第6話 グランプリ

「天使の輪っかに純白い羽! ホワイトファンタジー! 美歌恵流!」

元々大天使の美歌恵流は佐藤のカンペに抵抗なくスラスラと恥ずかしいセリフとダンスと決めポーズができる。

「漆黒のボディに黒龍の翼! ブラックファンタジー! 刃覇夢徒!」

元々最強の竜の刃覇夢徒はシャイなので抵抗があるが、地球の平和を守るために覚悟を決めた。

「可愛い猫耳に矢印尻尾! ダークファンタジー! 瑠詩富亜! わ~い! 決まった!」

元々大悪魔の瑠詩富亜は極悪な悪魔ではなく、可愛い子悪魔的な悪魔にしておいて良かった。

「牛やカバと呼ばないで! 牛乳もカレーも大好き! イエローファンタジー! 辺陽藻栖!」

元々最強の獣の辺陽藻栖は戦隊シリーズに1人はいる食べ物担当。

「普段は病弱! 水のある所では最強! 決して兵長と呼ばないで! ブルーファンタジー! 璃羽威亜紗!」

元々最強の生物の璃羽威亜紗はスーパー銭湯であっても近くに水がある所では強かった。

「5人合わせて、異世界戦隊! ファンタジー!」

個人個人の紹介を終えて5人は決めポーズを決める。若干、刃覇夢徒だけは恥ずかしそうだった。

「異世界戦隊だと!? ふざけるな!?」

守護女神アテーナーは異世界戦隊ファンタジーに呆れて怒る。

「異世界ファンタジーボンバー!」

聖なる光と竜の炎と闇の光と獣の突進力と海竜の竜巻を1つに合わせて放つ大技である。

「ギャア!?」

守護女神アテーナーは異世界ファンタジーボンバーを食らって倒される。

「地球の平和は私たちが守る。」

背景で守護女神アテーナーが大爆発を起こす中、決めポーズを5人は決める。

「わ~い! 勝った! 勝った!」

「私たちはやればできる子よ!」

「・・・は、恥ずかしい。」

「帰りにチキン食べてく?」

「ゴホゴホ。水・・・水を下さい。」

異世界戦隊の隊員たちは喜んだ。

「喜ぶのはまだ早い! ひねりつぶしてくれるわ!」

その時、倒させたはずの守護女神アテーナーが巨大化して現れた。

「下からパンツ丸見えですけど。」

真下にいる隊員はベストポジションにいた。

「守護女神に歯向かったことを思い知らせてやる!」

巨大化した守護女神アテーナーが異世界戦隊に襲い掛かる。

「ちょっと待った!」

その時、ちょっと待ったコールを言いながら、謎のロボットが現れる。

「なんだ!? カラスだ!? ヘリコプターだ!?」

アテーナーは驚いた。

「超合金デラックス! 佐藤さくらロボ! 参上!」

空を飛んできたのはロボット化した佐藤さくらだった。

「佐藤さん!」

「佐藤!」

「佐藤先輩!」

「さくらちゃん!」

「佐藤さくら!」

異世界戦隊は目の前の超合金デラックス! 佐藤さくらロボの登場を頼もしく頼りにしている。

「くらえ! 佐藤さくらパンチ!」

佐藤さくらロボは地球の平和を守る必殺のパンチを繰り出す。

「ギャア!?」

守護女神アテーナーはパンチを食らって、どこかへ吹きとばされた。

「地球の平和は私たちが守る! ワッハッハー!」

喋れる笑える、そして強い。今やちびっ子のアイドル、超人気の超合金デラックス! 佐藤さくらロボである。そして緞帳が降りてきて終わる。

「パチパチパチパチ!」

会場は鳴り止まない拍手に包まれた。実は会場は全日本高校歌劇団部コンクールの会場だった。

「それではグランプリを発表します! 今年の優勝は・・・渋谷塚歌劇団! 作品は異世界戦隊ファンタジーです!」

渋谷塚高校の歌劇団は全国大会でグランプリを獲得した。

「やった! わ~い! わ~い!」

歌劇団の部員たちは飛び跳ねて喜んだ。照れ屋の刃覇夢徒も輪の中に混じって笑顔で喜んでいた。

