佐藤さくらの謎 (⋈◍>◡<◍)。✧♡

渋谷かな

第1話 俺はさくらを守る!

「おまえ、天使だな。」

場面は夜の学校。身長170センチ位の普通の男の子がいる。服装は戦闘服。年齢は16才の高校1年生になる。

「何者だ!?」

そして高校生の目の前に・・・頭に丸い輪っかを付けて、背中に白い羽を背負っている天使と言われる者がいる。自分が天使と言い当てられて戸惑い驚いている。

「知る必要はない。」

高校生は冷静に天使の問いかけに答えることはしなかった。そしてショルダーホルスターから拳銃を取り出し右手で構え天使に向けて銃口を向ける。

「舐めるな!? 私は大天使・・・!?」

天使は高校生の自分を無視するような態度にイライラしながら自尊心から自己紹介をしようとする。

「興味ない。」

高校生はバンっと拳銃の引き金を引いた。拳銃の銃弾が天使を目掛けて飛んで行く。

「ギャア!?」

銃弾が命中した天使は断末魔の叫びをあげて倒された。

「任務終了。佐藤さくらに危害を及ぼす者は天使でも許さない。」

高校生は拳銃をホルスターに直すと、何事もなかったようにその場を去って行く。



翌日。

「おはよう、陸!」

普通の高校生の男の子、鈴木陸が学校に普通に登校していた。すると明るく元気な女子高生が後ろから男子高生を目掛けて慌てて走って近づき声をかけてきた。

「おはよう、さくら。」

追いついた女子高生、佐藤さくらに何事もなかったように朝の挨拶をする鈴木。

「陸!? 無事だったのね!? 良かった! 心配したのよ!? 昨日、私をかばって電車に引かれて死んだと思ったもの!?」

ここで昨日の回想が入る。



昨日の下校時。

陸とさくらは自宅に帰るために電車に乗るために駅のホームで電車が来るのを待っていた。

「相変わらず陸は冴えないわね!? もっとカッコよく振る舞えないの!?」

佐藤はパッとしない普通の男子高生の鈴木にイライラしていた。

「ごめん、佐藤。」

自分に自信のない鈴木は謝ることしかできなかった。

「電車がホームを通過します。白線の内側でお待ちください。」

その時、電車が駅を通過するというアナウンスが入る。

「まったく、陸はだらしがないんだから・・・え!?」

佐藤が鈴木を軽くけなして白線の中に移動しようとした時だった。見えない手が佐藤を正面から押す。佐藤の体は駅のホームからレールの上に放り出される。

「ギギギ!」

通過電車の運転士が駅のホームからレールに人が飛び出したのを視認し電車の急ブレーキをかける。しかし絶対に間に合わない。

(さくらは僕が守る!)

