殺人事件の捜査へ
首都高速道路中央環状線外回り
駿河は困惑していた、臨海副都心から首都高に入り、湾岸線西行きに乗ったとき駿河は気づいた『中東開発の本社を出てからずっと黒いバンに追跡されている』念のため追い越し車線から数台追い越したり、逆に追い越されるような低速で運転してみたり、大井JCTでもたついてみたり、一度必要もないのに五反田で高速を降りてからまた五反田から乗ったりもした、それでも寸番狂わず追跡してくるのだ!ここで普通なら自分の身が心配になるところなのだが駿河は『まさかこの車に重要人物でも隠れているのか!?』などとてんで的はずれな心配をしていた。SPだった頃の経験のせいである。駿河はアクアではこの黒いバンを撒けないことがわかっていた。仕方がないので、渋谷駅に駐車、電車を使って下北沢経由して神泉で降りる(追跡者は下北沢で撒くことに成功)、そこから徒歩で渋谷駅に戻り、渋谷からまた首都高に乗って首都高渋谷線を右、三軒茶屋で降りてようやくたどり着いた。
被害者渋谷宅
浜松はこれは殺人事件として捜査することにした、なぜなら伊豆が調べれば調べるほど自殺にしては不自然な点が出てくるからだ、悔しいが認めるしかないと思った。
不自然な点
1縄から指紋が出てこない
自殺ならば指紋なんて気にすることはないはずなのに被害者を含め全く指紋が出てこない、なおかつ被害者の周りに指紋をつけないようにする工夫が見当たらない
2本を積み上げても被害者の足に届かない
そこら辺に散乱していた本を集めて椅子の上に乗せても被害者の足に届かなくて中に浮いてしまう、それだと自殺に成功したはずがない
3本に足跡がない
被害者は靴を履いたままぶら下がっていた、足の裏にはきちんと泥もついている、なのに泥のついた本が見つからないし、椅子にも付いてない
4首の索状痕の生活反応が弱い
生きたまま絞められた場合生活反応が出るが、今回の案件ではそれが妙に弱い、まるで衰弱したあとに誰かに吊り下げられたかのようである
などである。
浜松は殺人事件への捜査に切り替えることを東刑事部長に報告した
浜松「あっ、もしもし東刑事部長?浜松です、今日の首吊りの件、自殺じゃなくて他殺の線が濃厚なので捜査を殺人事件に切り替える方針で」
東「そうかそうか、いやーよかった!頼んだよ浜松君!全力で犯人を確保してくれたまえ、はっはっはっ❗」
浜松「はい、わかりました、しかしいいんですか?最初この事件は自殺ではないかといっていたのは東さんですよ!?」
東「大切なのは真実を暴くことだ、期待しているよ」
そういうと電話は切れた、何か腑に落ちないところがあるが東さんが理不尽なのはいつものことであると割りきって捜査の指揮に戻った。
殺人にきりかえて証拠探しを続けていると駿河が帰って来た。
駿河「すいません到着が遅れました、不振車両を撒くのに時間がかかったんです」駿河は不穏なことを呟きながら、証拠探しに合流した。
駿河「浜松警部補、見てくださいよ二階の手すりの柵、何かが強く擦れたあとがあります!しかもここだけではなくあっちもこっちも色々と…あとはシャンデリアを下に下ろすためのボタンがありました、整備のためでしょうか?窓ガラスは無事のようですがホコリのせいでくすんでみえます、そのわりには窓ガラスの取手は埃がありません、書斎の本は管理がいいですね、自殺された渋谷さんは自分の本をしっかり管理されていた、やっぱり足場として使おうとしたのは本人ではない、これは自殺ではない証拠になりそうです。…あちこち調べて見ましたが縄が見つかりませんね、あとで物置も調べます!洗濯物の中にパジャマがありました、奥様は毎日洗濯するそうなのでこれは今日中に使われたと見るべきでしょうか?しかし渋谷さんのご遺体はスーツ姿でした、犯行時刻は朝方なのでしょうか?あっ!ゴミ箱にレトルトカレーのパッケージを見つけましたよ!リンゴとはちみつが隠し味の大手企業の商品ですね、でも台所にはこれとは別のカレールーもあったはず…」駿河は物置小屋に移動してさらに捜査を続ける「あっザイルがありましたね、5本もあってそれなりの長さですよ、高枝切りバサミもあるんですね、恐らく庭の手入れに使うのでしょう長さは五メートルくらい…ジャパネットってタグがついてますね、他にもキャスターのタイヤとかネジとかホコリとかゴキ○リとか…ってきゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃ!!!」大声を出しながら物置小屋に頭をぶつけた駿河葵巡査長は救急車で運ばれていった…救急車内ではずっと「黒い悪魔が…黒い悪魔が…」とうわ言のように呟いていたと言う。
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