「それではグランプリを獲得した渋谷塚歌劇団の部員さんにインタビューしたいと思います。」

大会の司会者が優勝した渋谷塚歌劇団の部員たちにインタビューを始める。

「まず脚本と演出を手掛け総監督も兼ねている部長の夜露死苦さんにお話をお聞きしたいと思います。」

夜露死苦部長は今回で演技者だけでなく、脚本家と演出家としての高い評価を得た。

「優勝おめでとうございます。」

「ありがとうございます。今回、優勝できたのは未熟な私の脚本と演出についてきてくれた歌劇団の部員たちと温かく見守ってくれた会場のお客様のおかげです。本当にありがとうございました!」

夜露死苦部長が総監督らしいコメントをして一礼をする。それに合わせて歌劇団の部員たちも会場のお客様に一礼する。

「パチパチパチパチ!」

会場のお客様も渋谷塚歌劇団の部員たちに盛大な拍手をする。

「優勝したことを、どなたに伝えたいですか?」

「ツーリング仲間に伝えて、みんなと思いっきり飲みたいです。」

「サイクリングが趣味なんですね。汗をかいた後のドリンクは美味しいですよね。」

「はい。最高です。」

夜露死苦部長のコメントを直訳すると、暴走族のレディースで金属バットを振り回しながら、バイクの暴走行為を行い、コンビニの駐車場でアルコールの入ったビールを飲みたいと言っている。もちろん良い子はマネしてはいけない。

「それでは続きまして、歌劇団の部員たちをよくまとめていた美歌恵流さんにお話を聞きたいと思います。」

美歌恵流は元々大天使ミカエルなので歌劇団の部員たちがまとまるように祝福して導いていた。

「美歌恵流さん、歌劇団の部員たちを一致団結させるのは大変だったんじゃないですか?」

「いいえ、そんなことはありません。だって私は大天使ですから。」

「え!?」

「私たちがグランプリを獲得できたのも天界にいらっしゃる神々の祝福があったからです。大天使として天に感謝いたします。そして神の祝福が会場の皆様にもあることをお祈りいたします。」

美歌恵流は会場のお客様に感謝の気持ちを述べ一礼した。

「パチパチパチパチ!」

自分のことを気にかけてくれていると会場のお客様から美歌恵流に盛大な拍手がされる。

「・・・ああ!? 美歌恵流さんは、まだ役を演じていらっしゃるようです。会場の皆様のことも気遣うことができるなんて、なんて素晴らしい女子高生でしょう。」

司会者は完全に美歌恵流を誤解している。

「続きまして、今回の物語が生み出した超新星のヒーローと言っても過言ではありません。」

「キャア!」

会場から美歌恵流以上の黄色い女子高生の声援が飛び交う。

「刃覇夢徒さんです!」

「キャア! カッコイイ!」

「どうも。」

「キャア! しびれる!」

元々最強の竜バハムートは自分が一番強いと思っているので、他人に関心がない。そのため口数も少ない。

「今回、渋谷塚歌劇団がグランプリを獲得したのは刃覇夢徒さんの演技がカッコ良かったからという声が多いですがご自身ではどう思いますか?」

「別に。」

「キャア! カッコイイ!」

会場から美歌恵流以上の黄色い女子高生の声援が飛び交う。人前に立つのが嫌いな刃覇夢徒はイライラしてきた。

「なんと謙虚なお言葉でしょう。クールなのが刃覇夢徒さんの魅力ですね。」

「ギロ。」

我慢の限界に達した刃覇夢徒は竜の目を出し会場を威圧する。

「キャア・・・。」

司会者や会場のお客様の女子高生たちは刃覇夢徒の竜の目に威圧され気絶者が続出した。

「司会者が刃覇夢徒さんのカッコよさに気絶してしまったので、司会者を変えまして引き続きインタビューを続けたいと思います。それでは可愛い小悪魔を演じられた瑠詩富亜ちゃんにインタビューしたいと思います。」