咄嗟の事故なのに鈴木は佐藤の手を引っ張り、佐藤を安全な駅のホームの上に移した。だが反動で鈴木は危険なレールの上に投げ出される。2人の位置が入れ替わったのだ。

「ブチ!」

電車と鈴木がぶつかった。通過電車が駅のホームに入って来たのだ。

「り、りく!?」

一瞬で佐藤の目の前から鈴木の姿が消える。佐藤はショックで、そのまま意識を失って駅のホームに倒れてしまった。

「ギギギ!」

電車は駅のホームを過ぎ去った所で緊急停止をして止まった。

ここで鈴木が電車に引かれた回想終わる。



再び朝の登校に戻る。

「なあんだ! 夢だったのね! 電車に引かれて生きている人間がいるはずがないもんね! ハハハッ!」

佐藤は自分をかばって鈴木が死んだという罪悪感から解き放たれ笑っている。

「さくら、おまえはアホか?」

その姿を見て鈴木は呆れている。

「誰がアホよ!? 誰が!? ・・・って、陸。今、私のことをさくらって呼んだ!? そうよ!? さくらって名前で呼んだわ!?」

鈴木は佐藤のことを名前で呼んだことはない。鈴木は自分に自信がないので可愛いヒロインの佐藤のことを名前で呼んだことはなかった。

「当然だ、おまえの代わりに電車に引かれたんだからな。」

昨日までの鈴木と違い、どこか今朝の鈴木は自信に溢れていた。

「え!?」

佐藤はドキっとした。鈴木相手にドキッとしたことなどなかったのに、まるで昨日の鈴木と今日の鈴木が別人のように思えるぐらいに違って見えた。

「学校に遅れる。行くぞ、さくら。」

鈴木は佐藤を置いて1人で学校に向けて歩き始めた。

「ま、待ってよ!? 陸!? 陸のくせに私を置いていくなんて生意気よ!?」

置いて行かれた佐藤は慌てて鈴木を追いかける。2人は学校に遅刻せずに間に合った。



学校で普通に授業が行われている。

「ピピピ!」

突然、学校に警報が鳴り響く。

「異物だ!? 異物が現れたんだ!?」

この世界は現代世界を現代ファンタジー世界として、人間と天使と悪魔とモンスター、神なんかが共存する世界である。人間は人間以外のものを異物という差別的な呼び方で呼んだ。

「あれは最強の竜バハムートだ!?」

窓から外を見た生徒が異物を見て驚いた。目に映った異物は最強の竜バハムートだったからだ。

「正義の味方が現れるぞ!?」

そして人類は平和を維持するために異物と戦う地球防衛隊を創設した。

「ロボットだ!? ロボットが飛んできたぞ!?」

どこからか人型ロボットが空を飛んでやって来た。地球防衛隊が対異物用に開発した地球防衛隊ロボである。略して地ロボ。

「地ロボとバハムートの対決だ!?」

地ロボがバハムートの行く手を遮るように着地した。学校の生徒たちは窓から身を乗り出し、または屋上から世紀の対決を見学していた。

「ガー!」

バハムートが炎を吐いた。一瞬で地ロボの上半身は炎で溶けた。

「キャア!? 地ロボが負けた!?」

「うわあ!? もう地球は終わりだ!?」

生徒たちの歓声は悲鳴に変わる。このまま地球は最強の竜バハムートに侵略されてしまうのだろうか!?



