第9話

 予期できなかったこの最初の゛ジュエリーショー゛では人の死傷だけでも数百万に及び、集中落下のあった地域はまるで空爆跡だった。


 ただ、異界接点の出現が続く限り起こるであろう、異界物質の『落下飛散現象』を前に救いがあったとすれば、物質は地面を深くえぐらず、地下シェルターが有効であること、また物質による継続的、或いは病的な汚染は確認されなかった。

 そして最大の福音となったのが、飛散が集中し壊滅した南米のとある村で、奇跡的に生き延びた幼い姉弟の存在だった。

 2人は異界接点が現れた国の者だけが持つとされた『反発と親和の力』を膨大に持ち、且つ制御出来たことで、窮地を脱出したことが分かったのだ。



 この力を簡潔に言えば、『親和』とはどんな異界の環境でも瞬時に順応できる力であり、『反発』とは異界から出る際、異界での順応をはじいて元の世界に合う体質に戻る能力、のようなものだ。

 ――通常、この力は異界出入り時、勝手に発動する。

 これらが判明したのは既存の装置で測定可能だったからだが、これまでその力を自由にコントロール出来る例はなかった。

 だがこの世界に則したそれは、異界物質を引き寄せる力と弾き除ける力となり、姉弟は空から落ちてくる異界物質から逃げ惑う内、これらの力に目覚め、駆使することで死地を切り抜けた。


 映像記録からこの事実が分かり、彼らの協力のもと、異界物質の落下飛散現象を寸前で阻止することが可能となったのだ。

 さらに極めて少数ながら、姉弟と同様の体質を持つ者が国籍、人種問わずいることも分かった。

 現時点までに6回の現象があり、その対処には南米の姉弟含め、世界中から探し出された4組のペアがあたっている。


 彼らは2人1組で上空に溜まる異界物質を一掃するのだ。

 


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