのだ。 


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