第4話 璃羽威亜紗
「おまえ、生物だな?」
地球防衛隊の隊員、鈴木陸は大好きな佐藤さくらを守るため・・・いや地球の平和を守るために戦い続ける。
「誰だ!?」
そして鈴木の目の前に・・・海面から竜のような顔と尻尾を出してフリフリして楽しそうな生物と言われる者がいる。自分が生物と言い当てられて戸惑い驚いている。
「知る必要はない。」
鈴木は冷静に生命体の問いかけに答えることはしなかった。そしてショルダーホルスターから拳銃を取り出し右手で構え生物に向けて銃口を向ける。
「舐めるな!? 私は最強の生物・・・!?」
生物は高校生の自分を無視するような態度にイライラしながら自尊心から自己紹介をしようとする。
「興味ない。」
鈴木はバンっと拳銃の引き金を引いた。拳銃の銃弾が生物を目掛けて飛んで行く。
「ギャア!?」
銃弾が命中した生物は断末魔の叫びをあげて倒された。
「任務終了。佐藤さくらに危害を及ぼす者は生物でも許さない。」
鈴木は拳銃をホルスターに直すと、何事もなかったようにその場を去って行く。
翌日。
「おはよう、さくら!」
鈴木が学校に普通に登校していると、佐藤さくらを見つけたので声をかけた。
「・・・。」
佐藤は鈴木をチラッと見たが無視して学校へ向けて歩いて行く。
「おい!? さくら!?」
鈴木は無視する佐藤に再び声をかける。
「1度ならず2日連続! 変態! 近づくな!」
佐藤は足を止め鈴木の方へ振り返り、2日連続の体育館での歌劇団部の練習を覗いたことがばれた鈴木は、地球防衛隊の隊員ではなく、変態としての地位を確立した。
「だ、誰が変態だ!? 俺は無実だ!? 俺だってケガをしたんだぞ!?」
見苦しい言い訳をする鈴木。
「どこにケガがあるのよ?」
佐藤は鈴木の生命維持装置できれいに回復した体を見回して疑っている。
「違う!? 俺はおまえを守るために!?」
鈴木は佐藤の誤解を解こうと必死だった。
「もう、そんな言葉には騙されないわよ!」
佐藤は自分を守るために体育館にいたと聞いて、イラっとする。
「鈴木さんの変態!」
そこに女子高生になった美歌恵流と瑠詩富亜が仲良く現れる。
「ミカエル!? そっちの小さくて可愛いのは誰?」
鈴木はいきなりの大天使ミカエルの登場に驚く。
「は~い! 私は大悪魔のルシファーでしたが、なぜか女子高生になってしまいました。エヘッ。」
大悪魔のルシファーは自己紹介をする。
「まさか!? 俺が昨日撃ち殺した大悪魔か!?」
鈴木が撃ち殺した異物は女子高生に生まれ変わるのだった。
「あなた悪魔だったの!?」
美歌恵流は瑠詩富亜が悪魔と知り驚く。
「は~い! 美歌恵流先輩。可愛い瑠詩富亜は元大悪魔で~す!」
瑠詩富亜に自分が悪魔という自覚は無かった。現在社会は人間と天使と悪魔が仲良く暮らすユートピアであった。
「さあ! 佐藤さん! 変態の鈴木は置いといて、仲良く3人で登校しましょう!」
「そうね! 変態とは関わり合いたくないわ!」
こうして佐藤、美歌恵流、瑠詩富亜は学校に登校して行く。
「ベー。」
「ベー。」
美歌恵流と瑠詩富亜は後ろを振り返り鈴木にあっかんべをするのだった。
「クソッ!?」
こうして鈴木は佐藤に誤解されたままだった。
「アホ。」
学校に登校していく刃覇夢徒にもバカにされる。
学校で普通に授業が行われている。
「ピピピ!」
突然、学校に警報が鳴り響く。
「異物だ!? 異物が現れたんだ!?」
この世界は現代世界を現代ファンタジー世界として、人間と天使と悪魔とモンスター、神なんかが共存する世界である。人間は人間以外のものを異物という差別的な呼び方で呼んだ。
「あれは最強の生物!?」
窓から外を見た生徒が異物を見て驚いた。目に映った異物は最強の生命体リヴァイアサンだったからだ。
「正義の味方が現れるぞ!?」
そして人類は平和を維持するために異物と戦う地球防衛隊を創設した。
「ロボットだ!? ロボットが飛んできたぞ!?」
どこからか人型ロボットが空を飛んでやって来た。地球防衛隊が対異物用に開発した地球防衛隊ロボである。略して地ロボ。
「地ロボとリヴァイアサンの対決だ!?」
地ロボがリヴァイアサンの行く手を遮るように着地した。学校の生徒たちは窓から身を乗り出し、または屋上から世紀の対決を見学していた。
「ガー!」
リヴァイアサンが炎を吐いた。一瞬で地ロボの上半身は炎で溶けた。
「キャア!? 地ロボが負けた!?」
「うわあ!? もう地球は終わりだ!?」
生徒たちの歓声は悲鳴に変わる。このまま地球は最強の生物リヴァイアサンに侵略されてしまうのだろうか!?
