第3話 地球防衛隊の隊長の最後
「おまえ、悪魔だな?」
地球防衛隊の隊員、鈴木陸は大好きな佐藤さくらを守るため・・・いや地球の平和を守るために戦い続ける。
「誰だ!?」
そして鈴木の目の前に・・・頭に黒い丸い輪っかを付けて、背中に黒い羽を背負っている悪魔と言われる者がいる。自分が悪魔と言い当てられて戸惑い驚いている。
「知る必要はない。」
鈴木は冷静に悪魔の問いかけに答えることはしなかった。そしてショルダーホルスターから拳銃を取り出し右手で構え悪魔に向けて銃口を向ける。
「舐めるな!? 私は大悪魔・・・!?」
悪魔は高校生の自分を無視するような態度にイライラしながら自尊心から自己紹介をしようとする。
「興味ない。」
鈴木はバンっと拳銃の引き金を引いた。拳銃の銃弾が悪魔を目掛けて飛んで行く。
「ギャア!?」
銃弾が命中した悪魔は断末魔の叫びをあげて倒された。
「任務終了。佐藤さくらに危害を及ぼす者は悪魔でも許さない。」
鈴木は拳銃をホルスターに直すと、何事もなかったようにその場を去って行く。
翌日。
「おはよう、さくら!」
鈴木が学校に普通に登校していると、佐藤さくらを見つけたので声をかけた。
「・・・。」
佐藤は鈴木をチラッと見たが無視して学校へ向けて歩いて行く。
「おい!? さくら!?」
鈴木は無視する佐藤に再び声をかける。
「変態! 近づくな!」
佐藤は足を止め鈴木の方へ振り返り、昨日の体育館での歌劇団部の練習を覗いたことがばれた鈴木は、地球防衛隊の隊員ではなく、変態としての地位を確立した。
「だ、誰が変態だ!? 俺は無実だ!?」
見苦しい言い訳をする鈴木。
「陸が見たいと言ってくれれば、私が脱いで見せてあげたのに・・・。」
佐藤も鈴木の覗きにショックを受けている。
「違う!? 俺はおまえを守るために!?」
鈴木は佐藤の誤解を解こうと必死だった。
「え? 私のため!?」
佐藤は自分を守るために体育館にいたと聞いて、少しドキっとしてしまう。
「黙れ変態!」
佐藤と鈴木の誤解が解けそうな雰囲気が出始めた時、そこに女子高生の美歌恵流が得意げな顔をしながら現れる。
「ミカエル!?」
鈴木はいきなりの大天使ミカエルの登場に驚く。ミカエルこそ佐藤を駅のホームから突き落として殺そうとした張本人だったからだ。
「騙されちゃダメよ! 佐藤さん大丈夫!? 変態に変なことされなかった!?」
美歌恵流はあからさまに佐藤の心配をする。
「大丈夫よ、美歌。私のことを心配してくれるのは、あなただけよ!」
佐藤と美歌恵流は互いの友情を抱きしめ合った。
「ベー。」
抱きしめ合う佐藤と美歌恵流。美歌恵流は佐藤の背中越しに鈴木に舌を出して、ざまあみろとサインを送る。
「クソッ!?」
こうして鈴木は佐藤に誤解されたまま、学校に登校して行った。
学校で普通に授業が行われている。
「ピピピ!」
突然、学校に警報が鳴り響く。
「異物だ!? 異物が現れたんだ!?」
この世界は現代世界を現代ファンタジー世界として、人間と天使と悪魔とモンスター、神なんかが共存する世界である。人間は人間以外のものを異物という差別的な呼び方で呼んだ。
「あれは最強の獣ベヒモスだ!?」
窓から外を見た生徒が異物を見て驚いた。目に映った異物は最強の獣ベヒモスだったからだ。
「正義の味方が現れるぞ!?」
そして人類は平和を維持するために異物と戦う地球防衛隊を創設した。
「ロボットだ!? ロボットが飛んできたぞ!?」
どこからか人型ロボットが空を飛んでやって来た。地球防衛隊が対異物用に開発した地球防衛隊ロボである。略して地ロボ。
「地ロボとベヒモスの対決だ!?」
地ロボがベヒモスの行く手を遮るように着地した。学校の生徒たちは窓から身を乗り出し、または屋上から世紀の対決を見学していた。
「ガー!」
ベヒモスが炎を吐いた。一瞬で地ロボの上半身は炎で溶けた。
「キャア!? 地ロボが負けた!?」
「うわあ!? もう地球は終わりだ!?」
生徒たちの歓声は悲鳴に変わる。このまま地球は最強の獣ベヒモスに侵略されてしまうのだろうか!?
