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 枝光は検索機の画面を眺めます。もし悪い予感が的中していれば最初からなかまちゃんは本のタイトルを覚えていないことになります。

 これでは探しようがありません。いくら棚に置いてある本のタイトルを一冊ずつ見つめても見つからないでしょう。


 残念ですが、今日のところは諦めていただきましょう。紹介してくれたお友達に正しいタイトルを聞いてから図書館に訪れるべきです。


「ねえ、さなちゃんってさ……図書館に詳しいよね」


 なかまちゃんは懇願の意を込めて手を合わせました。枝光が頑張れば見つけられるかもしれない可能性に賭けています。

 たしかに枝光はたまに本探しのお手伝いをします。今回だって顔見知りが困っていたからではなく、困っている人を見かけたから近づいたのです。


「それでもなかまちゃんがタイトルを覚えていないのは相当の痛手かな」

「たしかにタイトルは覚えてないけど本の色やタイトルの印象は覚えてるの」

「曖昧な気がするけど。なかまちゃんを信じていいのかな?」

「見たらこれだって気づくの!」


 しかしなかまちゃんは枝光に声をかけられるまで何度も棚を見回していました。目を皿にしても目当ての本は見つけられなかったのです。


 貸し出し中でなければ他の棚に置いてあるかもしれません。図書館の本はジャンルによって分類されています。だからなかまちゃんは小説だと思い込んでいるだけで、真実は別の棚に置いている可能性もあるでしょう。

 そうでないと困ります。ではどこに?


「その本はどういうふうな本かな?」

「食をテーマにしたゾッとする話の詰め合わせと友達が言っていたの」

「カタツムリって食べものだっけ?」

「殻がついていて身がやわらかいから貝と同じ感覚で食べるんじゃない?」

「そういうものかなあ。フィクションでも僕は受け入れられそうにないよ」


 食とカタツムリ。繋がりが見えません。

 もしカタツムリが食料として口にした経験があれば柔軟に受け入れていたことでしょう。


「そういえば海外の人たちにとってタコは悪魔同様の恐ろしい生き物なんだって」

「じゃあ海外のタコ焼きの具は何になるの?」

「タコ抜きのタコ焼きは、別の名前の料理になるんじゃないかな」

「なるほど。そうなるのね。さなちゃんは賢いの」

「でもタコはね。ある考えを信じている人は食べたがらない」

「どうして?」

「若干グロテスクな理由なんだけど言っていいかな。なかまちゃんは耐性あるかな?」

「覚悟して聞くよ」

「エビやカニもなんだけど、肉食だから水死体を食べるらしい」

「ええー⁉︎」

「驚くよね。僕も初めて聞いた時は信じられなかったよ」

「水を吸ってブヨブヨしているの。美味しそうじゃないの」

「え?」


 たとえ死体でも人間を美味しそうだと思わない枝光はタコ目線で意見するなかまちゃんに同意できませんでした。

 人間を食べて栄養をつけたタコを警戒する気持ちの方がまだ理解できます。

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