教室。

今時の高校生たちがうるさく騒いでいる中。鈴木陸はイスに座って退屈そうだった。地ロボにも、最強の竜バハムートにも関心がなかった。

「陸! 地球の終わりを見に行きましょう!」

佐藤は鈴木に声をかけた。

「興味ない。」

佐藤は女子高生らしく興味深々である。

「じゃあ、私は屋上に見に行ってくるね。」

佐藤は屋上にバハムートを見物に行った。



「おはよう、鈴木隊員。」

鈴木の机の上に手の平サイズのタヌキのぬいぐるみがいきなり現れる。

「なんだ、おまえは?」

鈴木はタヌキのぬいぐるみの登場にも微動だにしていない。それどころかタヌキ汁にして食べようかと思うぐらい冷静だった。

「なぜ驚かない!? 犬も猫も使用され過ぎだから苦肉の策でタヌキを選んだんだぞ!? ここはタヌキ~!? と驚くところじゃないのか!?」

タヌキのぬいぐるみは平然としている鈴木の態度を叱った。

「神や天使に悪魔が現れる時代にタヌキのぬいぐるみに驚くバカがどこにいる?」

鈴木はあくまでも冷静だった。

「鈴木隊員!? 口の聞き方に気をつけろ!? 私は隊長だぞ!?」

激怒しているタヌキのぬいぐるみ。隊長と聞いて、鈴木がピクッと反応した。

「タヌキを隊長に持った覚えはない。」

鈴木はタヌキのぬいぐるみの顔を力いっぱい掴む。

「ギャア!? 昨日のことを良く思い出せ!? 君は地球防衛隊の隊員になったんだぞ!?」

顔を掴まれて苦しいタヌキのぬいぐるみが昨日、鈴木は地球防衛隊の隊員になったというのだった。



昨日の鈴木が電車で引かれた後の回想。

「ここは・・・どこ?」

鈴木陸は目覚める。場所はわからない。横たわって寝ていたみたいだった。

「おお!? 目覚めたか。」

誰かの声が聞こえた。相手はおっさんの様だった。

「あなたは誰?」

まだ鈴木は起き上がれない。頭もボーっとしている。薄れゆく意識の中で声を出して質問している。

「鈴木陸くん、君は電車に引かれて死んでしまったんだ。」

そう鈴木は佐藤を守って死んでしまったのだった。

「ぼ、僕は死んだんだ・・・。さくらは大丈夫ですか?」

鈴木は自分のことよりも佐藤のことが心配だった。

「彼女は無事だ!」

おっさんは佐藤が無事だと鈴木に知らせる。

「良かった。」

鈴木は安心して眠りに着こうとした。

「良くない! 全然、良くない!」

急におっさんが騒ぎ始めた。

「んん!?」

鈴木は眠りたいのに眠れなかった。

「君が電車に引かれたために、電車を1時間も止めてしまい電鉄会社から3億円の損害賠償を請求された。」

眠っていた鈴木の知らない話である。

「ええ!? 3億円!?」

そんなお金は鈴木家では払うことはできない。

「ハッハッハ! 安心したまえ! 君の親御さんと相談して、我々が借金を肩代わりしてやったぞ! ハッハッハ!」

おっさんは高笑いが止まらない。

「それはどうも。ありがとうございます。」

鈴木はおっさんに家族を救ってくれた礼を言う。

「礼には及ばん。借金を肩代わりする条件に・・・君の体をもらった。」

おっさんは意味の分からないことを言う。

「はあ!?」

鈴木はおっさんの言うことの意味が理解ができない。

「君は地球防衛隊の隊員になったのだ!」

おっさんはまるでカッコイイ決めゼリフのように言う。

「これは夢だ。うん、寝よう。」

こうして眠りに着いた鈴木は地球防衛隊の隊員に改造されたのだった。

回想を終える。



教室。

鈴木が地球防衛隊の隊員になった説明が終わったので、教室に戻って来た。

「わかったか!? 君は地球防衛隊の隊員になったのだ!」

タヌキのぬいぐるみは鈴木に向かって言う。

「俺の親は息子を売ったのか!? なんて酷い親だ!?」

鈴木はタヌキのぬいぐるみを無視して、3億円の損害賠償のために自分を売った両親を恨んだ。

「食いつくところは、そこか!?」

タヌキのぬいぐるみは鈴木が地球防衛隊の隊員になったことより、親に売られたことに執着したのが少し寂しかった。

「ということで、鈴木隊員。地球を異物の手から守るために、外に出て最強の竜バハムートと戦うんだ!」

タヌキのぬいぐるみは鈴木に最強の竜バハムートと戦えと言う。

「なぜ?」

鈴木はタヌキのぬいぐるみに反抗的な態度をとる。

「水と緑の溢れる美しい地球を守るんだ! 隊長の私の言うことが聞けないのか!?」

タヌキのぬいぐるみは地球防衛隊の隊長らしい。

「知らん。地球の平和など、俺にはどうでもいい。」

鈴木は隊長命令を聞く気はなかった。平然とイスに座っている。

「クウウッ!? やはり昨日の改造手術は失敗だったか!?」

タヌキのぬいぐるみ隊長は苦虫を嚙み潰したよう顔を、ぬいぐるみの分際でする。



昨日、鈴木は地球防衛隊の隊員に改造手術を受けさせられた回想。

「これで以前の鈴木陸としての心は消え、新しく地球を守るという心が移植され、君は地球防衛隊の隊員として生まれ変わるのだ。」

地球防衛隊の隊長のおっさんが暑苦しく熱弁している。

「それでは改造手術を始めます。」

電車に引かれて死んだ鈴木の地球防衛隊の隊員としての蘇生改造手術が始まった。この手術は電車に引かれてグチャグチャになった体の部分を機械に変え蘇生し、性格も自分に自信が無い心から、自分に自信があり地球を守ることを一番に考える正義のヒーローの心に入れ替える手術である。


