第6話
「3組目の操者、他に何かある?あの娘にはあたし、本当に腹が立ってるの。
実際のとこ、あの事故には分かんない点も多いみたいだし、同情論だって山ほど見た。
それでも、作り手の磁界が解けたとき、物質散らすくらい出来た筈よ。そしたら成長を遅らせられて、他の組が間に合ったかも――」
「間に合わない。それは君も分かってるだろ、だけど飛散したものは他の2組がかなりの量、無人地帯に逸らしてくれた…上空はとても酷くて、たとえ彼女が混乱状態になくたって、立て直すのは至難だった」
「見たの?」
「一番近くで。それでも彼女に何があったか正確には分からない」
「…そう、でもやっぱり納得できない。もし何か起きたとしても、あたし達は絶対どうにかしなきゃいけないの。
だからパニックになったって、勝手に身体が動くくらい特訓したし、あの娘だってそのくらい厳しい訓練したって聞いた。
なのに、映像とかだと完全に放心してて、動く素振りもなかった。そうなってしまったんじゃなくて、自分から意識を手放したって、あたしには見えた。
――ちょっとの映像で判断するなって言うんでしょ?
でもね、あたし達は身一つだけど、背後でたくさんサポートされてて、自分らがミスらない限り、地上より安全なくらいだし、お互い信頼するペアがいる。
周りだって頑張れって叫んでたのに、全く聞いてない感じ。つまりあの娘、あのとき自分の事しか考えられてなかったんじゃないの?たくさんの犠牲が出るのに――…あたし、あの娘のそこが一番許せない。――最低。」
「お待たせ―ああ、あなたもいたんですか」
「遅いわよ、待ちくたびれたんだから」
「ごめん、遅れて」
「来たね。それじゃあ行くよ、――成功を祈ってる」
私は退室し、少し進んだ通路の壁にIDを翳した。
スライドした壁の向こうにある室内の闇を、隣室からの明かりがぼんやりと照らしていた。
隣室では先程の2人が頭を寄せ合い、また副読本を
存在しないこの部屋に立ち寄ったのは、ほんの気紛れだった。
何がおかしいのか結んだ髪を揺らし笑う少女に、少年はいつもの飄々とした様子で応じている。
ただ声は届かないから静かだ。
ここから初めて彼女を見た。
まだあどけなさを残す少女は、不安げに、机の上の通学カバンに手を重ねていた。じき彼の方もやって来たが、彼女とは対照的に、どこかこの事態を面白そうに受け入れている風だった。
あの日、ここで私は告げられた。
「この2人が新しく見つかった異界物質の操者と磁界の作り手。そして作り手――いや彼らのためにあることが、君の役目だ――」
そして私は『その②』となった。
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