教室。
今時の高校生たちがうるさく騒いでいる中。鈴木陸はイスに座って退屈そうだった。地ロボにも、最強の獣ベヒモスにも関心がなかった。
「佐藤さん! 地球の終わりを見に行きましょう!」
美歌恵流は佐藤さくらに声をかけた。
「屋上に見に行こう!」
佐藤は女子高生らしく興味深々である。佐藤は美歌恵流と屋上にベヒモスを見物に行った。
「ニヤッ。」
悪だくみをしている美歌恵流はニヤッと笑うのであった。
「おはよう、鈴木隊員。」
鈴木の机の上に手の平サイズのタヌキのぬいぐるみがいきなり現れる。
「何か用か? タヌキのぬいぐるみ隊長。」
鈴木はタヌキのぬいぐるみの登場にも微動だにしていない。それどころかタヌキ汁にして食べようかと思うぐらい冷静だった。
「長い!? タヌキのぬいぐるみ隊長では長過ぎる!? もっとタヌポンとかタヌタヌとか、人気が出そうな愛称で隊長を呼ぼうという気持ちはないのか!? 」
タヌキのぬいぐるみ隊長は可愛げのない鈴木の態度を叱った。
「ない。この自爆タヌキ野郎。」
鈴木はあくまでも冷静だった。
「な、なんだと!? 口の聞き方に気をつけろ!? 私は隊長だぞ!?」
激怒しているタヌキのぬいぐるみ。
「自爆タヌキ隊長。」
鈴木はタヌキのぬいぐるみ隊長の顔を力いっぱい掴む。
「ギャア!? やめろ!? こんなことをしていていいのか!? ミカエルは佐藤さくらをベヒモスの生贄にするつもりだぞ!?」
顔を掴まれて苦しいタヌキのぬいぐるみ隊長、佐藤の身に危険が迫っているというのだ。
「なんだって!? さくらが危ない!?」
地球防衛隊の隊員、鈴木は地球の平和を守ることより、佐藤さくらを守ることを優先する。
「ギャア!?」
鈴木はタヌキの自爆機能付きぬいぐるみ隊長を放り投げて、佐藤のいる屋上を目指して駆けていった。
「バン!」
タヌキのぬいぐるみ隊長は放り投げられ壁に当たって、体内の爆弾に強い衝撃が加わり爆発した。
屋上。
「うわあ!? すごい!? 大きなベヒモス!?」
佐藤は屋上から異物を楽しそうに見学している。
「ガー!」
最強の獣ベヒモスは街を破壊しながら学校に向かってくる。
「地球防衛隊は何をやっているんだ!?」
街の人はベヒモスに街が破壊されているのに助けに来ない、また助けに来ても地ロボみたいに簡単に倒される地球防衛隊に幻滅してイライラしていた。
(佐藤さくら! おまえをベヒモスに捧げて、この大天使ミカエルがヒロインの座を奪うのだ! ワッハッハー!)