「なんだ!? これは!?」

順調に手術が進み体はロボット化に成功した。しかし最後の心の入れ替えの改造手術をする研究員の手が止まる。

「ど、どうした!?」

予想外の事態に地球防衛隊の隊長のおっさんも手術現場に身を乗り出す。

「前の人格の心が取り出せません!?」

改造手術をする研究員は手術を進めることができなかった。

「佐藤さくら命だと!?」

鈴木の体内に佐藤さくら命という心があり、その心が体から離れないため除去することができなかった。

「どうしますか!? これ以上、手術時間が長引けば精神に支障をきたす恐れがありますが!?」

改造手術をする研究員は改造手術が長引くことで鈴木の肉体と心の定着を心配した。

「う~ん!? 仕方がない!? 地球防衛隊の隊員用の心を体の中に入れてしまおう!」

こうして元の鈴木陸の佐藤さくら命という心を取り除かないまま、地球を守る使命を持つ地球防衛隊の隊員の心を移植したのだった。

回想終わる。



教室。

「ということだ。」

タヌキのぬいぐるみ隊長は昨日の出来事を話し終える。

「失敗してんじゃねえか!?」

鈴木は自分の改造手術が失敗だと気づいた。元々の佐藤さくらが好きという気持ちと、新しい地球の平和を守るという気持ちが1人の体の中で混同しているのだ。

「ギャア!? 助けて!? お母さん!?」

鈴木はタヌキのぬいぐるみの頭を手で掴み持ち上げる。

「どうしてくれるんだ!? 俺は失敗作じゃないか!?」

鈴木はタヌキのぬいぐるみ隊長を前後左右に強く降りまくる。

「さあ! 鈴木隊員! 地球の平和を守るんだ! ちなみに私は伝えることは伝えたので、このタヌキのぬいぐるみは3秒後に爆破される。」

タヌキのぬいぐるみ隊長は通信連絡手段なので、隊員に連絡事項を伝えると証拠隠滅のために自爆する。

「なに!?」

鈴木は初回なのでタヌキのぬいぐるみ隊長の恐ろしさを知らなかった。

「バーン!」

見事に鈴木を真っ黒こげにしてタヌキのぬいぐるみ隊長は跡形もなく爆発して消え去った。

「プハー!?」

鈴木は口から煙を吐き出す。地球防衛隊の隊員に改造された鈴木はタヌキのぬいぐるみ隊長の自爆くらいでは致命傷にならなかった。



外。

「うわあ!? すごい!? 大きなドラゴン!?」

初回で説明が多くなり、インパクトのために第1話に起用された最強の竜バハムートが忘れられている。佐藤は屋上から異物を楽しそうに見学している。

「ガー!」

最強の竜バハムートは街を破壊しながら学校に向かってくる。

「地球防衛隊は何をやっているんだ!?」

街の人はバハムートに街が破壊されているのに助けに来ない、また助けに来ても地ロボみたいに簡単に倒される地球防衛隊に幻滅してイライラしていた。

「ねえねえ知ってる? バハムートってベヒモスの一種だったんだって!? バハムートをドラゴン起用したのはアメリカの方が先なんだって!」

佐藤は天真爛漫に笑顔でバハムートを悪意なく純粋な心で周囲にいる人間に紹介する。佐藤さくらに悪気はないので、誰からも好かれている。

「プチ! ガー!!!」

佐藤の声が聞こえたのか、バハムートが激怒して雄叫びをあげて、学校の屋上にいる佐藤を目掛けて猛スピードで羽を羽ばたかせて飛んで来る。

「キャア!? バハムートがこっちに向かってやって来る!? カッコイイ!」

のんきに佐藤はバハムートの突進をカッコイイと目をハートにして眺めていた。

「ガー!」

最強の竜バハムートは佐藤を目掛けて校門の所まで来た。佐藤は絶体絶命のピンチだった。

「地球の平和はどうでもいい。」

その時、屋上の上に鈴木が現れる。そしてショルダーホルスターから拳銃を取り出し右手で構え最強の竜バハムートに向けて銃口を向ける。

「俺が守りたい者は、さくらだけだ!」

拳銃の銃口から弾丸が撃たれる。弾丸はバハムートに向かって飛んで行く。

「ギャア!?」

最強の竜バハムートに弾丸は命中した。バハムートは断末魔の叫び声をあげて地面に倒れ込む。

