花と雪

2017年9月24日日曜日


私はまた後退してしまった。

夜の道も夜の電車も怖い。

でも無理してしまったのだ。自分以外の他の人のために。

大事にしなければいけないのは自分なのに。

急いでいたのもあるのかもしれない。


大学時代の友人と会った。

十三時に待ち合わせて、上野公園を散歩して、お茶室で抹茶と和菓子を戴いた。お茶菓子は綺麗な菊の花の形をしていた。

夕方別れた後、神田で降りて、一人で焼き鳥屋に入った。


私はお酒が好きだ。

大勢で飲むお酒より、一人で静かに飲むお酒が好きで、二十歳になってからすぐ頻繁に一人で飲み歩くようになった。

最近は良く日本酒を飲む。焼き鳥屋の日本酒のメニューの中から、好みに合いそうな物を頼んで、一杯だけ飲んだ。店主が話しかけて、お酒に関することを教えてくれる。


帰り道でも、店主との話が頭に残っていて、日本酒について携帯で調べる。

日本酒の飲み方には熱燗やらぬる燗やら色々あるが、実はその温度によって細かく名前が分かれているらしい。十度前後で花冷え、五度前後で雪冷えというらしい。

美しい名前だと思った。


冷たいものには、美しいものが多い気がする。

冬は雪が降って美しい。雨は景色が霞んで美しい。

海は冷たい方が水が澄み切って美しい。涼し気な目をした人は美しい。


もう少し、美しいものだけを見ながら、ゆっくりと歩いて行こうと思った。

半歩ずつでもいい。

冷たいものの美しさを思い出して、花のお菓子を食べて、綺麗な若草色に泡立った抹茶を飲んだ今日が、とても心地よかったから。

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