これが美歌恵流の本心だった。佐藤さくら、人生最大のピンチを迎える。
「ねえねえ知ってる? ベヒモスて元は牛かカバの一種だったんだって!? 最強の竜バハムートと同一視されてたんだって!?」
佐藤は天真爛漫に笑顔でベヒモスを悪意なく純粋な心で美歌恵流に紹介する。佐藤さくらに悪気はないので、誰からも好かれている。
「プチ! ガー!!!」
佐藤の声が聞こえたのか、ベヒモスが激怒して雄叫びをあげて、学校の屋上にいる佐藤を目掛けて猛スピードで突進してくる。
「キャア!? ベヒモスがこっちに向かってやって来る!? カッコイイ!」
のんきに佐藤はベヒモスの突進をカッコイイと目をハートにして眺めていた。
「ガー!」
最強の獣ベヒモスは佐藤を目掛けて校門の所まで来た。佐藤は絶体絶命のピンチだった。
「地球の平和はどうでもいい。」
その時、屋上の上に鈴木が現れる。
「ゲゲ!? 鈴木くん!?」
美歌恵流は計画を邪魔されると感じた。
そしてショルダーホルスターから拳銃を取り出し右手で構え最強の獣ベヒモスに向けて銃口を向ける。
「俺が守りたい者は、さくらだけだ!」
拳銃の銃口から弾丸が撃たれる。弾丸はベヒモスに向かって飛んで行く。
「ギャア!?」
最強の獣ベヒモスに弾丸は命中した。ベヒモスは断末魔の叫び声をあげて地面に倒れ込む。
「ああ!? 最強の獣ベヒモスが!? クソッ!?」
美歌恵流は佐藤さくら暗殺計画が失敗して悔しがる。
「フッ、俺のさくらへの愛は地球を救うのだ。」
銃口から出る煙を息で吹き飛ばし、ホルスターに拳銃をしまう。
「陸!」
佐藤が鈴木に声をかけてくる。
「さくら、無事か? 異物は俺が倒したぞ。」
鈴木は最強の獣ベヒモスから佐藤を守ることができたので、佐藤と仲直りできると思った。
「陸のバカ! どうしてベヒモスさんを倒すの!? あんなに可愛いのに!?」
佐藤は人と違った好みをしていた。
「え!?」
鈴木は殺されそうだった佐藤を救ったのに、褒められるどころか、逆に怒られた。
「陸なんか友達じゃないわ! 絶交よ! 絶交!」
佐藤は鈴木に怒って去っていた。
「行きましょう! 佐藤さん! ベー!」
美歌恵流は鈴木にあっかんべをして去って行った。
「お~い!? さくらさん!?」
鈴木は異物に勝ち、佐藤に負けるのだった。こうして地球の平和は守られた。
教室。
「いきなりだが転校生を紹介する。」
最強の獣ベヒモスと地球防衛隊の戦いで中断した授業が始まろうとしていたら、担任の先生が転校生がいると言い始めた。
「また転校生!?」
クラスの生徒が転校生に期待と不安でザワザワする。
「転校生の刃覇夢徒です。みんな、よろしく。」
色黒黒髪のなかなかの美人だった。
「キャ! 刃覇夢徒様!」
クラスの男子は美しい転校生に喜んだ。
「何が美歌恵流よ!? 男子ったら顔がきれいなら何でもいのね!?」
佐藤は美人の転校生にデレデレ鼻の下を伸ばしているクラスの男子を軽蔑した。そして気になったのか、チラッと鈴木の様子を見る。
「な、なんで、あいつが!?」
鈴木は転校生の刃覇夢徒に驚いていた。
「昨日、倒したはずなのに!?」
そう刃覇夢徒は昨日、屋上で撃ち殺したはずだった。
「ん? 陸は美人には変な反応をするのね?」
佐藤は鈴木がなぜ驚愕しているのか理由を知らなかった。
「どういうことだ!? 昨日、確実に撃ち殺したはずなのに!?」
最強の竜バハムートが生きていたことが理解できないで戸惑っている鈴木。
「鈴木隊員、いい加減、気づけよ。」
その時、爆発したはずのタヌキのぬいぐるみ隊長が鈴木の机の上に再び姿を現した。
「さっき爆破したはずなのに!?」
鈴木はタヌキの体内爆弾内蔵型ぬいぐるみ隊長の登場に驚く。
「タヌキのぬいぐるみなど、経費で落ちるので何体でもスペアは使えるのだ! ワッハッハー!」
