第3話

「次も偶然同じ所轄内で、1人目との情報が共有され初動に繋がったのが後から考えれば功を奏した――。

 2人の語る異世界の中身は違っていたけど、『行き方』はほぼ同じだったから」


「スマホのアプリとかデジカメとか、とにかく撮影機能をONにして異世界を見つける。

 見つかったら画面に映しといたまま、その光景がある場所に向かって行く―。そしたら即異世界とか、驚き通り越してどうかしてるけど」

「最低1人は画面越しに異界を視認した状態であることも要素の1つ。で、この面識もない2人に一致した証言を、数人の警官で試してみた」

「暇よね」

「慧眼だったと思うよ。10代の行方不明者の急増は深刻だったし、やれることは何でも、ということだったらしい」

「で、試してみたら1人が目の前で消えちゃったとか…」

「2人目の異界接点がまだ残ってたんだ。

 もちろん後日ちゃんと保護された。少し時間は掛かったけど…でもこの一件は政府の目を向けさせるきっかけとなった。その月の行方不明者が100名近くに及んで、何でもいいから動かざるを得ない事情もあったけど――」



「『結果、行方不明の大半の原因が、国内中に多数出現していた異世界の入口への進入によるものだと断定された』

 噂通り端末画面に映ってるのが『異世界』で、その光景がある地点が異世界の入り口。どう考えてもおかしいし」

「正しくは異界接点あるいはポイント――でも、事実だった」

「しかも異界ポイントの出現はこの国だけ。そこから異世界に行けるのもこの国の人達だけ――変過ぎでしょ」

「例外もあるし、この国の国籍があればいいわけでもないけどね」

「『居住実績』だっけ――あった、『人種関係なくこの国で生まれ育った者。或いは長期にわたりこの国に住む者も無意識下の『親和・反発力』を持つことがある』

 意識して使える人間には関係無いのに、なんでかしら?どうでもいいけどそのポイントだかで、通学路3カ所も封鎖されて毎日遠回りよ」

「君の辺りは多発地帯だから…でも1カ所はもう8日出現が確認されない、じき封鎖解除になるよ。異界接点は割と突然消えることも多いし」


「増えてもいるでしょ。常にあるわけでもなし、消えてる時は通してくれてもいいのに、あと更にどうでもだけど何で屋外だけ?」

「平均すれば減少傾向だよ。屋内とか建物に重なる接点は少ないけど、無いわけじゃない。…監視には都合がいいけど、新しく出現する接点は観測のみじゃ難しいし、空からの撮影だとなぜか異界接点そのものが確認されない。だから人の手で探す方が早かったりするんだけど…」

「新しいポイント見つかったら、裏サイトで速報流れるんだって、封鎖前なら行き放題だものね」

「イタチごっこだ。強行突破を図ろうとする人も一向に減らないし、その上新しい接点対策にも人員が割かれるから、人手がいくらあっても足りない」

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