司会者が代わり次は瑠詩富亜の番である。

「わ~い! 瑠詩富亜、優勝しちゃいました~! わ~い!」

瑠詩富亜は無邪気に喜んでいた。

「その小悪魔の矢印尻尾もよくできてますね。小悪魔を演じさせたら瑠詩富亜ちゃんの右に出る者はいませんね。」

司会者が小悪魔小悪魔と繰り返して言うので、笑顔の瑠詩富亜の心にピクっと引っかかってしまう。

「誰が小悪魔だ! 私は大悪魔のルシファーだぞ? おまえたち人間なぞ、呪い殺してくれるわ!」

可愛い瑠詩富亜は元々大悪魔のルシファーの本性を現し、会場の人間たちを呪い始めた。

「ギャア!?」

呪いにかかった人間たちの口から泡を吹き始め気絶する。

「エヘ。やり過ぎちゃった。わ~い!」

瑠詩富亜は可愛い女子高生であっても悪魔は悪魔なので気をつけよう。

「会場の皆さん大丈夫ですか? 気を取り直して辺陽藻栖さんにインタビューしたいと思います。」

司会者にも司会者としてのプライドがあるので、決してインタビューを中断しようとはしなかった。

「グラマラスでセクシーなナイスプロポーションをされていますが、なにか秘訣はあるんですか?」

「ダイエットはしていませんよ。普通によく食べて、良く寝ることです。そうですね、最近はバターがたっぷり入ったクロワッサンを食べています。」

「お気に入りのスポットとかあるんですか?」

「壁に羽の絵が書いてあってインスタ映えするので好きです。」

「ありがとうございました。辺陽藻栖さんでした。」

元々最強の獣ベヒモスには一切お芝居のことは聞かれなかった。可愛い女子高生になった辺陽藻栖には食べ物とプロポーションのことしか聞かれないのであった。司会者は初めてインタビューらしいインタビューができた。

「続きまして、璃羽威亜紗さんにインタビューします。」

「ゴホゴホ。」

「璃羽威亜紗さんは体が弱いとお聞きしていますが、異世界戦隊を演じるのは体に負担とかないですか?」

「ゴホゴホ・・・そうですね。もう少し湿気が多めだと嬉しいですね。」

元々最強の生物リヴァイアサンの璃羽威亜紗は水がない所では陸に上がった魚状態だった。

「兵長!」

客席から璃羽威亜紗に対して兵長コールが起こる。璃羽威亜紗は刃覇夢徒に勝るとも劣らない人気者であった。

「おっと! 会場のお客様から璃羽威亜紗さんに兵長コールです!」

「兵長と呼ばないで下さい! ゴホゴホ。」

そのまま璃羽威亜紗はタンカーに運ばれて救急車で水族館に運ばれていった。

「璃羽威亜紗のことは心配ですが、最後にヒロインの座を獲得し、今や子供たちのアイドル、佐藤さくらさんにお話を聞きたいと思います。」

「おお!」

「キャア!」

「さくら様!」

「ロボ!」

客席から様々な歓声が起こる。今日一番の大きな歓声と言っても過言ではない。

「あははっ。」

あまりの大歓声に佐藤さくらは少し気後れしている。

「佐藤さん、超合金デラックス佐藤さくらロボにはどうやって変身しているんですか?」

「ええ!? えっと・・・CGとかプロジェクションマッピングを駆使して、なんとかロボットを演じています。あははっ。」

佐藤さくらの答えは適当である。正確に言えば、どうやって可愛い女子高生が超合金デラックスロボになっているのかは分かっていないのである。

「異世界戦隊ファンタジーのメンバーになる可能性もあったと思うのですが、なぜ超合金デラックスロボになる選択をしたのですか?」

「カッコいいからです! ロボットに憧れていたんです!」

佐藤さくらの力強い答えは嘘である。ただ単に異世界戦隊の5人が決まっていて、そこに巨大化した女神に襲われて、苦肉の策として、超合金デラックス佐藤さくらロボは生み出されたのである。