教室。
今時の高校生たちがうるさく騒いでいる中。鈴木陸はイスに座って、最強の生物リヴァイアサンに驚いていた。
「そんなバカな!? リヴァイアサンは俺が倒したはず!?」
確かに鈴木隊員はリヴァイアサンを撃ち殺していたかに見えたが、しかしリヴァイアサンは逃げ延びて生きていたのだった。
「佐藤さん! 地球の終わりを見に行きましょう!」
美歌恵流は佐藤さくらに声をかけた。
「屋上に見に行こう!」
佐藤は女子高生らしく興味深々である。
「わ~い! リヴァイアサンだ!」
佐藤は美歌恵流と瑠詩富亜は屋上にリヴァイアサンを見物に行った。
「ニヤッ。」
悪だくみをしている美歌恵流はニヤッと笑うのであった。
「おはよう、鈴木隊員。最強の生物リヴァイアサンが死んでいないのは、1話で新キャラクター2人登場を回避する苦肉の策だ。増えすぎると手に負えないからな。」
鈴木の机の上に手の平サイズのタヌキのぬいぐるみがいきなり現れる。
「何か用か? このハゲータヌキのぬいぐるみ隊長。」
鈴木はタヌキのぬいぐるみの登場にも微動だにしていない。それどころかタヌキ汁にして食べようかと思うぐらい冷静だった。
「誰がハゲだ!? 誰が!?」
はげタヌキのぬいぐるみ隊長は元々は地球防衛隊の隊長であったが、タヌキのぬいぐるみの方がハゲ隊長より可愛いので、ハゲタヌキのぬいぐるみ隊長の方が採用された。
「ハゲタヌキ、ハゲタヌキ、ハゲタヌキ。」
鈴木隊員が手拍子をする。
「ほい、ほい、いつもより多めにハゲています。」
ハゲタヌキ隊長は喜んで舞い踊った。
「やっぱりハゲタヌキではないか。」
鈴木隊員に反省の色は見えなかった。
「な、なんだと!? 口の聞き方に気をつけろ!? 私は隊長だぞ!?」
激怒しているタヌキのぬいぐるみ。
「そうですね。ハゲタヌキ隊長。」
鈴木はタヌキのぬいぐるみ隊長の顔を力いっぱい掴む。
「ギャア!? やめろ!? こんなことをしていていいのか!? ミカエルは佐藤さくらをリヴァイアサンの生贄にするつもりだぞ!?」
顔を掴まれて苦しいタヌキのぬいぐるみ隊長、佐藤の身に危険が迫っているというのだ。
「なんだって!? さくらが危ない!?」
地球防衛隊の隊員、鈴木は地球の平和を守ることより、佐藤さくらを守ることを優先する。
「ギャア!?」
鈴木はハゲタヌキ隊長を放り投げて、佐藤のいる屋上を目指して駆けていった。
「バン!」
タヌキのぬいぐるみ隊長は放り投げられ壁に当たって、体内の爆弾に強い衝撃が加わり爆発した。
屋上。
「うわあ!? すごい!? 大きなリヴァイアサン!?」
佐藤は屋上から異物を楽しそうに見学している。
「ガー!」
最強の生物リヴァイアサンは街を破壊しながら学校に向かってくる。
「地球防衛隊は何をやっているんだ!?」
街の人はリヴァイアサンに街が破壊されているのに助けに来ない、また助けに来ても地ロボみたいに簡単に倒される地球防衛隊に幻滅してイライラしていた。
(佐藤さくら! おまえをリヴァイアサンに捧げて、この大天使ミカエルがヒロインの座を奪うのだ! ワッハッハー!)