得意げに笑うタヌキのぬいぐるみ隊長。
「ギャア!?」
鈴木はタヌキのぬいぐるみ隊長の頭を手で鷲掴みにして持ち上げる。
「なぜバハムートが生きている!? 気づけとはどういうことだ!? 説明してもらおうか? ええ!」
鈴木はタヌキのぬいぐるみ隊長が説明するように脅す。
「は、はい。話します。それは・・・。」
タヌキのぬいぐるみ隊長は、なぜバハムートが生きているのかを話し始める。
「鈴木隊員の拳銃の弾丸は地球の平和を守るという心を撃ち込む対異物一撃撃滅弾の・・・はずだった。」
ちなみに異物とは神、天使、悪魔、怪獣などの異世界の者の意味である。地球防衛隊の隊員の撃つ弾丸は、弾丸を撃つ地球防衛隊の隊員の心が反映されるのだった。
「しかし元の佐藤さくら命という心と地球の平和を守るという心が混在している不安定な鈴木隊員の撃つ弾丸は、異物を女子高校生に変えてしまうという特異な弾丸を発射してしまうのだ! ワッハッハー!」
タヌキのぬいぐるみ隊長の高笑いは止まらなかった。
「ということは!? まさか!?」
鈴木は良くない悪しき想像をした。
「そのまさかだ! 鈴木隊員が撃った異物は可愛い女子高生に生まれ変わり、転校生として学校にやって来て、ヒロインの座をかけて、佐藤さくらを狙うのだ!」
既に大天使ミカエルが美歌恵流として、今、最強の竜バハムートよが刃覇夢徒としてやってきた。それから大悪魔と最強の獣ベヒモスが可愛い女子高生として高校に転校生として現れることが確定している。新キャラクターはガチャでなく転校生としてやって来るのだった。
「おい、タヌキ。なんとかしろ!?」
鈴木はタヌキのぬいぐるみ隊長に命令する。
「残念だが、どうすることもできない。ちなみに、このタヌキのぬいぐるみは3秒後に爆発する。バン!」
タヌキのぬいぐるみ隊長は用事が済んだら自爆する。
「ゲフッ!?」
例の如く、鈴木は真っ黒焦げになった。
(見つけたぞ! 佐藤さくら! おまえを倒す!)
転校生の刃覇夢徒は、最強の竜バハムートであり、なぜか狙いは佐藤さくらだった。
ということは・・・。
「んん・・・ここは・・・どこだ?」
校門で不自然に少し太めの女子高生が倒れていて、目覚めた。
「私の名前は・・・辺陽藻栖。」
そう地球防衛隊の鈴木隊員の拳銃の弾丸で撃たれた異物は女子高生になってしまうのだった。
「私は確かに地球防衛隊に殺されたはず!? なぜ生きているんだ!? なぜ制服を着ているんだ!? は!? まさか!? これが輪廻転生というやつか!? それなら私は女子高生として、高校に行かなければ!」
こうして最強の獣ベヒモスは女子高生、辺陽藻栖としてハイスクールライフを楽しむために学校に入っていくことになる。
放課後。
「さくら。」
佐藤は鈴木と口を利かなかった。鈴木がベヒモスを倒したことをとても怒っているのだった。口うるさい美歌恵流が佐藤から離れて声をかけるチャンスだった。
「・・・。」
校門で佐藤が来るのを鈴木は待ち伏せしていた。佐藤は鈴木を認識するも無視して歩いて帰ろうとする。
「待てよ、さくら。」
鈴木は佐藤の進路に体を入れて、佐藤の進路を邪魔する。佐藤は立ち止まる。
「どいて!」
佐藤は怒っていた。
「まだ怒っているのかよ!? いい加減、機嫌を直せよ!?」
鈴木はフォローする。
「あなた誰?」
佐藤は確信に踏み出す。
「え!?」
鈴木はドキっと動きを止める。
「陸は自分に自信がなくて、桃缶すら開けれない様な男よ!? それが巨大なベヒモスにピストルの弾を撃ち込んで倒すとか、絶対にあり得ないんですけど!?」
佐藤は鈴木のことをよく知っている。学校でもトップクラスの人気を誇る佐藤だが、なぜか普通で冴えない鈴木といつも一緒にいた。
(元々の俺は桃缶すら開けれない情けない奴なのか!?)