「おお!」

「キャア!」

「さくら様!」

「ロボ!」

会場のお客様のボルテージが一層と高まる。佐藤さくらのロボットがカッコいい発言にお客さんが共感している。

「ありがとう! みんな! ありがとう!」

佐藤は笑顔で両手を会場のお客様に手を振る。

「佐藤! 佐藤!」

「さくら! さくら!」

「ロボ! ロボ!」

「L・O・V・E さくら!」

会場のお客様がスタンディングオベーションで佐藤さくらを称える。

「それでは全日本高校歌劇団部コンクールは渋谷塚歌劇団のグランプリでした。」

最後は司会者が幕を閉じた。



会場の2階の客席。

「さくらは俺が守る。」

地球防衛隊の鈴木隊員は異常な佐藤さくらロボの人気に戸惑っているも、大好きな佐藤を守ると鈴木は心に誓った。

「それにしてもスゴイ人気だな。」

地球防衛隊のハゲタヌ隊長も佐藤の人気に戸惑っていた。

「鈴木隊員、これでいいのか?」

ハゲタヌ隊長もタヌキのぬいぐるみ体系なのだが、男子高生の鈴木が佐藤を好きなことを知っているので心配していると思われた。

「仕方ありません。これだけ人気が出てしまってわ。きっとさくらは女優になるという夢を叶えるでしょう。」

鈴木隊員は佐藤が自分の夢を叶えることに嬉しさと寂しさが混じった。

「違う! この展開から覗きをして変態キャラを確立したのに、コンテスト会場では覗きができないぞ!? このままではおまえの変態行為を通じてサービスショットを楽しみにしているファンの期待を裏切ることになるぞ!?」

ハゲタヌ隊長の心配は鈴木隊員の変態キャラとしての展開がないことに対する心配だった。

「なんだって!?」

鈴木隊員も事態の重要さに気づいた。作者が楽なテンプレ貼り付けなのだが、ラノベ位だと同じことを繰り返す展開が、その作品の世界観として受け入れられる重要な要素である。

「控室を覗きに行きますか?」

鈴木隊員はいつもの変態扱いされる鈴木隊員に戻った。

「それでこそ地球防衛隊の鈴木隊員だ!」

ハゲタヌ隊長もいつもの地球防衛隊の変態長に戻った。

「おまえたち変態か!?」

鈴木隊員とハゲタヌ隊長と並んで座っていた女子高生がピコピコハンマーで2人を地面に叩きつける。

「ギャア!? 慈豆・・・。」

「慈豆隊員のことを・・・忘れてた。」

女子高生になった最強の鳥ジズ。ジズはスーパー銭湯の部留鎖偉湯の乱の際、異世界戦隊ファンタジーのメンバーになることができなかった。そしてスーパー銭湯の瓦礫の下敷きに一緒になっていたハゲタヌ隊長と鈴木隊員との縁で地球防衛隊に入隊したのだった。

「私のことを忘れるなよ。」

最強の鳥ジズは知名度の無さと存在感の薄さから、周囲の人から存在をよく忘れられる。その対策としてハゲタヌ隊長から地球防衛隊の最新科学力を駆使して作られた、暗闇でも七色に光るピコピコハンマーを授かった。