これが美歌恵流の本心だった。佐藤さくら、人生最大のピンチを迎える。
「ねえねえ知ってる? リヴァイアサンと七つの大罪の嫉妬を司る悪魔レヴィアタンと同じなんだって。」
佐藤は天真爛漫に笑顔でリヴァイアサンを悪意なく純粋な心で美歌恵流に紹介する。佐藤さくらに悪気はないので、誰からも好かれている。
「へ~え。そうなんですね、佐藤先輩は物知りさんなんですね。」
瑠詩富亜は誰にでも先輩とつけて下手に出る可愛い子悪魔だった。
「プチ! ガー!!!」
佐藤の声が聞こえたのか、リヴァイアサンが激怒して雄叫びをあげて、学校の屋上にいる佐藤を目掛けて猛スピードで突進してくる。
「キャア!? リヴァイアサンがこっちに向かってやって来る!? カッコイイ!」
のんきに佐藤はリヴァイアサンの突進をカッコイイと目をハートにして眺めていた。
「ガー!」
最強の生物リヴァイアサンは佐藤を目掛けて校門の所まで来た。佐藤は絶体絶命のピンチだった。
「地球の平和はどうでもいい。」
その時、屋上の上に鈴木隊員が現れる。
「ゲゲ!? 鈴木くん!?」
美歌恵流は計画を邪魔されると感じた。
「いったいどこから!?」
瑠詩富亜は鈴木が突然現れたのに驚く。鈴木はショルダーホルスターから拳銃を取り出し右手で構え最強の生物リヴァイアサンに向けて銃口を向ける。
「俺が守りたい者は、さくらだけだ!」
拳銃の銃口から弾丸が撃たれる。弾丸はリヴァイアサンに向かって飛んで行く。
「ギャア!?」
最強の生物リヴァイアサンに弾丸は命中した。リヴァイアサンは断末魔の叫び声をあげて地面に倒れ込む。
「ああ!? 最強の生物リヴァイアサンが!? クソッ!?」
美歌恵流は佐藤さくら暗殺計画が失敗して悔しがる。
「フッ、俺のさくらへの愛は地球を救うのだ。」
銃口から出る煙を息で吹き飛ばし、ホルスターに拳銃をしまう。
「陸!」
佐藤が鈴木に声をかけてくる。
「さくら、無事か? 異物は俺が倒したぞ。」
鈴木は最強の獣ベヒモスから佐藤を守ることができたので、佐藤と仲直りできると思った。
「陸のバカ! どうしてリヴァイアサンさんを倒すの!? あんなに可愛いのに!?」
佐藤は人と違った好みをしていた。
「え!?」
鈴木は殺されそうだった佐藤を救ったのに、褒められるどころか、逆に怒られた。
「やっぱり陸なんか変態よ! 変態! 変態!」
佐藤は鈴木に怒って去っていた。
「行きましょう! 佐藤さん! ベー!」
美歌恵流は鈴木にあっかんべをして去って行った。
「ベー!」
瑠詩富亜もあっかんべをして去って行く。
「お~い!? さくらさん!?」
鈴木は異物に勝ち、佐藤に負けるのだった。こうして地球の平和は守られた。
「バカばっか。」
屋上で授業をサボって寝転がっていた刃覇夢徒は呆れている。
教室。
「いきなりだが転校生を紹介する。」
最強の生物リヴァイアサンと地球防衛隊の戦いで中断した授業が始まろうとしていたら、担任の先生が転校生がいると言い始めた。
「またまた転校生!?」
クラスの生徒が転校生に期待と不安でザワザワする。
「転校生の辺陽藻栖です。みんな、よろしく。」
ぽっちゃりグラマラスの美人だった。
「キャ! 辺陽藻栖様!」
クラスの男子は美しい転校生に喜んだ。
「何が辺陽藻栖よ!? 男子ったら顔がきれいなら何でもいのね!?」
佐藤は美人の転校生にデレデレ鼻の下を伸ばしているクラスの男子を軽蔑した。そして気になったのか、チラッと鈴木の様子を見る。
「な、なんで、あいつが!?」
鈴木は転校生の辺陽藻栖に驚いていた。
「昨日、倒したはずなのに!?」
そう辺陽藻栖は昨日、屋上で撃ち殺したはずだった。
「ん? 陸は相変わらず美人には変な反応をするのね?」
佐藤は鈴木がなぜ驚愕しているのか理由を知らなかった。
「どういうことだ!? 昨日、確実に撃ち殺したはずなのに!?」
