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 真田さなだ枝光えだみつの場合はまず検索機で本を調べます。もし貸し出し中であれば、当然棚にないわけですから、いくら探しても見つかりっこありません。


「なかまちゃんの言ったとおりに文字を打ちこんでみたけど、『該当する資料がありません』って出てきたよ」


 枝光はおそるおそる検索機の画面を見せます。

 それらしいタイトルが一件も出てこなかった検索結果。


 なかまちゃんは昼間にお化けでも見たような顔で画面を凝視しています。なぜ自分の探している本が出てこないのか不思議でならない様子です。


 怒りの矛先を向けられたくなかったので枝光は子どもらしく、鈍感なふりをしてやり過ごします。


 館内は空調がきいていせいで背中が熱くなってきました。梅雨が明けてこれから夏が始まろうとしているのでもう少し涼しくしてほしいですね。


「……あー。なるほど」


 しばらく画面を見つめていたなかまちゃんはある結論を見つけ出しました。


「つまり壊れているのね」

「違うんだよ、なかまちゃん。この検索機はね、タイトルを一文字でも間違えるとヒットゼロになっちゃうんだよ」 


 『100万回生きたねこ』なのに『100万回死んだねこ』と打ち間違えたせいで絵本にたどり着けないパターンと同じです。


 なかまちゃんは『カタツムリの観察者』と言いましたが、もしかすると『カタツムリ観察者』や『カタツムリの観者』が正しいタイトルかもしれません。

 機械は融通が利かないので言葉は絶対なのです。


 『カタツムリ』だけだと生態の本がたくさんでてきます。それは彼女の求めている本ではありません。


「なんてこと……。でも、その本を教えてくれた友達は、たしかにこう言ってたの。『とくにカタツムリの観察者の話がゾッとした』って」


 どうりで見つからないと枝光は納得しました。


「そのセリフだと、『カタツムリの観察者』って本のタイトルじゃないかもしれないよね?」

「え、違うの?」

「絶対に違うとはかぎらないけど……。でもニュアンス的に、そのお友達は感想を言っただけじゃないかな? カタツムリの観察者が登場する話が面白かったよって……」

「うそ。そういう意味だったの?」

「げんに、そのタイトルの本はないみたいだし」

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