「フッ、正義は勝つのだ。」

銃口から出る煙を息で吹き飛ばし、ホルスターに拳銃をしまう。

「陸!」

佐藤が鈴木に声をかけてくる。

「さくら、無事か? 異物は俺が倒したぞ。」

鈴木は最強の竜バハムートから佐藤を守ることができたので、佐藤に抱擁されて褒められると思った。

「陸のバカ! どうしてドラゴンさんを倒すの!? あんなに可愛いのに!?」

佐藤は人と違った好みをしていた。

「え!?」

鈴木は殺されそうだった佐藤を救ったのに、褒められるどころか、逆に怒られた。

「陸なんか知らない! しばらく口を利いてあげないんだから!」

佐藤は鈴木に怒って去っていた。

「そ、そんなバカな!?」

鈴木は異物に勝ち、佐藤に負けるのだった。こうして地球の平和は守られた。



教室。

「いきなりだが転校生を紹介する。」

最強の竜バハムートと地球防衛隊の戦いで中断した授業が始まろうとしていたら、担任の先生が転校生がいると言い始めた。

「転校生!?」

クラスの生徒が転校生に期待と不安でザワザワする。

「転校生の美歌恵流です。みんな、よろしく。」

色白金髪のなかなかの美人だった。

「キャ! 美歌恵流様!」

クラスの男子は美しい転校生に喜んだ。

「何が美歌恵流よ!? 男子ったら顔がきれいなら何でもいのね!?」

佐藤は美人の転校生にデレデレ鼻の下を伸ばしているクラスの男子を軽蔑した。そして気になったのか、チラッと鈴木の様子を見る。

「な、なんで、あいつが!?」

鈴木は転校生の美歌恵流に驚いていた。

「昨日、倒したはずなのに!?」

そう美歌恵流は佐藤を駅のホームから突き落とそうとした悪い大天使だった。だから地球防衛隊の隊員に改造された鈴木は大天使ミカエルを撃ち殺したはずだった。

「ん? 陸は美人には恐怖を感じるのかしら?」

佐藤は鈴木がなぜ驚愕しているのか理由を知らなかった。

「どういうことだ!? 昨日、確実に撃ち殺したはずなのに!?」

大天使ミカエルが生きていたことが理解できないで戸惑っている鈴木。

「やはり失敗だったか!?」

その時、自爆したはずのタヌキのぬいぐるみ隊長が鈴木の机の上に再び姿を現した。

「おまえ・・・自爆したはずでは!?」

鈴木は先のタヌキのぬいぐるみ隊長の自爆で真っ黒焦げになったので、タヌキのぬいぐるみ隊長を恨んでいる。

「タヌキのぬいぐるみなど、おもちゃ売り場に行けばいくらでもスペアはあるのだ! ワッハッハー!」

得意げに笑うタヌキのぬいぐるみ隊長。

「ギャア!?」

鈴木はタヌキのぬいぐるみ隊長の頭を手で鷲掴みにして持ち上げる。

「なぜミカエルが生きている!? 失敗とはどういうことだ!? 説明してもらおうか? ええ!」

鈴木はタヌキのぬいぐるみ隊長が説明するように脅す。

「は、はい。話します。実は・・・。」

タヌキのぬいぐるみ隊長は、なぜミカエルが生きているのかを話し始める。

「鈴木隊員の拳銃の弾丸は地球の平和を守るという心を撃ち込む対異物一撃撃滅弾の・・・はずだった。」

ちなみに異物とは神、天使、悪魔、怪獣などの異世界の者の意味である。地球防衛隊の隊員の撃つ弾丸は、弾丸を撃つ地球防衛隊の隊員の心が反映されるのだった。

「はずだった!?」

鈴木は嫌な予感しかしない。

「しかし元の佐藤さくら命という心と地球の平和を守るという心が混在している不安定な鈴木隊員の撃つ弾丸は、異物を女子高校生に変えてしまうという特異な弾丸を発射してしまうのだ! ワッハッハー!」

タヌキのぬいぐるみ隊長の高笑いは止まらなかった。

「おい、タヌキ。なんとかしろ!?」

鈴木はタヌキのぬいぐるみ隊長に命令する。

「残念だが、どうすることもできない。ちなみに、このタヌキのぬいぐるみは3秒後に爆発する。バン!」

タヌキのぬいぐるみ隊長は用事が済んだら自爆する。

「ゲフッ!?」

例の如く、鈴木は真っ黒焦げになった。

(見つけたぞ! 佐藤さくら! おまえを倒す!)

