第11話

 こうして落下飛散現象への対処法が確立されたが、なぜか全ての発端であるこの国では、異界物質の操者も、操者よりまだ多少いる磁界の作り手さえ、1人も見つからなかった。


 漸く自国出身の能力者が見つかったのは、4回目の落下飛散時期が予測された頃だ。

 しかも操者、作り手2人同時の発見で、国民は久々の明るい話題に盛り上がったが、これは政府にとっても好機だった。

 現象は自然災害と認められ、他国への賠償は免れたが、国は異界接点の発生確認から対応、手腕を一々疑問視され、国内の被害はそれ程で無くあらぬ憶測にも晒された挙げ句、国際社会での地位が大幅に低下という憂き目を見るに至っていた。


 自国で見つかった彼らは、先のペアより能力が高く、他組が物質の一掃に接点を幾つか作る必要があるのに対し、2人はより大量の物質を操れ、より強力に磁界を維持させることが出来、シミュレーションではあるが、1つの接点で物質全てを消すことが可能だった。

 国土上空を使うミッションの主導権も無い中、この2人なら今後、作戦の主導権を握れる可能性があり、国家の威信を取り戻し国際社会での地位復権も有り得る。これ以上ない契機と思われた。



 事実、2人揃えば最強のペアだった。

 だが当初、能力者を有する国を軸とした『対策連合』は、この操者に対し、彼女の内向的な性格が持てる力を使いこなせないと評価した。

 他の能力者より多少訓練に時間を要し、次の現象は僅か数ヵ月後であることから、今回の操者は他国の少女でとの案が推奨されたのだ。


 だが持てる力そのものに不足はなく、思惑を通したい政府は自国2人でのミッションにこだわった。

 政府はチームを組み、未成熟な10代で世界を担う2人に万全のサポート態勢を整えた。との理由で推奨を強引に退け、それにより、この2人が3組目のペアとなり、4回目に対処することが決まった――。 




 こうして初の自国出身者で、異界物質の落下飛散阻止に挑むこととなった2人は、共に1学年違いの中学生だったが、それ以外は育った環境から対照的だった。


 殊に磁界作り手の゛彼゛は、当時の内閣官房長官が大伯父だったことでまず注目を集めた。

 この大伯父はじめ、財界政界など数多く人材を輩出してきた一族の一員である彼もまた父親は大企業を束ね、この企業のCM出演がきっかけで芸能活動を始めたばかりと、華やかな話題に事欠かなかった。

 性格は負けず嫌いで意欲的。当然の如く頭脳明晰な上、先述通り磁界の作り手としても素晴らしく、他の作り手達を軽く凌駕して見せた。


 その彼に対し、操者となった彼女は地方都市に暮らし、共働きの両親に兄弟の4人家族という平均的な家庭で育った。

 ごく一般的な生育環境で育ち、目立って優れたところも無い。彼と真逆の大人しく気弱な性格は周囲の影響ではないようで、元来の気質なのだろう。

 だがその彼女もまた、操者の中では段違いの実力を持ち、単純に比較はできないものの、間違いなく彼に比肩する能力者ではあったのだ。


 


 



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