最強の獣ベヒモスが生きていたことが理解できないで戸惑っている鈴木。
「鈴木隊員、いい加減、気づけよ。」
その時、爆発したはずのタヌキのぬいぐるみ隊長が鈴木の机の上に再び姿を現した。
「さっき爆破したはずなのに!?」
鈴木はハゲタヌキ隊長の登場に驚く。
「なんてったって私は隊長だからな! ワッハッハー!」
得意げに笑うタヌキのぬいぐるみ隊長。
「ギャア!?」
鈴木はタヌキのぬいぐるみ隊長の頭を手で鷲掴みにして持ち上げる。
「このままでは俺が倒した異物は、全て可愛い女子高生になってしまうじゃないか!? なんとかしろ!? 隊長なんだろう!?」
鈴木はタヌキのぬいぐるみ隊長が説明するように脅す。
「く、苦しい!? は、はい。話します。」
ハゲタヌキ隊長は、鈴木隊員の現状を話し始める。
「鈴木隊員の拳銃の弾丸は地球の平和を守るという心を撃ち込む対異物一撃撃滅弾の・・・はずだった。」
ちなみに異物とは神、天使、悪魔、怪獣などの異世界の者の意味である。地球防衛隊の隊員の撃つ弾丸は、弾丸を撃つ地球防衛隊の隊員の心が反映されるのだった。
「しかし元の佐藤さくら命という心と地球の平和を守るという心が混在している不安定な鈴木隊員の撃つ弾丸は、異物を女子高校生に変えてしまうという特異な弾丸を発射してしまうのだ! ワッハッハー!」
ハゲタヌキ隊長の高笑いは止まらなかった。
「それは分かっている! 対処法を話せ!」
鈴木はハゲタヌキ隊長にイライラした。
「鈴木隊員が撃った異物は可愛い女子高生に生まれ変わり、転校生として学校にやって来て、ヒロインの座をかけて、佐藤さくらを狙うのだ! 次にリヴァイアサンも転校生としてやってくるだろう。残念だが、どうすることもできない。ちなみに、このタヌキのぬいぐるみは3秒後に爆発する。バン!」
ハゲタヌキ隊長は用事が済んだら自爆する。
「ゲフッ!?」
例の如く、鈴木は真っ黒焦げになった。
(見つけたぞ! 佐藤さくら! おまえを倒す!)
転校生の辺陽藻栖は、最強の獣ベヒモスであり、なぜか狙いは佐藤さくらだった。
ということは・・・。
「んん・・・ここは・・・どこだ?」
校門で不自然に水が似合いそうな華奢な女子高生が倒れていて、目覚めた。
「私の名前は・・・璃羽威亜紗。」
そう地球防衛隊の鈴木隊員の拳銃の弾丸で撃たれた異物は女子高生になってしまうのだった。
「私は確かに地球防衛隊に殺されたはず!? なぜ生きているんだ!? なぜ制服を着ているんだ!? は!? まさか!? これが輪廻転生というやつか!? それなら私は女子高生として、高校に行かなければ!」
こうして最強の生物リヴァイアサンは女子高生、璃羽威亜紗としてハイスクールライフを楽しむために学校に入っていくことになる。
放課後。
「さくら。」
佐藤は鈴木と口を利かなかった。鈴木がリヴァイアサンを倒したことをとても怒っているのだった。口うるさい美歌恵流と瑠詩富亜が佐藤から離れて声をかけるチャンスだった。
「・・・。」
校門で佐藤が来るのを鈴木は待ち伏せしていた。佐藤は鈴木を認識するも無視して歩いて帰ろうとする。
「待てよ、さくら。」
鈴木は佐藤の進路に体を入れて、佐藤の進路を邪魔する。佐藤は立ち止まる。
「どいて!」
佐藤は怒っていた。
「まだ怒っているのかよ!? いい加減、機嫌を直せよ!?」
鈴木はフォローする。
「あなた誰?」
佐藤は確信に踏み出す。
「え!?」
鈴木はドキっと動きを止める。
「陸は自分に自信がなくて、歯磨きすらできない様な男よ!? それが巨大なリヴァイアサンにピストルの弾を撃ち込んで倒すとか、絶対にあり得ないんですけど!?」
佐藤は鈴木のことをよく知っている。学校でもトップクラスの人気を誇る佐藤だが、なぜか普通で冴えない鈴木といつも一緒にいた。
(元々の俺は歯磨きすらできない情けない奴なのか!?)
