第7話 順番

全ての順番が間違っていた。婚約者、親に言う前にこうなってしまった。

最悪の日。

婚約者にメールで別れを告げる。どういうことかと婚約者がどなりこんできた。

「世の中をなめている」

父親にそう言われても仕方がない。


「娘がしたことは本当に弁解の余地もありません。ただ、母親の私は彼と会って娘が惹かれた理由がわかりました。順番が間違っていたことは謝ります。申し訳ございませんでした」


この時、両親は彼の性別のことは知らなかった。順番が間違っていた。


私はすでに彼との同棲生活を始め、浮かれていた。


両親が彼の性別のことを知ったのはそれから間もなくだった。私にとっては男性でしかなく、わざわざ言うことでもない。

面倒なことから逃げていた。


「大丈夫なの、心配しています。連絡ください」

「とにかく家に帰ってきてください」


母親からのメールにも返事をしなかった。彼との生活を守りたかった。


久しぶりに友人と会い、私を見る目がいつもと違った。

「なんかおかしいよ、幸せなんだよね?」

友人には全て話していた。

「親が全然わかってくれなくてさ、もう嫌になっちゃう」

「・・・」

「親とはちゃんと話したの?」

「・・・会ってない」


「家族を大事にしないあんたは本当のあんたじゃない。もう二度と会わないかもしれない。」

「あんたが言いたいことを言えない性格なのはわかってるよ、とにかく一刻も早く家に帰りな」

いつもなら二軒目行こうという友人は私にハグして振り返らずに帰っていった。


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