鈴木は元々の自分を思って泣いた。
「あなたはいったい誰なの!?」
佐藤は目の前の鈴木に指を指し詰め寄る。
「俺は地球の平和を・・・んん!? なんだ!?」
鈴木は佐藤に自分は地球防衛隊の隊員として地球を守るために半人半ロボとして生まれ変わったと言おうとした。すると鈴木の心の奥底から温かい気持ちが湧いてくる。
「僕がさくらを守る。」
鈴木は元の自分の心が、俺様の鈴木隊員の心に打ち勝ち、表に自分に自信のない鈴木陸の心が出てくる。
「り、陸!?」
佐藤も鈴木の中に、もう一人の鈴木を感じる。自分の知っている鈴木陸を感じる。
「さくら。」
「陸。」
佐藤と鈴木の2人の距離が良い具合に近づいていく。このままでは自然とキスしてしまう。
「ストップ。」
その時、転校生の刃覇夢徒が現れ、いい所で邪魔をする。
「バハムート!?」
鈴木は最強の竜バハムートが現れて驚く。
「佐藤、部活の時間だ。」
怒涛の勢いで刃覇夢徒が迫って来て、佐藤の腕を掴む。
「キャア!?」
あっという間に佐藤を鈴木から引き離し、引きずったまま何処に去って行く。
「さくら!?」
鈴木は連れていかれようとする佐藤を止めようとする。
「ギロ!」
刃覇夢徒は鈴木を睨む。
「な!? う、動けない!? さくら!!!」
鈴木は最強の竜バハムートが女子高生になった姿の刃覇夢徒の凄まじい眼力で睨まれて、去って行く佐藤を見守ることしかできなかった。
放課後の体育館。
「佐藤、あなたはヒロインだから男遊びしている場合じゃないでしょう!?」
刃覇夢徒は男とイチャイチャしていた佐藤を怒る。
「べ、別にイチャイチャしていた訳じゃないわよ!? 陸とはいつも一緒にいるだけよ!?」
佐藤は照れながら不純異性交遊はしていないと否定する。
「佐藤、おまえは樹理絵なんだぞ。しっかりしろ。」
刃覇夢徒は佐藤を部活のやっている体育館に連れて行く。そして体育館の扉が開く。
「部活やるよ。」
体育館の中には電飾煌びやかな大階段。男装した女子高生。バニーガール衣装でラインダンスをする1年生たち。歌劇団部の部員は女性しか入部できなかった。
「もうマンネリなアイドル、軽音、吹奏楽に変わる新しい部活動! それが歌劇団部。」
佐藤と刃覇夢徒は歌劇団部の新入部員だった。
「歌劇団部は我が高校だけの部活動。歌劇団部の大掛かりなセットのために体育館からバレー部やバスケ部を追い出した訳ではない。」
決して刃覇夢徒が最強の竜の力を乱用して、他の体育館を利用する部活動を追い出した訳ではない。
「刃覇は確か転校生のはずよね? なんで、そんなに学校のことに詳しいのよ?」
佐藤は刃覇夢徒に素朴な疑問をぶつける。
「どうしてだろう?」
なぜ詳しいのかは刃覇夢徒も分からない。
その頃、高校の寮の前。
「んん? 転校生かしら?」
美歌恵流は自分が1人暮らしをしている高校の寮、その名も異物寮に帰って来た。
「こんにちは! 転校してきました。1年の瑠詩富亜です。よろしくお願いします。先輩。」
黒髪色黒の可愛い転校生がいた。
「よろしく。私も同じ1年の美歌恵流よ。仲良くやりましょう。」
先輩と呼ばれても1日早いだけであるが美歌恵流は上機嫌だった。
「はい、美歌恵流先輩。」
新たな転校生の瑠詩富亜は器用な性格で容量が良かった。
「まあ!? 何ていい子なの!? なんでも私に言ってごらんなさい! 大天使のプライドにかけて願いを叶えてあげるわよ!」
美歌恵流の暴走は次第にエスカ―トしていく。
「先輩、荷物が重たいので部屋まで運んでくれますか?」
瑠詩富亜は甘えた声で美歌恵流に荷物持ちをお願いする。
「いいわよ! かわいい後輩のためなら荷物ぐらい運んであげる!」
美歌恵流は瑠詩富亜の手の平の上で踊らされていた。
「天使を手懐けるなんて簡単。」
瑠詩富亜の正体は・・・大悪魔ルシファーだったのだ。
「よいしょ。よいしょ。」
そうとは知らない大天使ミカエルの美歌恵流は、大悪魔の荷物を運ばされるのだった。
体育館の歌劇団部の部活中。
「全員集合!」
