3日目 いもーと!
1に挨拶!
2に笑顔!
3に人情!
Byバアル
1に化粧!
2に洋服
3にペンキ!
Byサタン
◇◇◇◇◇
某日、サタン。
がらんとした店内を見渡し、魔の王であるサタンは大きな欠伸をする。
「きょーも、暇だなぁ〜。」
そんなつぶやきを漏らすも、店内は相変わらずサタンただ1人。
そう。
平日の午前10時から11時半ごろにかけて、
客がめっきり来なくなるのである。
理由は簡単。
子供、学校。
大人、魔王城勤務。
以上。
もし客が来店するとしても、それは大体、耳のとおいエロ本目当てのクソじ……高齢のお爺さんでなのである。
そして今日は本部への出張ということで、
故に、
「…よし。」
すると、サタンは周りに誰もいないことを確認し...…。
後ろから銀色に反射するマイクを取り出した。
そして、肺いっぱいに酸素を取り込み――。
「〜♪
ベイベイベベイベェェ〜♪」
歌い始める。
その歌声は砂漠を照らす灼熱の太陽の如く熱く、
また、凛とした力強さを内に秘めた、
聞いたものを魅了するかのような声だった。
だからこそ――。
「お兄…ちゃん…?」
妹に見られた時の羞恥心というものは計り知れない。
「〜おかわ…!?
……ア、アタン?」
「ひ、ひさしぶり...だね。」
そして、サタンの顔は見る見るうちに赤面し、
「い、いやあぁぁぁあ!
み、みちゃいぃぃやぁぁぁぁあああ!」
「お、お兄ちゃん!?」
その後、色々大変でした。
しばらくして、
「も、もう!
アタン!来るなら来るって言ってくれないと困るよ!」
頬を高揚させたサタンは、目も合わせずにそう言う。
「あ、あはは〜。
ご、ごめんねお兄ちゃん」
一方、アタンは薄笑いを浮かべながら申し訳なそうに言う。
アタン。
恐らく、その名を知らぬ魔族はいないだろう。
魔族の姫君でありながらサタンの妹。
そして、
現役アイドルである。
あーちゃんいう愛称は魔界お馴染み。
最近では人間のファンもいると言う。
ドルオタと呼ばれる人種はと言うと
<ハイ!ハイ!ハイ!
うぉぉぉおおおお!
ハァイ!
あーちゃん!
愛してるぅー!>
というコールを何度も繰り返しているらしい。
「そ、それで。
突然……どうしたんだよ。」
サタンは紅くなった頬をポリポリと掻きながら尋ねると、
「え?
あぁ、そうそう。
ちょっとうちで飼ってるゴブ君を預かって欲しくて......。」
そう言うと、コンビニの自動ドアが無造作に開き、緑色のプニプニした小鬼が魔物が入ってくる。
「が、がぉ〜。」
弱々しくそういうも、
恥ずかしいのか、すぐにアタンの後ろに隠れてしまう。
「明日からライブツアーがあって、
残念なことにペットは連れていけないの。
だからお願い!
お兄ちゃん!」
そう言うとアタンはその大きな瞳で兄を見る。
妹に頼られて嬉しくない兄はいない。
「し、しょうがないなぁあ!
仕方ないから俺がしばらく世話をしてやろう!」
しばらく考えるフリをした後に、快く快諾する。
「ほんと!?
ありがとう、お兄ちゃん!
それで...さっきから気になってたんだけど.....。」
そう言ってアタンは下に目線を逸らし、指だけをある方向に向ける。
「あれ......何?」
と言ってやや顔を引き攣らせながらいう。
「うん?あれ?」
そう言って振り向くと、そこには緑色に染まった何かがあった。
「あぁ、アイアンメイデンだよ〜。
可愛いだろ!」
そう言って笑顔を浮かべるサタン。
「そ、そうなんだ。
と、ところであの中には...どなたが......?」
兄の謎の趣味に困惑しつつも、アタンは訊ねる。
「あー、そうだなぁ。」
そう言ってややした後、
「夢と希望が詰まってるよ。」
「もう魔王やめて、夢の国の住人になったらいいんじゃないかな?」
そう言ったアタンの目はわりとマジだった。
>―――<
キャー!
村のあちらこちらで悲鳴が聞こえて、アンタレスははね起きる。
「な、なんだ!?」
まだ朝早い時間。
まだ寒気のするその時間帯に、起きているものはなかなかいないだろう。
少なくとも勇者はまだおネムの時間だ。
しかし、魔物からするとそれは好都合だ。
アンタレスは急いで剣を持ち、外に出る。
「待ってろよ!魔物!」
勇ましくドアを蹴り、外に飛び出る。
そこには!
ケットシーの群れがいた。
「キャー!可愛い!!」
まだ朝早いというのに、村の娘達は群れるケットシーを愛でていた。
散歩中の老人が、
「おい、剣なぞ持っとると危ないぞ。」
と言ってきた。
「......。」
アンタレスは剣をしまうと、無言で家に戻る。
そして、
「だって悲鳴聞こえたんだもん!
普通魔物だと思うじゃん!
勘違いちゃっただけだもん!」
と涙目でベットに潜り込む。
その時、
「ニャア〜」
という鳴き声が聞こえた。
ふと見ると、昨日拾ってきたケットシーがアンタレスの布団に潜り込んできている。
「おぉ、にゃ助。
慰めてくれるのか?」
そう言うと、
「ニャァ〜」
と言って腕に頭を擦り付けてくる。
「ありがとなぁ。
にゃ助ぇ〜。」
「ニャァ〜♪」
その日、勇者は泣いた。
0EXPと羞恥心を手に入れた!
次のレベルまで、あと200EXP。 ▽
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