「レインボー、おまえは本当に可愛いな。」

慈豆は七色に光るピコピコハンマーに名前をつけた。自分の存在感を高めてくれるピコピコハンマーが大好きで頬ずりしている。

「ハゲタヌ隊長!? いつまで寝てるんですか!? 大事な記者会見をするんでしょ!? 起きてくださいよ!?」

ハゲタヌ隊長と鈴木隊員はピコピコハンマーで殴られて、まだ魂が口から出ていた。



地球防衛隊、緊急記者会見の会場。

「さ、さくら!?」

「り、陸!?」

なぜか会場に佐藤さくらがいたことに鈴木陸は驚いた。

「陸がどうしているのよ!?」

「さくらこそ!? なぜいるんだ!?」

「私は呼ばれたから来たのよ!?」

佐藤さくらもなぜ自分が呼ばれたのか理由は知らない。鈴木隊員も地球防衛隊のトップシークレットのことは分からなかった。

「あ、あ、それでは地球防衛隊、緊急記者会見を始めたいと思います。」

慈豆隊員が司会進行役で地球防衛隊の記者会見が始まるようだった。会場にはハゲタヌ隊長と鈴木隊員と佐藤さくらがいる。

「地球防衛隊のハゲタヌ隊長から重大発表があります。」

「重大発表だって!?」

会場の記者がカメラで写真を撮りながらザワザワする。

「我が地球防衛隊は脆弱な地ロボの開発を中止し、超合金デラックス! 佐藤さくらロボを地球防衛隊の正式ロボットに任命します!」

ハゲタヌ隊長が佐藤さくらロボを地球防衛隊の正式なロボットに採用すると発表したのだ。

「え? ええ!? 私が地球防衛隊のロボット!?」

佐藤さくらは予期せぬ展開にビックリした。

「な? なな!? さくらがロボット大戦をやる!?」

さくらが大好きな鈴木隊員は想い人が巨大化した女神と戦うと聞いて驚く。

「おお!」

呼ばれてやって来ていた新聞社やテレビ局の記者がカメラのシャッターを押しまくる。

「佐藤さん! 地球防衛隊のロボットに任命された気分はどうですか!?」

「巨大化した女神と戦うお気持ちを聞かせてください!?」

「さくらちゃん! こっちを向いて!」

記者の佐藤に対する質問攻めが続く。

「キャア!? キャア!? わ、私、私は何も聞いていません!?」

佐藤は恐る恐る言うのだが、佐藤の声は記者の耳には入らない。記者の質問とフラッシュ攻めは続く。自分の話を聞いてくれない記者に怯え始める佐藤。

「来い。」

「え? うわあ!?」

その時、鈴木隊員が佐藤の手を掴み記者会見の会場から連れ出す。

「逃げたぞ! 追え!」

記者は佐藤と鈴木の愛の逃避行をしっかりと写真に収めて、2人の後を追う。

「鈴木隊員には困ったものだ。」

ハゲタヌ隊長は意外に冷静だった。

「いいんですか? 放っておいて?」

慈豆はハゲタヌ隊長に尋ねる。

「恋する若者を誰が止めることができようか。」

遠くを見つめながら話すハゲタヌ隊長であった。



記者会見の会場の外。

「い、痛い!? 陸!? 手を放して!?」

佐藤さくらは鈴木に引っ張られている手が痛かった。

「悪い。ここまで来れば大丈夫だろう。」

鈴木は佐藤から手を放す。

「はあ・・・はあ・・・。もう!? いったい何がどうなっているのよ!? どうして私が地球防衛隊のロボットにならないといけないのよ!?」

いきなり走ったので息が切れている佐藤は状況が把握できなくて逆ギレしている。

「さくら、おまえが悪い。」

「はあ!? どうして私が悪いのよ!?」

「歌劇団部で巨大ロボットの役なんかするからだ。」

全日本高校歌劇団部コンクールで佐藤さくらロボを見たハゲタヌ隊長は、地球防衛隊の広報宣伝アピール位の気持ちで佐藤さくらロボを起用したつもりだった。しかし世間は毎回瞬殺される地ロボに幻滅し、新たに任命される佐藤さくらロボに地球の平和を守ってもらおうと期待した。

