第5話
「あ、それ何で?ネットの説明見ても今ひとつ分かんない」
「これも実はよく分かってない。現段階では、こちら側と異界側との間に僅かな隙間があって、その部分に生じた時空の歪みが原因じゃないかと考えられてる。
おそらくこの歪みのせいで、異界から戻るのが容易でなくなっている…そうだよ」
「意味分かんないんだけど…」
「例えば、君が端末の画面に異界の光景を見つける。そこが異界側との接点だ。――ところでもしこの異界側にも、スマホのような端末があったらどうだろう?」
「異界側からもその接点で、こっちの光景が見れるんじゃないの?――違うんだ」
「うん。異界側からは何も見えないし、そもそも接点自体が無い。歪みっていうのは主にこれで、要は双方向に窓や扉が開いてるわけではないんだ」
「じゃあこっちが一方的に異世界覗いたり、侵入してるの、なんか微妙」
「そこは意図したわけじゃないから…そんな
但し時間は掛かるケースが多くて、最近自力で戻って来た30代男性は、噂や言い伝えを元に探し回って20年だって言ってたな」
「20年て、向こうの時間感覚で?」
「そう。通常は異界から戻る際、こちら側で経過してる年月に合わせて身体もリセットされるけど、時間の流れがとてつもなく違い過ぎたら危険だと思うな…戻る際どんな弊害が起きるか分からない」
「でもスマホと充電器持って入ってたら大丈夫なんじゃないの?
身に着けてたものはあっちでも電源入るから、探しに来た帰国促進課の人が電波拾って位置特定して、助けに来てくれるって――」
「運が良ければね。調査課によると、対象の異界がこちら側世界と似ていれば、そもそもの成り立ちから似通ってることも多くて、そんな異界や著しく高度な技術を持つ世界だと、電源が入ったり一部機能が使えたりする。
帰促課はこうした電波を拾えるから、それが救出に繋がることもあるけど、すんなり行くケースは珍しい」
「なあんだ、結局ハイリスクか」
「…あと、これは非公表だけど、見つかっても自ら命を絶っていたり、酷い扱いを受けていて救出に課員総出で向かったこともある――。
国が出した緊急事態宣言は、なにも若年者の人口流出が国にとっての大きな損失になるからばかりじゃなくて、こういう事態を想定した部分もあった。
色々言われてるけど、政府の行動は決して遅くはなかったし、分からないことだらけの状況下で、よくやってる方じゃないかな」
「はいはい。そうやってまとめる辺りが作為的なのよ、ホント役人っぽいわね…だけど、よくやった結果があれ?『ジャパニーズジュエリーショー』ってとんだ皮肉」
「…『3組目』のことを言ってる?」
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