現場の様子

世田谷区被害者宅

 現場につくと班の他のメンバーはすでについていた

 まず規制線の外側でタバコを吸ってリラックスしている伊豆裕介刑事に声をかけた。

 浜松「ちっす、伊豆さん 現場はどんな感じ?」

 伊豆「おう、浜松のだんな!こっちだ、ついてこい!安心しろお前さんが思ってるほどスプラッタな光景にはなっちゃないからよ」伊豆刑事につれられて現場に足を踏み入れた、するとそこには超大型のシャンデリアがぶら下がっていた…

 浜松「下田ちゃん、ここのどこら辺が一般住宅なの?非一般住宅だよね?」

 下田「一般人のすんでいる家ってことでしょ!どれだけ豪邸であってもすんでいる人が一般人なら一般住宅なの!」

 二人がそんな事を話しているうちにブルーシートをかけられた担架が運ばれていく。

 そこで詳しい説明を駿河葵刑事に求めた

 駿河「はいっ!今回の事件の被害者は渋谷泰則氏52才、中東開発株式会社の専務だったようです、家族構成は妻の渋谷幸恵さん54才、息子の渋谷俊介22歳ですこの三人でこの家で暮らしているようです、被害者は二階の柵からつられた状態で発見されたそうです 被害者に関する情報は以上ですっ!」駿河刑事は簡潔にまとめた内容を伝えた。

 三島直人巡査は別の部屋で発見者である被害者の息子に当時の状況を聞いていた。

 三島「では第一発見者の渋谷俊介さんであってるっすか?」

 俊介「は、はい…」

 三島「ショックを受けてるところ申し訳ないとは思うっすけど、当時の状況をなるべく詳しく教えていただきたいっす、まだ時間をおいてからの方がよかったっすか?」

 俊介「いいえ、犯人には一刻も早く捕まってほしいので出来ることなら何でもご協力させてもらいます」

 三島「では捜査のためにご協力お願いしますっす、ボイスレコーダー使っていいっすか?」

 俊介「どうぞ…」

 三島はボイスレコーダーを起動して話を始めるように促した

 俊介「…今日は午前五時から会社の方で重役会議があるんです。それなのに親父は午前5時の時点で会社にすら来ていなかった、だから俺は会社の車を飛ばして親父を迎えに来たんです。…これまでも遅刻自体は何度もあったことなのでこの時まではおかしいとは思いませんでした。そして玄関に入ると親父が二階の手すりからぶら下がっていて足元には椅子と大きい本が散乱していて…恐らくそれを足場にしたんだと思いますが、助けなければいけないと思って本を端の方にどかして机を引っ張って来てその上に椅子をのせて…そこで親父の首の紐をとろうとしました、けど結び目がしっかりしていたことと、手すりと親父の距離がとても近くなってるので、全然ほどけそうになくて…仕方なく果物ナイフで結び目を切ったのですがその時にはもう息は…もし俺がもう少し早く助けていれば…」

 ここまでの供述を聞いた三島は救助のあとから警察が来るまでの行動を話すように促した

 俊介「息がないので救急車を呼びました、蘇生をしてもらうためです。救急隊が到着したときに救急隊から手遅れであると聞かされました。救急車が到着したときには母さんが下に降りてきて…母さんは親父と一緒に救急車で病院へ向かいました、救急隊の方から警察に通報があったのか警察の方がきて調べ始めたんです…」少なくとも三島にはこの証言は矛盾がないように思えた、もし三島の知り合いが紐を首にかけられてぶら下がっていたら間違いなく俊介さんと同じことをしただろう、現場を荒らしたことは責められない。

 三島「貴重な証言ありがとうございましたっす、あとは警察に任せてくださいっす、会社までパトカーで送らせたほうがいいっすか?こんな貴重な証言をしてもらったんだからその程度のお願いならお安いものっすよ」三島は会社まで送ることを提案した、これは計算とかではなくただの善意である。1ヶ月前まで交番のお巡りさんだっただけに駆け引きや交渉、腹の探りあいなどは思い付きもしない『お人好し』であった。

 三島は車は運転できないので駿河に運転をお願いしてついていくことにした

 駿河「三島さん…送っていきましょうか?とか言っておいて運転は私任せってどうかと思いますよ、せめて私に運転を任せるなら三島さんは聞き込みとか初めておいて下さい、何で当たり前であるかのように後部座席に座ってるんですか…」

 駿河はぼやいていた、なにせ11係は他の班に比べて人数が少ない、そのうちの二人も単なる送迎に駆り出されれば捜査は停滞してしまう、三島と駿河は殺人事件の捜査においてはまだまだ半人前であるが元お巡りさんの三島なら聞き込みなどの初動捜査に関しては優秀である(初動捜査ではお巡りさんのフットワークの軽さは大きなアドバンテージとなるから)なのに後部座席で明らかな雑談で時間を浪費する三島に駿河は怒りすら覚えた。

「いやいや、伊豆刑事は元公安だし、班長はああ見えて元白バイ隊、下田刑事だってサクラポリスの元班長だったらしいじゃないっすか!そんなエリートたちと一緒に動ける自信がないっす!だったら同じ地域課仲間の駿河さんと一緒の方が働けるっす」「あれ?言ってなかったっけ?私はもと警備部のSPだったんだよ」「警備部のSP!?優しそうで総務課とかの内勤にいても全然違和感のない駿河さんが?えっ警備部のなかでも体力と状況判断に優れたエリートっすか!?」三島は自分と同じくらいの年で自分一人でも簡単に押さえつけられそうな見た目かつちょっと天然な日頃の言動とのギャップにとても驚いた。

 ちなみにこのやり取りの間俊介さんは疲れからか爆睡していたため三島の頼れそうな刑事というイメージは辛うじて守られていた。

下田は奥さんの幸恵さんに話を聞いていた

下田「ご主人を恨む人に心当たりは?」

幸恵「いいえ、あの人は私が出会ったころからいい人でしたから、その頃は私も中東開発で働いていて…電気機械部門でエスカレーターやエレベーター、自動ドアなどを作っていたんです、私はそこの上司に一目惚れしたんですそれが主人だったのですが…その頃から上司と対立はしても殺されるほどの恨みを買ってるとは思えませんでした」

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