「仕方がないでしょ!? ・・・巨大ロボの役しか残ってなかったんだもん。」

佐藤の感情的な瞬間湯沸かし器が少しずつ冷静に現実を受け止め始めていた。

「必然なのかもしれないな、さくらが巨大ロボになり、地球の平和を守ることが。」

「え?」

「もしさくらが逃げたいのなら、このまま2人で誰も知らない世界へ逃げよう。でもさくらが巨大ロボになっても俺は構わない、俺がさくらを守るから。」

「陸。」

鈴木の愛の告白に佐藤の心はズキューンっとときめいて良い雰囲気になってきた。

「公道でイチャイチャするな!」

その時、鈴木と佐藤の目の前に倒したはずの守護女神アテーナーが巨大化して現れた。

「アテーナー!?」

「そんな!? 私が倒したはずなのに!?」

佐藤と鈴木は守護女神アテーナーの再登場に驚いた。

「あの時は油断していただけよ! 今回はアイギスの盾もちゃんと持ってきたんだから! 絶対に負けないわよ!」

守護女神アテーナーの盾は、アイギス若しくはイージスと呼ばれている最強の盾である。

「さくらは下がっていろ! 地球の平和は地球防衛隊の俺が守る!」

「陸!?」

鈴木隊員は佐藤を残し、一人で巨大化している女神に駆けていき戦いを挑む。

「女神を恐れぬ愚か者め! 人間など踏んづけてくれるわ!」

「うわあ!?」

守護女神アテーナーは巨大な足の裏で鈴木隊員を踏みつけようとする。鈴木隊員は避けるが振り下ろされた風圧で吹き飛ばされ転倒する。

「陸!?」

佐藤も吹き飛ばされた鈴木を心配する。

「これで終わりだ! ぺちゃんこにしてくれる!」

守護女神アテーナーはとどめの一撃を倒れている鈴木隊員に与えようとしている。

「クッ!? ここまでか!?」

鈴木隊員、絶体絶命のピンチ。

「やめなさい!」

その時、佐藤さくらが立ち上がる。

「人間なんて米粒を倒しても面白くないでしょ? あなたを倒した私がもう一度あなたと戦ってあげるわ!」

佐藤は守護女神アテーナーと再び戦うというのだ。

「おもしろい。女神に二度の敗北はないぞ。」

守護女神アテーナーは上げた足を下ろし、佐藤さくらの方を向く。

「女神だからって許さないわよ! 佐藤さくら・ロボ・チェンジ!」

なんということでしょう!? 可愛い女子高生の佐藤さくらが超合金デラックスの佐藤さくらロボに変身する。

「大きくなっても可愛い女子高生! 超合金デラックス! 佐藤さくらロボ! 下からパンツは覗かないでね!」

なぜ変身できるのかは謎であるが佐藤さくらロボの完成である。

「出たな! 佐藤さくらロボ! 今度こそ倒してやる!」

守護女神アテーナーが佐藤さくらロボに襲いかかる。

「くらえ! 佐藤さくらパンチ!」

巨大ロボ化した佐藤さくらの必殺の一撃がアテーナーを襲う。

「そんなもの効かないよ!」

守護女神アテーナーは佐藤さくらパンチを自前のアイギスの盾で受け止める。

「なに!?」

佐藤さくらパンチが効かないアイギスの盾に戦慄を覚える佐藤。

「佐藤さくらロボ! 破れたり!」

守護女神アテーナーは受け止めたパンチを盾で薙ぎ払う。

「キャア!」

佐藤さくらロボは吹きとばされる。

「女神に歯向かったことを恨むがいい!」

守護女神アテーナーは佐藤さくらロボにとどめを刺そうと襲い掛かってくる。

「クソッ!? 私は地球の平和も、陸のことも守ることができないの!?」

佐藤さくらロボは必殺のパンチも破られて自分に自信を失っていた。

「さくら! がんばれ!」

鈴木隊員は佐藤さくらロボを応援している。佐藤は鈴木から応援をもらうことにより勇気と自信を回復していく。

「そんなの嫌だ! これでも私はロボットでもヒロインだ!」

佐藤さくらロボが再び立ち上がる。

「こい! 最強の鳥ジズ!」

そして最強の鳥ジズを呼んだ。

「え? 私? うわあ!? 私!? どこへ行く!?」

可愛い女子高生の地球防衛隊の慈豆隊員は佐藤さくらロボに呼ばれて自分の意志とは関係なく最強の鳥ジズとして佐藤さくらロボの方に飛んで行く。

「合体!」

佐藤さくらロボが空中で最強の鳥ジズと合体する。