転校生の美歌恵流は、大天使ミカエルであり、なぜか狙いは佐藤さくらだった。



ということは・・・。

「んん・・・ここは・・・どこだ?」

校門で不自然に黒髪色黒女子高生が倒れていて、目覚めた。

「私の名前は・・・刃覇夢徒。」

そう地球防衛隊の鈴木隊員の拳銃の弾丸で撃たれた異物は女子高生になってしまうのだった。

「私は確かに地球防衛隊に殺されたはず!? なぜ生きているんだ!? なぜ制服を着ているんだ!? は!? まさか!? これが輪廻転生というやつか!? それなら私は女子高生として、高校に行かなければ!」

こうして最強の竜バハムートとは女子高生、刃覇夢徒としてハイスクールライフを楽しむために学校に入っていく。



放課後。

「さくら。」

その日一日、佐藤は鈴木と口を利かなかった。鈴木がバハムートを倒したことをとても怒っているのだった。

「・・・。」

校門で佐藤が来るのを鈴木は待ち伏せしていた。佐藤は鈴木を認識するも無視して歩いて帰ろうとする。

「待てよ、さくら。」

鈴木は佐藤の進路に体を入れて、佐藤の進路を邪魔する。佐藤は立ち止まる。

「どいて!」

佐藤は怒っていた。

「まだ怒っているのかよ!? いい加減、機嫌を直せよ!?」

鈴木はフォローする。

「あなた誰?」

佐藤は確信に踏み出す。

「え!?」

鈴木はドキっと動きを止める。

「陸は自分に自信がなくて、アリさん1匹も踏めない様な男よ!? それが巨大なドラゴンにピストルの弾を撃ち込んで倒すとか、電車に引かれそうになった私をかばうとか、絶対にあり得ないんですけど!?」

佐藤は鈴木のことをよく知っている。学校でもトップクラスの人気を誇る佐藤だが、なぜか普通で冴えない鈴木といつも一緒にいた。

(電車に引かれそうになってかばって死んだのは元々の俺なのに!? それで死んだ元々の俺が可哀そうだ!?)