その時だった。3年生の夜露死苦部長が全員に声をかける。佐藤と刃覇夢徒も部長の元に集まる。
「キャー! 夜露死苦部長カッコイイ!」
佐藤と刃覇夢徒は先輩の大ファンだった。
「次回の歌劇団部の演目は呂美男と樹理絵だ。今日は1年生が行う新人公演の配役を発表する。」
夜露死苦先輩が次回の演目の呂美男と樹理絵の1年生が行う新人公演の配役を発表しようとする。
「キャ! 新人公演!」
佐藤と刃覇夢徒はお芝居が好きで熱狂的だった。
「みんな、静かに! 樹理絵は引き続き、佐藤にやってもらう。」
夜露死苦部長はヒロインの樹理絵に佐藤を起用すると言う。
「わ、私!?」
佐藤は自分が選ばれて一瞬戸惑ったが喜んだ。
「頼んだぞ。佐藤。」
「はい! 一生懸命がんばります! 私、将来は女優になってみせます!」
佐藤は夜露死苦先輩の期待に応えるため、自分の夢を叶えるために頑張ることを誓う。
「呂美男は美歌恵流に・・・あれ美歌恵流がいない!? 部活をサボるとはいい度胸だ。あとでみっちりしごいてやる。」
美歌恵流は瑠詩富亜の相手で時間を費やし部活動に来るのが遅れていた。
「それでは呂美男は・・・刃覇夢徒にやってもらう。」
新人公演の呂美男は刃覇夢徒に決まった。
「刃覇、がんばろうね。」
「佐藤、よろしくな。」
素晴らしき友情の佐藤と刃覇夢徒は、ヒーローとヒロインとして演劇の稽古に精一杯打ち込むのだった。
「どうしてバハムートがさくらと仲良しなんだ!? 例え何があっても、さくらは俺が守る。」
歌劇団部の様子を体育館の2階から覗いていた鈴木陸は、佐藤さくらに及ぶ全ての害を取り除くことを決心する。それは相手が神でも天使でも悪魔でも怪物でもである。
「最強の竜バハムート・・・なぜさくらに近づく!?」
この物語は、紆余曲折しながらも地球防衛隊の隊員の鈴木陸が地球よりも大好きな佐藤さくらを異物の魔の手から守るという学園物語である。
「あ!? 2階に誰かいる!?」
「覗き魔ね!? 盗撮しているかもしれないわ!?」
「痴漢よ!? 痴漢!?」
「鈴木よ!? 変態は鈴木に決まっているわ!?」
歌劇団部が体育館を使用する時は男子は進入禁止なのだ。歌劇団部はほうきや金属バットに刃物を持って2階に続く階段を登っていく。
「え!? 俺は変態じゃない!? やめろ!? ゲフッ!?」
こうして痴漢をボコボコにした歌劇団は体育館の平和を守った。
地球防衛隊の本部。
「た、助けてくれ・・・。」
血まみれの鈴木隊員が地球防衛隊の本部に傷だらけの姿で助けを求めてフラフラでやって来る。
「鈴木隊員!? どうした!? 誰にやられたんだ!?」
地球防衛隊の隊長のおっさんが傷だらけの鈴木を介抱する。
「さ、さ、さくら・・・。い、い、異物・・・。」
バタっと鈴木は力尽きて意識を失って倒れた。
「鈴木隊員!? そうか!? 地球の平和を守るために激しい戦いを繰り広げたに違いない!? こんな姿になるまで地球のために戦ったのか!? 鈴木隊員!? おまえって奴は!?」
正解は女子だけの歌劇団部を二階から除いていたので、歌劇団部の部員にボコボコにされたのである。もちろん金属バットを持った佐藤さくらとバハムートが女子高生になった刃覇夢徒の体育館の床を砕く渾身の一撃も含まれる。
「直ぐに生命維持装置に入れて回復させてやるからな!」
地球防衛隊の本部には生命維持装置があり、地球防衛隊の隊員が異物と戦い傷ついた体を瞬時に回復してくれるのだった。
そして鈴木は生命維持装置から出てくる。
「プハーッ! 生き返った!」
鈴木の傷は癒え体力も全快した。
「おお! 鈴木隊員、元気になったか?」
地球防衛隊の隊長が鈴木の全快を祝う。
「誰だ!? このハゲー!?」
地球防衛隊の隊長はハゲていた。
「私だ! タヌキのぬいぐるみ隊長だ!」
そう地球防衛隊のハゲ隊長は可愛いタヌキのぬいぐるみ隊長だった。
「あ、あり得ない!? タヌキのぬいぐるみ隊長の正体がハゲたおっさんだなんて!?」
このままでは全世界の純粋な心の優しい子供たちの夢を壊してしまう。どうする鈴木隊員!?