「合体だと!?」

守護女神アテーナーは人間が巨大化した佐藤さくらロボと最強の鳥ジズが合体しようとしていることに驚く。

「佐藤さくらロボ・ジズ・バージョン! 完成!」

巨大化した佐藤さくらロボが背中にジズの巨大な翼を背負い空に羽ばたいている。

「飛んでいる!? 自由飛行しているだと!?」

守護女神アテーナーは空飛ぶ女子高生ロボットに驚いている。

「さっきのようにはいかないわよ!」

佐藤さくらロボの右手には可愛い女子高生の慈豆が自分の存在感を高めるために持っていた七色に光るピコピコハンマーのレインボーを持っている。

「くらえ! 私と慈豆の友情の一撃! ピコピコハンマー・アタック!」

ちなみに佐藤と慈豆に面識はない。

「アイギスの盾が!?」

七色に光るピコピコハンマーが守護女神アテーナーのアイギスの盾を粉々に砕いた。

「くらえ! 佐藤さくらパンチ!」

佐藤さくらロボの必殺のパンチが守護女神アテーナーを攻める。

「ギャア!?」

パンチをくらった守護女神アテーナー遥か彼方まで飛ばされて星になって消え去った。

「やった! 勝った! 勝ったわ! 私、偉い! ホホホホホッ!」

女神に勝った佐藤は自画自賛で勝利の雄叫びをあげていた。

「やったな。さくら。」

佐藤さくらロボと守護女神アテーナーの戦いを見守っていた鈴木隊員は愛するさくらの勝利を喜んだ。

「どうですか!? 皆さん!? 地球防衛隊の新しいロボット! 佐藤さくらロボの実力は!?」

ハゲタヌ隊長が大勢のマスコミの前で佐藤さくらロボは地球防衛隊のロボットだよと自慢する。

「すごい女子高生だ!」

「これで地球の平和は守られますね!」

「パンツ丸見えでしたよ!」

各マスコミの記者から佐藤さくらロボを絶賛した。

「フフフッ! 可愛い女子高生が超合金デラックスロボになるという新型ヒロイン! 佐藤さくらロボは地球防衛隊の一員です!」

「おお!」

ハゲタヌ隊長はまるで自分が褒められているように誇らしく振る舞う。

「佐藤さくらロボの著作権や肖像権など権利関係は特許を得ています!」

「おお!」

ハゲタヌ隊長は元ははげたおっさんであるが、タヌキのぬいぐるみになっても仕事は早い、仕事ができる隊長だった。

「地球防衛隊は新兵器開発資金の獲得のために、佐藤さくらロボのグッツを販売します! 第1弾は超合金デラックス! 佐藤さくらロボのフィギアだ!」

「おお!」

ハゲタヌ隊長は地球を守るより商売の方が上手だった。キャラクターをイメージする時に読者ウケよりも、ぬいぐるみやカードにして売れるグッツになるかどうかを考えるハゲタヌ隊長は地球防衛隊の隊長失格かもしれない。



ハゲタヌ隊長が記者にリップサービスをしている頃の外。

「陸。」

「さくら。」

見つめ合う佐藤さくらと鈴木隊員。様々な誤解が解けて2人が以前のような平和な日常を取り戻すかに見えた。

「ロボから人間に戻り方が分からない!?」

佐藤さくらは巨大ロボットのままジタバタ暴れる。

「うわあ!? 暴れるな!? さくら!? 俺を踏み潰す気か!?」

鈴木は佐藤を心配するよりも、佐藤さくらロボに踏み潰されないように逃げるのに必死だった。

「さくら!? パンツ丸みだぞ!?」

ふと上を向いた鈴木は佐藤のスカートの中を見た。

「キャア! 陸の変態!? 死ね!?」

やっぱり鈴木陸は変態キャラのままでいこうと思う。

「ブギャア!?」

天罰が鈴木を襲い佐藤さくらロボに踏みつけられた。こうして地球の平和は守られた。

「おい!? いいかげん私を下ろしてくれ!?」

佐藤が巨大ロボットのままなので合体した最強の鳥ジズは可愛い女子高生の慈豆ちゃんに戻ることができないでいた。

「こら!? 佐藤ちゃん!? 私の声が聞こえないのか!?」

大物なのに知名度も存在感もない最強の鳥ジズの声は暴れている超合金デラックス! 佐藤さくらロボには聞こえていなかった。


つづく。

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