第3話
嗅ぎ慣れない香の香りがする。眼を開くと煌びやかな装飾が見える。少しずつ意識がはっきりとしてくると自分が真っ白な大きなベッドの上に横たわっていることがわかってきた。
ここはどこだろう。
「目が覚めたか」
天蓋を持ち上げ、顔を出したのはカミラ国王だった。
慌てて身体を起こそうとすると脇腹に痛みが走る。
「そのままで良い。急所は外れていたが脇腹を短刀が貫いていた。しばらく安静にしていろ。」
ベッドに腰をかけて話し始める。
「先ほどは命を助けられた。礼を言う。その場に犯人も倒れていたが既に息はなかった。恐らく俺の命を狙っていたのだろうが、手がかりなしだ。」
不意に胸ぐらを掴まれる。
「あいつをやったのはお前だろ。命を助けたのは感謝するが、お陰で敵も野放しだ。それにあの身のこなし、ただの町娘ではないな?一体お前は何者だ?」
身体を動かされ激痛が走り、小さく呻く。すると、後ろから細身で長身の男が現れる。
「カイ!」
「怪我人に何をしているのですか!おやめ下さい。」
「仮にも命の恩人ですよ。
そもそも貴方が勝手に市場に行ったのが行けないのです。命を狙われてもおかしくないというのに異国でふらふらされてはこちらも困ります。」
「市街調査だ。」
「貴方という方は、、、。とりあえず落ち着いて話しましょう。」
舌打ちをするものの手が離れる。
「仕方ない。
それにしても、この国にもこんな女がいるとはな。」
品定めをするようにジロジロと私のことをいやらしい目で見る。
「透き通る肌に黄金の髪、黄金の瞳。こんな美しい髪も瞳も初めて見る。マドラーダ人ではないのか?身につけているものからするとそこそこ裕福そうだな。その態度だと宮廷にも慣れているな。庶民であればもう少しこの部屋に驚くだろう。あいつらもこんな女がいるなら昨晩の宴に出せばいいのに、出し惜しみしているのか。」
返答を催促するように瞳を覗かれる。
「何か答えろ。」
身元がばれてはいけない。髪も瞳も本来ならさらしてはいけなかった。せめてそれ以上の情報を与えないようにしなければ。
「カイ。急ぐのはやめましょう。彼女は怪我人。しばらくここにいるしかないのですから、ゆっくりと口を割らせればいいのです。」
側近の男が優しい表情とは裏腹に、怖いことを言ってくる。
この男はカミラ国王カイの側近ジュナ。そして私をにらみつけている男が隣国カミラの国王、カイ。
先日、貿易交渉のために来国していた。その出迎えのために私たちはしばらく忙しかったのだ。
遠くから顔は見ていたが、まさか市場で出会い、私の顔を見られていしまうとは。
かなり不機嫌そうな様子でカミラ国王が話す。
「今宵は日も暮れた。仕方ないから話は明日聞くとする。今夜はここで休養しろ。」
そのままベッドから離れていった。残された側近が冷たい目で一言告げて後を追っていった。
「覚悟しておきなさい。」
一人残された。外では夜鳥が一鳴きした。
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