鈴木は元々の自分を思って泣いた。
「あなたはいったい誰なの!?」
佐藤は目の前の鈴木に指を指し詰め寄る。
「俺は地球の平和を・・・んん!? なんだ!?」
鈴木は佐藤に自分は地球防衛隊の隊員として地球を守るために半人半ロボとして生まれ変わったと言おうとした。すると鈴木の心の奥底から温かい気持ちが湧いてくる。
「僕がさくらを守る。」
鈴木は元の自分の心が、俺様の鈴木隊員の心に打ち勝ち、表に自分に自信のない鈴木陸の心が出てくる。
「り、陸!?」
佐藤も鈴木の中に、もう一人の鈴木を感じる。自分の知っている鈴木陸を感じる。
「さくら。」
「陸。」
佐藤と鈴木の2人の距離が良い具合に近づいていく。このままでは自然とキスしてしまう。
「ちょっと待った!」
その時、転校生の辺陽藻栖が現れ、いい所で邪魔をする。
「ベヒモス!?」
鈴木は最強の獣ベヒモスが現れて驚く。
「さくらちゃん、部活の時間よ。」
怒涛の勢いで辺陽藻栖が迫って来て、佐藤の腕を掴む。
「キャア!?」
あっという間に佐藤を鈴木から引き離し、引きずったまま何処に去って行く。
「さくら!?」
鈴木は連れていかれようとする佐藤を止めようとする。
「ボヨン!」
辺陽藻栖の豊満な胸が弾む。
「おお!? 揺れている!? は!? しまった!? さくら!!!」
鈴木は最強の獣ベヒモスが女子高生になった姿の辺陽藻栖の凄まじい巨乳の揺れに目を奪われ、去って行く佐藤を見守ることしかできなかった。
放課後の体育館。
「さくらちゃん、男なんて女の体が目当てなんだから、やめておきなさい!」
辺陽藻栖は男なんてゴミよと佐藤を諭す。
「べ、別に男なんて興味ないわよ!? 陸とはいつも一緒にいるだけよ!?」
佐藤は照れながら不純異性交遊はしていないと否定する。
「さくらちゃん、あなたは樹理絵なんだから、清く正しく勇ましくよ。」
辺陽藻栖は佐藤を部活のやっている体育館に連れて行く。そして体育館の扉が開く。
「あなたは歌と演劇に生きるのよ!」
体育館の中には電飾煌びやかな大階段。男装した女子高生。バニーガール衣装でラインダンスをする1年生たち。歌劇団部の部員は女性しか入部できなかった。
「もうマンネリなアイドル、軽音、吹奏楽に変わる新しい部活動! さくらちゃん! あなたが歌劇団部を引っ張っていくのよ!」
辺陽藻栖は佐藤に歌劇団部の未来を託していた。
「別にそのために歌劇団部は体育館からバレー部やバスケ部を追い出した訳ではないのよ!」
決して辺陽藻栖が最強の獣の力を乱用して、他の体育館を利用する部活動を追い出した訳ではない。
「辺陽は確か転校生のはずよね? なんで、そんなに学校のことに詳しいのよ?」
佐藤は辺陽藻栖に素朴な疑問をぶつける。
「辺陽、わかんない。」
なぜ詳しいのかは辺陽藻栖も分からなかった。
その頃、高校の寮の前。
「んん? 転校生かしら?」
美歌恵流は自分が1人暮らしをしている高校の寮、その名も異物寮に帰って来た。
「あの異物が女子高生になって暮らす高校の寮は、ここでいいんですか?」
華奢な可愛い転校生がいた。
「そうよ。あなた転校生?」
美歌恵流は尋ねた。
「はい。私は璃羽威亜紗と申します。よろしくお願い致します。」
転校生の名前は璃羽威亜紗だった。
「私も同じ1年の美歌恵流よ。仲良くやりましょう。」
先輩と呼ばれても1日早いだけであるが美歌恵流は上機嫌だった。
「はい、美歌恵流さん。」
新たな転校生の璃羽威亜紗は礼儀正しい性格だった。
「まあ!? 何て礼儀正しいの!? なんでも私に言ってごらんなさい! 大天使のプライドにかけて願いを叶えてあげるわよ!」
美歌恵流の天使の血が騒いでいく。
