機械の鳩


人は、それが平和の象徴であるようにと

空を飛び続ける機械の鳩を放った


戦争が終わるたび鳩は放たれて

鋼鉄の翼に太陽を反射して

世界を旋回し続けていた



だが人は、人の抗えぬ本能として

鳩と同じ位のミサイルを放った


閃光は鳩の翼に反射して

それでも、羽搏きは爆風に抗って

鳩はその空を飛んでいた



今日、

最後のミサイルが飛び去って、

最後の人間が蒸発した



鳩は、それを待っていたかのように

一斉に羽搏くことを諦めた

最後の人間の蒸発の後で、

言葉はその役割を終えたのだ



言葉の絶滅を看取った後で

鳩は一直線に落下する


平和という言葉が絶滅し、

鳩は一直線に落下する


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