「よし! こうしてやる! 隊長! 覚悟!」
鈴木隊員は決心した。
「ギャア!?」
まず隊長のおっさんを殴って気絶させる。
「みなさん、お願いします。」
そして隊長の精神を改造手術をする研究チームに可愛いタヌキのぬいぐるみに完全移植手術する。
「完成だ。」
そして手術は成功した。
「な、なんだこれは!?」
今までは地球防衛隊の隊員との連絡をする時に自爆機能付きのタヌキのぬいぐるみだったが、完全に地球防衛隊の隊長はタヌキのぬいぐるみ隊長になってしまった。
「めでたし、めでたし。」
鈴木隊員は手を叩いて喜んだ。
「どこがめでたしだ!?」
タヌキのぬいぐるみ隊長は鈴木隊員にツッコミを入れる。
「これで自爆はできなくなったな。隊長。」
鈴木隊員は勝ち誇った顔をする。
「しまった!?」
タヌキのぬいぐるみ隊長はウリであった爆破シーンを取り除かれてしまった。
「これで爆発という環境汚染から地球の平和は守られた。」
鈴木隊員はタヌキのぬいぐるみ隊長の自爆攻撃から自分の身を守ることに成功した。
「あ、俺の拳銃の弾丸に撃たれた異物が可愛い女子高生になるのを何とかできないのかと聞きに来たんだった。」
鈴木隊員は地球防衛隊の本部に来た理由を思い出した。
「知るか!?」
タヌキのぬいぐるみ隊長は怒っていた。
体育館。
「ああ!? 呂美男様!? 呂美男様!? あなたはどうして呂美男様なの!?」
歌劇団部の部員たちの熱のこもった練習を繰り返していた。
「おお!? 樹理絵!? 君はどうして樹理絵なんだ!?」
1年生が行う新人公演に向けて、樹理絵役を佐藤さくらが、呂美男役を刃覇夢徒が迫真の演技を演じていた。
「がんばれ! そうだ! その調子だ!」
歌劇団部の部長の夜露死苦も熱心に応援している。
「9997!?」
体育館の隅で美歌恵流が汗を流しながら腕立て伏せをさせられていた。部活動の時間に遅刻した罰であった。
「あと三回ですよ! がんばってください! 美歌恵流先輩!」
遅刻の原因の瑠詩富亜も歌劇団部の部活動を見学に来ていた。
「9998!? 可愛い後輩が見ているんだ!? 負ける訳にはいかない!?」
美歌恵流は瑠詩富亜が見ているので途中でくじける訳には行かないと思って頑張っていた。
「あと二回ですよ! 美歌恵流先輩ファイト!」
瑠詩富亜は一生懸命に美歌恵流を応援している。
「9999!?」
美歌恵流は根性だけで一万回の罰を成し遂げようとしていた。
「キャ! 夜露死苦部長だ! カッコイイ!」
その時、瑠詩富亜は歌劇団部のトップスター夜露死苦部長を見てしまい、美歌恵流を捨てて夜露死苦部長の元に走っていく。
「10000!? やった!? やり遂げたぞ!?」
バタっと美歌恵流は達成感に包まれながら笑顔のまま気を失い倒れ込んだ。しかし美歌恵流の偉業達成の瞬間は誰も見ていなかった。
「呂美男様、私と一緒に逃げてください! 誰も知らない所へ!」
「樹理絵、君が望むなら私は家を捨てよう。」
「ああ! 愛しの呂美男様!」
「私の樹理絵よ!」
佐藤さくらと刃覇夢徒が愛を誓い抱きしめ合いながら緞帳が降りてくる。2人の息はピッタリだった。
「いいぞ! いいぞ!」
夜露死苦部長も佐藤と刃覇夢徒のお芝居に感動していた。
「キャ! 素敵!」
瑠詩富亜も2人のお芝居に心を奪われていた。パチパチと歌劇団部の全員から大きな拍手をもらいながら完全に緞帳が降り切った。
「・・・私がヒロインよ。」
美歌恵流だけ体育館の片隅で寝言を言っていた。
つづく。
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