「ありがとうございます。ゴホゴホ。私、体が弱いもので・・・。」
璃羽威亜紗は華奢で病弱な可愛い女子高生だった。
「大丈夫!? 璃羽威!? 荷物ぐらい私が部屋まで運んであげる!」
親切な美歌恵流は璃羽威亜紗の荷物を運んであげようとする。
「ありがとうございます。美歌恵流さんはいい人なんですね。」
璃羽威亜紗は美歌恵流に感謝した。
「これでも元大天使ですから!」
大天使ミカエルの美歌恵流は女子高生になっても大天使だった。
体育館の歌劇団部の部活中。
「全員集合!」
その時だった。3年生の夜露死苦部長が全員に声をかける。佐藤と辺陽藻栖も部長の元に集まる。
「キャー! 夜露死苦部長カッコイイ!」
佐藤と辺陽藻栖は先輩の大ファンだった。
「次回の歌劇団部はスーパー銭湯で合宿を行う!」
夜露死苦先輩が歌劇団部の部員のレベルアップのために合宿をすると言う。
「キャ! 合宿! お泊りですか!? おやつは300円までですか!?」
佐藤と辺陽藻栖は合宿と聞いて興奮していた。
「みんな、静かに! 合宿は日帰りだ。18禁になるから水着は持ってこい!」
夜露死苦部長は書籍化、アニメ化の規制のことまで考えている。
「合宿! 合宿! 嬉しいな!」
佐藤や辺陽藻栖や歌劇団部の部員たちは大いに喜んだ。
「面倒臭い。」
刃覇夢徒は合宿を面倒臭がった。
「夜露死苦先輩。美歌恵流がいません。」
瑠詩富亜は美歌恵流が部活にいないことを夜露死苦部長にチクる。
「また美歌恵流がいない!? 部活をサボるとはいい度胸だ。あとでみっちりしごいてやる。」
美歌恵流は璃羽威亜紗の相手で時間を費やし部活動に来るのが遅れていた。
「さくらちゃん、がんばろうね。」
「辺陽、よろしくね。」
素晴らしき友情の佐藤と辺陽藻栖は演劇の稽古に精一杯打ち込むのだった。
「どうしてベヒモスがさくらと仲良しなんだ!? 例え何があっても、さくらは俺が守る。」
歌劇団部の様子を体育館の2階から覗いていた鈴木陸は、佐藤さくらに及ぶ全ての害を取り除くことを決心する。それは相手が神でも天使でも悪魔でも怪物でもである。
「最強の獣ベヒモス・・・なぜさくらに近づく!?」
この物語は、紆余曲折しながらも地球防衛隊の隊員の鈴木陸が地球よりも大好きな佐藤さくらを異物の魔の手から守るという学園物語である。
「あ!? 2階に誰かいる!?」
「覗き魔ね!? 盗撮しているかもしれないわ!?」
「痴漢よ!? 痴漢!?」
「鈴木よ!? 変態は鈴木に決まっているわ!?」
歌劇団部が体育館を使用する時は男子は進入禁止なのだ。歌劇団部は金属バットや鉄アレイに刃物を持って2階に続く階段を登っていく。
「え!? 俺は変態じゃない!? やめろ!? ゲフッ!?」
こうして痴漢をボコボコにした歌劇団は体育館の平和を守った。
地球防衛隊の本部。
「た、助けてくれ・・・。」
血まみれの鈴木隊員が地球防衛隊の本部に傷だらけの姿で助けを求めてフラフラでやって来る。
「鈴木隊員!? どうした!? 誰にやられたんだ!?」
地球防衛隊の隊長のハゲタヌキが傷だらけの鈴木を介抱する。
「さ、さ、さくら・・・。い、い、異物・・・。」
バタっと鈴木は力尽きて意識を失って倒れた。
「鈴木隊員!? そうか!? 地球の平和を守るために激しい戦いを繰り広げたに違いない!? こんな姿になるまで地球のために戦ったのか!? 鈴木隊員!? おまえって奴は!?」
正解は女子だけの歌劇団部を二階から除いていたので、歌劇団部の部員にボコボコにされたのである。もちろん金属バットを持った佐藤さくらとバハムートが女子高生になった刃覇夢徒の体育館の床を砕く渾身の一撃も含まれる。
「直ぐに生命維持装置に入れて回復させてやるからな!」
