変わる日常

とりあえず俺は家の中に神崎を入れた。


「でなんだそのバックは」


「あんた一軒家で一人暮らしだから部屋余ってるでしょ」


「確かにたくさん部屋は余ってるが...」


「じゃあいいわね」


神崎はバックの中身を俺に見せた。その中には大量のラノベと漫画が....


「これ、家に置いておけないのよ。親がうるさくて」


確かに神崎の親は教師でそういう物を拒みそうだ。


「それで俺の余っている部屋にそれを置いておきたいのか」


「そうよ。分かってるじゃない」


まあいいか、ラノベは自分も好きだし買う手間も省ける。しかし意外だった。

神崎は昔からそういう物には興味を持たない運動が好きな性格で成績も優秀な真面目キャラであったからだ。


「でも置いておくだけじゃないわ」


「部屋を一つ貸りたいの」


とうとう俺には神崎が何を言っているのか分からなくなった。

一緒に住む?いやそんなラブコメ的展開は期待できない。

しかし神崎は意外と目鼻立ちもよく、長くて黒い髪がよく似合う美人な方だ。

ドSなやつだが一緒に住むのも気持ちがいいかもしれない。


「一緒に住むつもりか?」


「へ? 何言ってんの?」


「わ、私があんたと住むわけないじゃない! 馬鹿じゃないの!」


期待外れか。


「相談はここからよ。」


そういえば今日の本題は相談だった。しかし神崎が俺に相談とは一体なんの事だろうか。


「私、漫画家になろうと思っているの」


「漫画家? だからお前、あんなに漫画を?」


「そうよ。でも親に言ったら絶対に反対されるわ。だからここでこれから漫画を描く練習をしたいのよ」


そりゃあ反対は確定だ。部屋を貸すくらいなら別にいいか。


「分かった。じゃあ二階の一番奥の部屋使っていいぞ」


「ほんと? たまには役に立たつじゃない誠!」


「たまにはかよ」


「じゃあ大きなバック上に運んでおいてね♪」


部屋を貸してこの仕打ち。神様、いつか優しくて可愛いヒロインと出会いたいです(泣)と思いながらバックを持ち上げる。


「なんだこの重さ....」


「ああ、重いわよ。だってラノベと漫画合わせて70冊くらいはあるもの」


悪女とはこんな奴の事をさすのか。

そう思いながらもなんとか上へ運びきった俺は一休みしようと階段を降りていったら次はテーブルと椅子が用意されていた。


「なんだこれは....」


「机と椅子よ」


「見ればわかるわ!」


「まさかあんた、地面で漫画を描かせる気?」


「い、いや。なんでもねーよ」


めんどくさい。また机と椅子を持って二階に行かなければいけないなんて、考えるだけでも溜め息がでる。


「よいしょっ。さっきに比べたら軽いな」


やっと運び終わった。

俺が運んでいる間に神崎はどうやら自分が描いた漫画を見返しているようだった。


「見してみろよ」


「はい、感想ちょうだいね」


俺は渡された紙を見てみた。

そこにはたくさんのキャラクターが描かれていた。

しかも絵はとてもうまい。

神崎がこんなに絵がうまいなんて幼馴染の俺でも知らなかった。


「どう?」


「正直驚いた。お前、いつからこんな絵を?」


「そうね、たしか二年前からよ。親に隠れて描いてきたの」


二年間練習しただけでこんなにうまくなる奴なんてそうそういない。一体どんだけ練習したんだよ。


「じゃあ明日から学校終わったらいくからよろしくね」


「お、おう」


そうしてその日から神崎は毎日、家にくるようになった。

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