鈴木は電車に引かれて死んだ元々の自分を思って泣いた。

「あなたはいったい誰なの!?」

佐藤は目の前の鈴木に指を指し詰め寄る。

「俺は地球の平和を・・・んん!? なんだ!?」

鈴木は佐藤に自分は地球防衛隊の隊員として地球を守るために半人半ロボとして生まれ変わったと言おうとした。すると鈴木の心の奥底から温かい気持ちが湧いてくる。

「僕がさくらを守る。」

鈴木は元の自分の心が、俺様の鈴木隊員の心に打ち勝ち、表に自分に自信のない鈴木陸の心が出てくる。

「り、陸!?」

佐藤も鈴木の中に、もう一人の鈴木を感じる。自分の知っている鈴木陸を感じる。

「さくら。」

「陸。」

佐藤と鈴木の2人の距離が良い具合に近づいていく。このままでは自然とキスしてしまう。

「こら! そこ!」

その時、転校生の美歌恵流が現れ、いい所で邪魔をする。

「ミカエル!?」

鈴木は宿敵の大天使ミカエルが現れて驚く。

「高校生は不純異性交遊は禁止よ! 佐藤さん、こっちにいらっしゃい!」

怒涛の勢いで美歌恵流が迫って来て、佐藤の腕を掴む。

「キャア!?」

あっという間に佐藤を鈴木から引き離し、引きずったまま何処に去って行く。

「しまった!? 見とれてしまった!?」

鈴木は去って行く佐藤を見守ることしかできなかった。



放課後の体育館。

「佐藤さん!? あなた男遊びしている場合じゃないでしょう!?」

美歌恵流は男とイチャイチャしていた佐藤を怒る。

「べ、別にイチャイチャしていた訳じゃないわよ!? 陸とはいつも一緒にいるだけよ!?」

佐藤は照れながら不純異性交遊はしていないと否定する。

「佐藤さん! あなたには部活動があるでしょう!」

美歌恵流は佐藤を部活のやっている体育館に連れて行く。そして体育館の扉が開く。

「歌劇団部よ!」

体育館の中には電飾煌びやかな大階段。男装した女子高生。バニーガール衣装でラインダンスをする1年生たち。歌劇団部の部員は女性しか入部できなかった。

「もうマンネリなアイドル、軽音、吹奏楽に変わる新しい部活動! それが歌劇団部よ!」

佐藤と美歌恵流は歌劇団部の新入部員だった。

「歌劇団部は我が高校の肝いりの部活動! 歌劇団部の大掛かりなセットのために体育館からバレー部やバスケ部を追い出したんだから!」

決して美歌恵流が大天使の力を乱用して、他の体育館を利用する部活動を追い出した訳ではない。

「美歌は確か転校生のはずよね? なんで、そんなに学校のことに詳しいのよ?」

佐藤は美歌恵流に素朴な疑問をぶつける。

「え!? まあまあいいじゃない細かいことは!? ね!? ね!?」

困った美歌恵流は、なんとか話を流そうとする。

「全員集合!」

その時だった。3年生の部長らしき生徒が全員に声をかける。佐藤と美歌恵流も部長の元に集まる。

「私は部長の夜露死苦だ。」

部長の夜露死苦先輩は元ヤンのレディースの総長だったという噂があるぐらいカッコ良かった。学校で1番人気のある人だった。

「キャ! 先輩カッコイイ!」

佐藤と美歌恵流は先輩の大ファンだった。

「次回の歌劇団部の演目が決まった。次回の演目は・・・呂美男と樹理絵だ!」

夜露死苦先輩が次回の演目を発表した。呂美男と樹理絵は悲劇の名作中の名作である。

「キャ! 呂美男と樹理絵ですって! 樹理絵やりたい!」

佐藤と美歌恵流はお芝居が好きで熱狂的だった。

「みんな、静かに! 今回は樹理絵を1年生から大抜擢することになった。」

夜露死苦先輩はヒロインの樹理絵に1年生を起用すると言う。

「キャ! 私よ! きっと私がやるんだわ!」

美歌恵流、自分が樹理絵をやるものだと興奮していた。

「佐藤さくら、おまえに樹理絵をやってもらう。」

夜露死苦先輩はヒロインの樹理絵に佐藤を選んだ。

「わ、私!?」

佐藤は自分が選ばれて一瞬戸惑ったが喜んだ。

「頼んだぞ。佐藤。」

「はい! 一生懸命がんばります! 私、将来は女優になってみせます!」

佐藤は夜露死苦先輩の期待に応えるため、自分の夢を叶えるために頑張ることを誓う。

「佐藤さくら、殺す!」

美歌恵流はヒロインの座を奪われ、元は大天使ミカエルなのに佐藤に殺意を抱いていた。

「さくらは俺が守る。」

歌劇団部の様子を体育館の2階から覗いていた鈴木陸は、佐藤さくらに及ぶ全ての害を取り除くことを決心する。それは相手が神でも天使でも悪魔でも怪物でもである。

この物語は、紆余曲折しながらも地球防衛隊の隊員の鈴木陸が地球よりも大好きな佐藤さくらを異物の魔の手から守るという学園物語に落ち着いた。

「あ!? 2階に誰かいる!?」

「覗き魔ね!? 盗撮しているかもしれないわ!?」

「痴漢よ!? 痴漢!?」

歌劇団部が体育館を使用する時は男子は進入禁止なのだ。歌劇団部はほうきや金属バットに刃物を持って2階に続く階段を登っていく。

「え!? 俺は変態じゃない!? やめろ!?」

こうして痴漢をボコボコにした歌劇団は体育館の平和を守った。


つづく。

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