地球防衛隊の本部には生命維持装置があり、地球防衛隊の隊員が異物と戦い傷ついた体を瞬時に回復してくれるのだった。
そして鈴木は生命維持装置から出てくる。
「プハーッ! 生き返った!」
鈴木の傷は癒え体力も全快した。
「おお! 鈴木隊員、元気になったか?」
地球防衛隊の隊長が鈴木の全快を祝う。
「隊長ありがとうございます。今回は隊長の正式名称を発表しようと思います。」
地球防衛隊の隊長の血塗られた名前の歴史に終止符が打たれようとしていた。
「なに!? ついに私の名前が決まるだと!?」
そう地球防衛隊のおっさん隊長はハゲていたために、可愛いタヌキのぬいぐるみ隊長に魂を入れ替えられていた。
「発表します! 隊長の正式名称は・・・ハゲタヌ隊長です!」
鈴木隊員が隊長の正式名称を発表する。もちろんインパクトのハゲは外せない。
「ハゲタヌ!? 何ていい響きなんだ!? やっと名前が決まった・・・こんなに嬉しいことはない!?」
ハゲタヌ隊長はタヌキのぬいぐるみ姿でとても喜んでいた。
「ハゲタヌ隊長! これからも地球の平和とさくらを守っていきましょう!」
鈴木隊員は少し地球防衛隊の隊員としての自覚が芽生えてきた。
「おお! 我々は地球防衛隊として、一緒に地球の平和を守るんだ! アチチチチッ!?」
ハゲタヌ隊長も隊長として地球の平和を守ると少し火傷するぐらい燃えていた。
体育館。
「ああ!? 呂美男様!? 呂美男様!? あなたはどうして呂美男様なの!?」
歌劇団部の部員たちの熱のこもった練習を繰り返していた。
「おお!? 樹理絵!? 君はどうして樹理絵なんだ!?」
1年生が行う新人公演に向けて、樹理絵役を佐藤さくらが、呂美男役を刃覇夢徒が迫真の演技を演じていた。
「がんばれ! そうだ! その調子だ!」
歌劇団部の部長の夜露死苦も熱心に応援している。
「9997!?」
体育館の隅で美歌恵流が汗を流しながら腕立て伏せをさせられていた。部活動の時間に遅刻した罰であった。
「あと三回ですよ! がんばってください! 美歌恵流先輩!」
遅刻の原因の瑠詩富亜も歌劇団部の部活動を見学に来ていた。
「9998!? 可愛い後輩が見ているんだ!? 負ける訳にはいかない!?」
美歌恵流は瑠詩富亜が見ているので途中でくじける訳には行かないと思って頑張っていた。
「あと二回ですよ! 美歌恵流先輩ファイト!」
瑠詩富亜は一生懸命に美歌恵流を応援している。
「9999!?」
美歌恵流は根性だけで一万回の罰を成し遂げようとしていた。
「キャ! 夜露死苦部長だ! カッコイイ!」
その時、瑠詩富亜は歌劇団部のトップスター夜露死苦部長を見てしまい、美歌恵流を捨てて夜露死苦部長の元に走っていく。
「10000!? やった!? やり遂げたぞ!?」
バタっと美歌恵流は達成感に包まれながら笑顔のまま気を失い倒れ込んだ。しかし美歌恵流の偉業達成の瞬間は誰も見ていなかった。
「呂美男様、私と一緒に逃げてください! 誰も知らない所へ!」
「樹理絵、君が望むなら私は家を捨てよう。」
「ああ! 愛しの呂美男様!」
「私の樹理絵よ!」
佐藤さくらと刃覇夢徒が愛を誓い抱きしめ合いながら緞帳が降りてくる。2人の息はピッタリだった。
「いいぞ! いいぞ!」
夜露死苦部長も佐藤と刃覇夢徒のお芝居に感動していた。
「キャ! 素敵!」
瑠詩富亜も2人のお芝居に心を奪われていた。パチパチと歌劇団部の全員から大きな拍手をもらいながら完全に緞帳が降り切った。
「・・・私がヒロインよ。」
美歌恵流だけ体育館の片隅で寝言を言っていた。
つづく
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